ネットでチケット転売・ネットダフ屋(昔書いた原稿)2006年12月の原稿です
2006年12月に雑誌に書いた原稿ですが、ご参考までに。
なお、書いた当時のままですので現在は違うかもしれません。
・ 購入したチケットをネットオークションで定価より高く販売するのは違法?
どのような転売行為が違法となるのか検討してみましょう。まず思いつくのがチケットの転売行為がダフ屋行為に該当するので違法ではないのかということです。いわゆるダフ屋行為は、通常は法律ではなく、都道府県が定める条例(迷惑防止条例)によって違法とされます。例えば、東京都迷惑防止条例第2条1項は、「チケットを転売する目的」で「公共の場所」で購入する行為を禁止しています。また同条2項は「転売する目的で得たチケット」を「公共の場所」で売る行為を禁止しています。
「公共の場所」は、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場などが条例には例示されていますが、ネットオークションは「公共の場所」には含まれていないと解釈するのが現在のところ一般的です。
したがって、「購入したチケットをネットオークションで定価より高く販売するのは違法」なのかという今回の質問については、まず、購入時に「公共の場所」で「転売する目的」で購入したのであれば、購入した段階で違法になるということになります。なお、「公共の場所」にネットが含まれないという解釈を採用すれば、「転売する目的」であってもネット上で購入すれば条例上は違法ではないという結論になります。
次に販売行為ですが、「転売する目的で得たチケット」を「公共の場所」で売る行為を禁止されているのですからネットオークションという「公共の場所」ではないと解釈されている手段で販売することは条例に違反しないということになります。したがって、「購入したチケットをネットオークションで定価より高く販売する」行為は、定価より高く売ろうと安く売ろうと条例上は違法ではありませんが、そのチケットが「チケットを転売する目的」で「公共の場所」で購入されたということであれば、購入行為の段階で違法になるということになります。具体的には、ネットオークションで「転売する目的」で一般の窓口などの「公共の場所」でチケットを購入すれば、その段階で違法になるということになります。「転売する目的」があるかどうかの判断は、チケットの購入枚数が通常よりも多い、購入頻度が多い、などの外形的な事情で判断することになります。
なお、定価より高く販売する行為は、その販売価格が通常よりも明らかに高いものであれば、条例ではなく、物価統制令の適用が考えられます。物価統制令には「公共の場所」という限定は特にありません。
また、購入したチケットの販売を「業として」行うのであれば古物営業法の規制を受けることになるでしょう。
・購入したチケットをネットオークションに定価より安く出品したら、結果的に定価より高くなってしまった場合は問題ない?
チケットをネットオークションで販売することは、出品価格が定価より安くても高くても、また落札価格が結果的に定価よりも安くても高くても、現在の一般的な解釈では「公共の場所」で販売する行為には該当しないと判断されます。したがって、販売行為ではなく、そのチケットの購入行為が条例に違反するかどうかを判断することになります。
・転売目的でチケットをオンラインで買い占めるのは違法?
東京都迷惑防止条例第2条1項は、「チケットを転売する目的」で「公共の場所」で購入する行為を禁止しています。このご質問の場合、「チケットを転売する目的」は認められるようです。では「公共の場所」で購入したという要件をみたすことになるでしょうか。チケットの購入がオンラインで行われたとしてもチケットの引渡しの方法が「公共の場所」で行われたとすれば「公共の場所」で購入したと判断される可能性もあるのではないでしょうか。例えば、オンラインでチケットを購入し、チケットが郵送されてくるような場合には、「公共の場所」での購入がなかったということがいえると思われます。一方、オンラインでチケットを購入し、発券窓口など「公共の場所」と判断されるような場所で実際のチケットの発券を受けたような場合には、発券を受けた「公共の場所」で購入行為の一部が行われたと解釈されて、「チケットを転売する目的」で「公共の場所」でチケットを購入し、ダフ屋行為を行ったと判断されることもあると考えられます。
また、買い占め行為は物価統制令により禁止されています(物価統制令14条)。したがって、「公共の場所」の要件をみたさず迷惑防止条例に該当しないケースであったとしても物価統制令違反になり違法というケースも考えられます。また、買い占め行為を行ったということはその購入、販売量も多いということになりますから「業として」販売するということになり、古物営業法上の問題も発生する可能性があるということになります。
「公共の場所」にオンラインは含まれないという解釈が一般的と考えられていますが、問題となる事例が頻発することになれば、「公共の場所」にネットオークションなどのオンライン取引を含めるような条例の改正を行うこともあるかもしれません。マナーを守ったネットオークションの利用が必要でしょう。
東京都:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
(乗車券等の不当な売買行為(ダフヤ行為)の禁止)
第二条 何人も、乗車券、急行券、指定券、寝台券その他運送機関を利用し得る権利を証する物又は入場券、観覧券その他公共の娯楽施設を利用し得る権利を証する物(以下「乗車券等」という。)を不特定の者に転売し、又は不特定の者に転売する目的を有する者に交付するため、乗車券等を、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所(乗車券等を公衆に発売する場所を含む。以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、買い、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、若しくは公衆の列に加わつて買おうとしてはならない。
2 何人も、転売する目的で得た乗車券等を、公共の場所又は公共の乗物において、不特定の者に、売り、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、若しくは乗車券等を展示して売ろうとしてはならない。
物価統制令
第九条ノ二 価格等ハ不当ニ高価ナル額ヲ以テ之ヲ契約シ、支払ヒ又ハ受領スルコトヲ得ズ
第十条 何人ト雖モ暴利ト為ルベキ価格等ヲ得ベキ契約ヲ為シ又ハ暴利ト為ルベキ価格等ヲ受領スルコトヲ得ズ
第十四条 何人ト雖モ業務上不当ノ利益ヲ得ルノ目的ヲ以テ物ノ買占又ハ売惜ヲ為スコトヲ得ズ
古物営業法
(許可)
第三条 前条第二項第一号に掲げる営業を営もうとする者は、営業所(営業所のない者にあつては、住所又は居所をいう。以下同じ。)が所在する都道府県ごとに都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。
2 前条第二項第二号に掲げる営業を営もうとする者は、古物市場が所在する都道府県ごとに公安委員会の許可を受けなければならない。
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