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2015年6月16日 (火)

昔の原稿2002年10月版(ファイル交換)

2002年10月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。あくまで過去の原稿ということをご了承ください。

Q1

WinMXなどのピアツーピアソフト(ファイル交換ソフト)を利用したファイル交換は近年盛んに行われています。利用者にとっては大変便利なソフトですが、ピアツーピアソフトを利用して音楽、映像等のファイルをダウンロードすることは、相手方のコンピューター上のファイルを自分のコンピューターに「複製」することになります。ホームページ上でダウンロードできる状態になっている音楽、映像等のファイルをダウンロードすることも「複製」に該当します。著作物を複製する権利はもともと著作権者だけが持つ権利です(著作権法21条)。したがって著作権者自身あるいは著作権者から許諾を得た場合でなければ複製することができないのが原則です。

音楽の場合であれば作曲家・作詞家(作曲家・作詞家から音楽出版社に著作権が譲渡され、さらにJASRACなどの著作権等管理事業者に信託譲渡されている場合がほとんどです)およびレコード製作者に、テレビ番組であれば制作会社やテレビ局に、映画の場合であれば映画製作会社に複製権がありますので、許諾を得ないで複製行為を行うことは違法になります(著作権法21条、29条1項、96条、98条、100条の2)。また実演家の著作隣接権(録音権)を侵害する場合もあります(著作権法91条)。

ただし、ご質問のようなダウンロード行為は個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする限り、私的使用のための複製に該当しますので、違法ではありません(著作権法30条1項)。なお、プロテクトをはずすなど技術的保護手段の回避等によって行われる場合には私的使用目的の複製には該当しませんので違法となります(著作権法30条第1項2号)。また、ダウンロード時に、ダウンロードしたファイルをピアツーピアソフトを使って公開しようと考えているのであれば、私的使用の目的の複製には該当しないことになりますのでダウンロード自体が違法な複製ということになります。さらに、私的使用の目的で複製したファイルを他の目的に使用することがあれば、その段階で違法な複製があったものとみなされます(著作権法49条)。私的使用目的のダウンロードだからといって無制限に許されるわけではなく、「著作物の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しないこと」が求められています。テレビ番組をビデオに録画して家庭にビデオライブラリーを作る行為ですら著作者の正当な利益を不当に害するのではないか、という考えもあるくらいです。

「ピアツーピアソフトを利用すれば匿名性を確保しつつ簡単にファイルをダウンロードできる」と考えて限度を超えてダウンロードすることは、著作者の正当な利益を不当に害する場合もあるでしょう。だからといってピアツーピアソフト自体が悪であるという考えも極端な気もします。ピアツーピアソフトの使用自体は何ら違法ではありませんので、どのように使っていくのかということが違法か合法かの分かれ道ということになります。

 

Q2

通常のテレビ番組は放送以前に録画・編集され、「映画の著作物」に該当します。映画の著作物については「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする」(著作権法2条3項)とされていますので、劇場用のいわゆる「映画」でなくとも、放送以前に録画・編集されビデオテープに固定されているテレビドラマ、バラエティなどは「映画の著作物」に該当することになるわけです。また生放送の番組についてもこれを受信して録画することは私的使用の目的でない限り、放送事業者の複製権(著作権法98条)を侵害することになります。放送事業者は、自分で番組を作っていない場合、つまり著作権者ではない場合でも著作隣接権者として保護されているのです。

最近は市販のパソコンにもテレビチューナーやDVD-RWなどの大容量メディアが搭載されるようになり、特に知識がなくても簡単にテレビ番組をキャプチャーできるようになってきました。またMPEG2やMPEG4などの圧縮を行うことでファイルサイズが小さいにもかかわらず高い画質で保存できるため、テレビ番組をパソコンで保存するユーザーも多いようです。ご質問の場合、テレビ番組をそのままキャプチャーしたのかビデオテープに録画したうえでデジタル化したのかわかりませんが、どちらにしてもデジタル化することは著作物の複製にあたりますので私的使用目的でない限り著作権者や著作隣接権者などの権利者の複製権を侵害します。もしデジタル化した段階でファイル共有を目的としていたのであれば、ファイル共有目的の複製は私的使用目的の複製にはあたりませんので、デジタル化したこと自体が権利者の複製権を侵害することになるでしょう。ファイル共有の目的がなく、自分で楽しむためにデジタル化した場合であれば、私的使用目的の複製として合法になります。ただし、私的使用目的でデジタル化した番組を他人に配布できる状態にした場合には、違法な複製があったものとみなされます。

テレビ番組については、番組を製作したテレビ局や制作会社に複製権、公衆送信権(著作権法23条)が、出演者などの実演家には送信可能化権(著作権法92条の2)があります。

公衆送信とは「公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うこと」をいいます(著作権法2条1項7号の2)。公衆送信という概念は、放送することも、電話で申し込みを受けてファックスを送信することも、ホームページにアクセスしてきた人にデータを送信することも含む広い概念です。

このうち「公衆からの求めに応じ自動的に行うもの」を自動公衆送信といいます(著作権法2条1項9号の4)。サーバにおかれたホームページのデータがアクセスに応じて自動的に送信される場合や、ピアツーピアソフトの共有フォルダにおかれたファイルが相手方の求めに応じて自動的に送信される場合などがこれに該当します。

自動公衆送信できる状態にすることを送信可能化といいます(著作権法2条1項9号の5)。情報の発信者がデータをウェブサーバにアップロードしたり、ピアツーピアソフトの共有フォルダにデータをいれることがこれに該当します。実際にファイルを送信した場合には権利者の公衆送信権を侵害することは当然ですが、実際にファイルを送信しなくても、ピアツーピアソフトの共有フォルダにファイルを保存しいつでもファイル交換可能な状態を作り出すだけで権利者の送信可能化権を侵害することになるので注意が必要です。

以上のとおり、ピアツーピアソフトの共有フォルダやホームページ上に映像や音楽のファイルなどをおいてダウンロードできる状態におくことは、権利者の複製権や公衆送信権、送信可能化権を侵害することになります。複製権や公衆送信権、送信可能化権を侵害した場合、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金という刑事罰がありますし、民事上も損害賠償請求を受ける可能性があります。

 

Q3

違法なファイル交換については権利者も捜査機関も監視を強めています。キャプチャーした映像の場合ではありませんが、2001年11月にはWinMXを使用してビジネスソフトを交換していた(公衆送信権侵害)、あるいは交換可能にしていた(送信可能化権侵害)として2名の学生が逮捕されました。テレビ番組のキャプチャーを交換して逮捕された例は聞きませんが、人気のあるテレビ番組は、今までもビデオ化、DVD化され、権利者にとっては今後も引き続き利益を得ることができる重要な財産です。また、ブロードバンド時代を迎えた現在では、権利関係の調整さえできればインターネット上でテレビ番組を流して利益をあげたいと考えているはずです。テレビ番組がキャプチャーされ、インターネット上で頻繁に交換されるようなことになると、権利者も黙っていないと思われます。

もし、権利者がテレビ番組のファイル交換の事実を認識して調査したうえ、プロバイダを特定できれば、権利者としては積極的に警察に捜査を求めることになるでしょう。警察は令状をもってプロバイダから資料の提出を求めることができるのですから。

刑事の場合だけでなく民事の分野でも権利者が著作権侵害を行う者に対して損害賠償請求をすることも十分考えられます。今までプロバイダは、令状がない場合には「通信の秘密」を盾にして契約者の個人情報を開示することはありませんでしたが、平成14年5月27日に施行されたプロバイダ責任制限法により一定の場合にはプロバイダは利用者の情報を権利者(被害者)に開示しても免責されることになっています。

もっともプロバイダ責任制限法の適用があるか否かはまだ事例が少ないため微妙です。というのは、プロバイダ責任制限法は、不特定者によって受信されることを目的とする電気通信の送信(特定電気通信といいます)を対象としていますが、「ピアツーピアソフトの場合、特定の者に送信しているのであって、特定電気通信ではないのではないか。」という問題があるからです。ただ、実質的に考えてみると、ファイルを送信する者は、名前も知らない相手にファイルを送信している場合が多いわけですから特定電気通信であるといえなくもありません。ホームページ上に許諾を得ていない映像ファイルをダウンロード可能な状態にしているのと実質的に同じです。したがって、プロバイダ責任制限法の適用の可能性もありうると考えておいた方がよいでしょう。プロバイダ責任制限法ではプロバイダ等に対して著作権など他人の権利を侵害する情報を発信している者の氏名、住所を開示請求する権利を定めています。あまりたくさんのファイルを送信しているとIPアドレスが特定され、契約しているプロバイダに開示請求されているかもしれません。

 

 

 

 

過去の事例

① 2002年4月、ファイルローグという名称で運営されていたファイル交換サービスについて、著作権者の自動公衆送信権、送信可能化権、著作隣接権者の送信可能化権侵害を理由に利用者へのファイル情報の送信の差止めが命じられました。

② 2001年11月、WinMXをインストールしたパソコンを利用して「Adobe Photoshop 6.0日本語版」などを他のユーザーがダウンロードできる状態にしていた学生2名が逮捕されました。ファイル交換ソフトを利用した著作権侵害による世界初の刑事摘発であるといわれています。

 

 

著作権法

(定義)

第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 
 一  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
 
 二  著作者 著作物を創作する者をいう。
 
 四  実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行なう者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。
 
 七の二  公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(有線電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
 
  九の四  自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。
 
 九の五  送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。
 
  イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。
 
  ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。

 

(複製権)
第二十一条  著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

 

(私的使用のための複製)
第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
 
 一  略
 
 二  技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

 

 

(罰則)

第百十九条  次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

 一  著作者人格権、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者又は第百十三条第三項の規定により著作者人格権、著作権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)

 

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