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2015年6月25日 (木)

昔の原稿2003年4月版(出会い系サイト)

2003年4月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります(12年前とは結構変わっています)

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

 

> Q1・出会い系サイトでメールなどで知り合った女性が

 

> 実はサクラで、しかも男性だった場合、訴えることは可能でしょうか?

 

 

 

サクラがいるということは有料のサイトだと思われます。有料の出会系サイトではサクラがいる場合があるという話も聞いています。昔のテレクラなどでもサクラがいたらしいですし、出会系サイトで知り合った異性と実際に街で出会ったら、実は高額商品のセールスだった、などという話も聞きます。金儲けのカモにされているという利用者もいるかもしれません。どんなサービスでも加入するときは冷静にしたいものです。さて、ある男性(仮にAさんとしましょう)が有料出会い系サイトに登録して、自称女性(Bさんとします)と知り合い、メールをやりとりしていたのにもかかわらず、実はBは男性だった場合、誰にどのように請求できるでしょうか。

 

 

 

まず、AからBに対して何か請求できるでしょうか。男性であるBを女性と信じてメールを交換していたAとしてはたまったものではありませんが、女性になりすます男性が多いのはネット上では常識のような気もします。精神的損害が認められる可能性は低く、仮に慰謝料が取れるとしても少額にとどまると思われます。もしどうしても訴えたいということであれば、簡易裁判所の民事調停や少額訴訟(30万円以下の金銭支払請求の場合に利用することができます)などを利用することが考えられます。

 

 

 

では、出会系サイトを主催している業者(Cとします)に対しては、何かいえるでしょうか。Cが「サクラはいません!」などと広告に記載して客を勧誘していた場合には、広告に反して実際にはサクラを使っていたわけですから、明らかに業者はウソをついていたといえます。AはCのウソの勧誘を信じてCと出会系サイト利用契約を締結したということになりますので、Aは保護されるべきだと思われます。

 

平成13年4月に施行された消費者契約法4条1項は、「消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。」と規定し、同項1号で「重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認」と規定していますので、Aは出会系サイト利用契約を取り消すことができるということになります。

 

また詐欺があったことを理由として出会系サイト利用契約を取り消したり(民法96条1項)、錯誤を理由として出会系サイト利用契約そのものが無効であったと主張することができるでしょう(民法95条本文)。既に支払った利用料についても契約当初に遡って支払うように請求することも可能だと思われます。

 

業者が任意に支払ってくれない場合には、裁判ということになります。この場合も、簡易裁判所の民事調停や少額訴訟などを利用すればよいと思います。

 

ただし、裁判に勝ったとしても、判決書は紙切れです。判決書を相手に突き付けても払ってくれるとは限りません。払ってくれない場合には、判決に基づいて強制執行(相手の預貯金、債権、動産、不動産を差し押さえて回収する)をすることができます。強制執行は相手の財産のありかがわかっている場合には有効ですが、相手の財産を発見できなければ強制執行することもできません。訴訟前に相手の財産(例えば預貯金、不動産)の所在がわかっていれば、裁判の前に仮差押などをして相手の財産が流出しないようにすることはできます。ただし、仮差押も強制執行もそれなりの費用(裁判所に払うお金)がかかってしまいます。結局のところ、裁判にかかるコストと回収の見込みを考える必要があります。

 

刑事の面では、詐欺罪(刑法246条)に該当するおそれがありますので、警察に被害届を提出することなども考えられます。

 

結局のところ、怪しそうなところ、危なそうなところには近づかないことです。

 

 

> Q2・出会い系サイトに入ってから迷惑メールが多くなった。

 

> サイトから情報が漏れていると思われるのですが?

 

> 個人情報が守られていない場合はどうすればいいのでしょうか?

 

 

 個人情報については、国際的には1980年9月にOECD理事会で勧告された個人情報保護の8原則、1995年10月のEU指令などでも十分な保護措置が図られるよう定められ、また日本でも1998年に当時の通商産業省によって策定された「民間部門における電子計算機処理に係る個人情報保護ガイドライン」でも適正な管理が求められています。

 

個人情報保護法案でも「適正な取扱いが図られなければならない」と規定されています(個人情報保護法案3条、いつ成立するのか不明ですが・・・)。個人情報の取扱いについては、これを適正に行おうとするまっとうな事業者と、あまり意識していない事業者、金儲けのためには個人情報を売る事業者がおり、ある程度の規模の事業者であれば、個人情報の流出に対する苦情にはそれなりに対応してくれるものと思われます。したがって、個人情報が流出したと思われる業者に対しては、まず苦情を申し入れるべきでしょう。また、個人情報の流出が当該事業者の故意または過失による場合には、損害賠償の請求(民法709条)も可能だと思われます。ただ、苦情を申し入れたところで、悪徳業者は行方不明になってしまうでしょうし、流れてしまった個人情報はもう元に戻すことはできません。個人情報やプライバシーの流出がなかったという状態には戻すことは不可能です。ですから、個人情報の流出先である迷惑メールの送信元に対してもメールの再送信の拒絶の申入れが必要になるかもしれません。ただ、悪徳業者の場合には、再送信の拒絶の申入れがあったということは逆に有効なメールアドレスであると判断し、もっと多くの迷惑メールが来る可能性もあるので再送信拒絶の申入れには注意が必要でしょう。二次被害の危険性もあるからです。

 

ちなみに、最近は「債権譲渡を受けたので顧問弁護士と相談した結果最終和解案を決定した」「遅延損害金(それも高額)を払え」「直接自宅・勤務先に取り立てに行く」などの悪質な債権回収メールが送られてくることもあるようです。このようなニセ請求メールは無視するに限ります。払う必要はありません。また、相手方に問い合わせをしたりしてさらにこちらの個人情報を与えてはいけません。そのような悪質な債権回収メールの送信は、詐欺罪(刑法246条)はもちろん、あまりに内容がひどければ恐喝罪(刑法249条)に該当しますので警察に相談することも有効です。

 

なお、参考までに、債権譲渡をする場合には、債権を譲渡する側から債務者に通知を出さなければなりません(民法467条1項)。債権の譲渡を受けた側から通知が来たとしてもほとんどの場合法的には意味がありません。また、消費者契約法9条2項が定めている遅延損害金の上限は年14.6パーセントですから、仮に遅延損害金を払うことになったとしても確認する必要があります。

 

 

 

> Q3・お金を払っていたのに、出会いのないままサイト自体が消滅してしまった。

 

> どう対処すればいいのでしょうか?

 

 

 

そのサイトを主催していた個人あるいは会社に既払い金の返還を求めることができますが、問題は主催者の名称や住所などがわかっているのかどうかです。明らかであれば配達証明付内容証明郵便(最近はインターネットを介して送ることができます)、簡易裁判所の支払督促命令や少額訴訟などを利用して請求することができます。では、名称や住所が不明確な場合はどうすればよいでしょうか。

 

 

 

まず考えられるのは「Whois」を使って主催者が利用していたドメインの管理者を特定することです。ドメインの管理者が主催者自身であれば、その管理者に請求すればよいのですが、単に主催者が利用していたプロバイダーであるということもあります。この場合、主催者が利用していたプロバイダーに協力を求められるか?という問題になります。

 

 

 

主催者が利用しているメールやサーバーのプロバイダーに対して

 

 

 

フリーメールなどの場合にはプロバイダー側でも契約者情報を把握していないことが多いでしょうが、通常は契約者の住所・氏名等は把握しているはずです。この場合、弁護士であれば、弁護士法23条の2に基づいてプロバイダーに照会を求めることができます。ただ、この照会に対してプロバイダーは電気通信事業法4条に定められた「通信の秘密」を根拠として回答を拒否することになるでしょう。

 

なお、プロバイダー責任制限法4条1項はプロバイダーに対して氏名、住所などの開示を請求することができる旨定めていますが、この開示は、「特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害された」場合に限定されています。例えば、情報の流通によって名誉を毀損されたとかプライバシー権の侵害があったとか、著作権や商標権を侵害された場合を想定しています。「サイトが消滅して被害を受けた」といった場合は、「情報の流通によって自己の権利を侵害された」とはいえませんので、この条文を使うことができません。

 

 

 

銀行に対して

 

 

 

主催者の銀行口座が判明している場合には、弁護士であれば、弁護士法23条の2に基づいて銀行に照会し銀行口座名義人の登録住所の照会を求めることができます。

 

 

 

クレジットカードを利用していた場合

 

 

 

クレジットカードで料金を支払っていた場合、サイトが消滅したにもかかわらず、そのままカード会社から請求が来てしまう、ということがあるかもしれません。この場合、まず、カード会社に対しては、カード加盟店である主催者が一方的にサービスを停止してしまったことやカード加盟店とは連絡が取れないことを伝え、こちらとしてはサービスの提供を受けていない以上、料金を支払う意思がないこと(「同時履行の抗弁」といいます、民法533条)を伝え、あるいはカード加盟店との間の契約の終了を主張して、引き落としを停止するようにカード会社に連絡することが必要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

消費者契約法

 

(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)

 

第四条  消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

 

  重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認

 

  物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認

 

  消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。

 

  略

 

  第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいう。

 

  物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容

 

  物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件

 

  略

 

 

 

民法

 

第九十五条  意思表示ハ法律行為ノ要素ニ錯誤アリタルトキハ無効トス但表意者ニ重大ナル過失アリタルトキハ表意者自ラ其無効ヲ主張スルコトヲ得ス

 

第九十六条  詐欺又ハ強迫ニ因ル意思表示ハ之ヲ取消スコトヲ得

 

 以下略

 

 

 

刑法

 

(詐欺)

 

第二百四十六条  人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

 

  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

(恐喝)

 

第二百四十九条  人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

 

  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

 

 

プロバイダー責任制限法

 

(発信者情報の開示請求等)

 

第四条  特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。

 

  侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。

 

  当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。

 

  以下略

 

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