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2015年7月29日 (水)

昔の原稿2005年12月版(海外サイトやファイル共有で入手したROMファイルをPSP上で遊ぶのは違法行為か?)

2005年12月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください

●海外サイトやファイル共有で入手したROMファイルをPSP上で遊ぶのは違法行為か?

 

ROMファイルはプログラム(著作権法2条1項10号の2)の著作物(著作権法10条1項9号)であり、ネット上でROMファイルを入手しダウンロードすることは、著作物の複製に該当します。著作権者に無断で複製することは原則として複製権(著作権法21条)の侵害になりますが、私的使用目的の範囲では複製が認められています(著作権法30条1項)。また、プログラムの実行は日本の著作権法では原則として制限されていませんので、PSP上で遊ぶ行為は法律上は違法行為とはいえないでしょう(但し、例外として海賊版を海賊版と知って入手し、「業務上」使用する行為は著作権法113条2項により著作権を侵害する行為とみなされています)。

 

UMDPSPのゲームメディア)からデータを吸い出すのは違法行為か?

 

 データが「プログラム」であれば、データを吸い出す行為はプログラムの著作物の複製に該当します。この複製が私的使用目的であれば違法ではないということになりますが、私的使用目的の解釈については厳しく解釈する人もいれば緩やかに解釈する人もおり、狭く解釈すれば違法ということになりますし、広く解釈すれば合法ということになります。著作権法は30条1項で私的使用目的での複製を認めている他に、47条の2でプログラムの著作物の複製物の所有者に一定の限度で複製を認めています。UMDの所有者(購入者)がデータを吸い出す行為が47条の2に該当する場合には複製が許されるということになります(但し、これについても狭く解釈する人もおり、ROMカセット・CD-ROM・UMDからのバックアップは47条の2に該当しないという解釈もありえます)。

なお、ネット上にアップロードする目的でデータを吸い出すという場合には、複製の目的がそもそも私的使用目的ではありませんし、私的使用の目的で複製したデータをさらに複製して第三者に頒布する場合は、複製権の侵害を行っていることになります(著作権法49条1項1号)。また、利用許諾契約(ライセンス契約)などで無断複製を禁じていると考えられますので、この契約が有効であるとすれば少なくとも契約違反ということになるでしょう。

 

PSPをダウングレードすると不正行為なのか保障対象外になるとのことだが、ダウングレード自体は違法行為か?違法でないとしたら、ダウングレードによる故障に対して保障をしてもらうことはできないのか?

 

 ダウングレード自体は違法行為ではないでしょう。ただ違法でないからといってメーカーに保証を求めることができるかというとそうではありません。

 ユーザーがある商品を店から購入する場合、ユーザーと店との間には売買契約が存在し、もし商品に問題があればその店に交換や修理を求めることができるでしょう。しかしながらユーザーとメーカーとの間には直接の売買契約はありません(直販の場合は除きますが)。メーカー保証という制度がありますが、これはあくまでも消費者保護、消費者サービスのため、メーカーが独自に行っているものであって、必ずしもメーカーの法的義務として行っているものではありません。仮にメーカーが責任を負うとすれば、製造物責任法(PL法)の場合ですが、本件は「製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合」(製造物責任法1条)ではありませんのでメーカーは製造物責任を負いません。

 メーカーが消費者サービスの一環として無改造の製品やメーカーが推奨したアップグレードを行った製品のみを保証の対象とすることはメーカーの自由です。また、ユーザーがメーカーが推奨しない改造をした結果、製品に問題が発生したとしてもそれはメーカーの責任ではありません。

メーカーが推奨するアップグレードで故障が発生したという場合にはメーカーに責任があると思われますが、メーカーが推奨しないダウングレードを行った場合にはメーカーに対して保証を求めることは法的にはできないでしょう。

 

PSPがウイルスで故障してしまった。ソニー以外のパッチを当てたPSPは修理を行なってくれないとのことだが、メーカー側に修理の義務はないのか?

 

 ユーザーとメーカーとの間には直販などの場合を除き直接の契約関係がありません。メーカー保証はメーカーが直接の契約関係にないユーザーに対して、一定の条件の下で保証義務を負うことを定めたものであって、条件を満たさないようなケースではユーザーがメーカーに対してメーカー保証や修理を求めることはできません。

 改造やダウングレードを行わなかったにもかかわらず(まったく無改造であるにもかかわらず)ウイルスで故障したような場合には、メーカーもメーカー保証や修理に応ずるべきだと考えますが、ソニー以外のパッチをあてるなどの改造を行った結果、ウイルスに感染し故障してしまったような場合には、メーカー側にはメーカー保証や修理に応ずる義務はありません。たまたま修理に応じてくれたというケースもあるようですが、修理に応ずる義務まではないので修理を断られたとしてもメーカー側に責任を追及することは難しいと思われます。

メーカーが提供していないパッチを使用することは、あくまでも「自己責任」になりますから注意してください。

 

条文

著作権法

(著作物の例示)

第十条一項  この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

  小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物

  音楽の著作物

  舞踊又は無言劇の著作物

  絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物

  建築の著作物

  地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物

  映画の著作物

  写真の著作物

  プログラムの著作物

 

(私的使用のための複製)

第三十条一項  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

 

(プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等)

第四十七条の二  プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。ただし、当該利用に係る複製物の使用につき、第百十三条第二項の規定が適用される場合は、この限りでない。

  前項の複製物の所有者が当該複製物(同項の規定により作成された複製物を含む。)のいずれかについて滅失以外の事由により所有権を有しなくなつた後には、その者は、当該著作権者の別段の意思表示がない限り、その他の複製物を保存してはならない。

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