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2015年7月

2015年7月31日 (金)

市川調停協会 調停相談会

市川調停協会の調停相談会のお知らせ

      平成27年10月17日(土)

時間   午前10時~午後3時

場所   市川市役所1階 および 船橋フェイス5階 2会場で同時開催

相談料 無料

となっています。

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昔の原稿2006年2月版(楽天ポイント騒動)

2006年2月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください

> ●楽天ポイント騒動

> 1アカウント300500円分のポイントが付与される楽天のキャンペーンで、

> アカウントを複数所得してポイントを大量取得する行為は、法的に問題が

> ないのか?(数アカウント程度ならよくても、1万アカウントならダメというよう

> なケースもあるのか)

 

 今回問題となったキャンペーンは、1アカウントについて300500円分のポイントが付与されるというキャンペーンですが、もともと楽天会員のアカウントは1人につき1アカウントではなく、1つのメールアドレスにつき1アカウントというもののようです。したがって、複数のメールアドレスを保有している人物が複数の楽天会員のアカウントを保有することは理屈としては予想されていたでしょうし、その人物がポイントを複数回取得することもある程度は予測していたものと考えられます。

 しかしながら、1人の人物が数十、数百、数千のメールアドレスを保有し、さらにその数に応じた楽天のアカウントを保有することまでは、理屈としてはありえるとしても、実際に行う人がいるとは予想しなかったのでしょう。

 実際にポイントを大量取得した人について何か法的に問題となるのか検討してみましょう。まず、楽天側は複数アカウントの取得そのものを禁止しているわけではありません。また、今回のキャンペーンについて1人につき1回だけ参加できるとしていたわけではないようです。これだけを考えると、1人で1万アカウント取得して、キャンペーンに参加し、ポイントを大量取得することは問題がないようにも思えます。しかしながら物事には限度というものがあります。仮に規約の理屈上は問題ないということでも、権利を行使される楽天側からすれば、そのような大量取得者については、大量取得行為自体が規約の別の条項に反している(規約の一般条項の部分ではポイント提供者側が一方的にポイントを無効にできるような部分が用意されていることが多いと考えられます)など、何らかの形で大量取得者の権利行使を防ぐ手段が用意されている可能性があります。また、ユーザーの権利行使が信義則(民法1条2項)に反するとか、権利濫用(民法1条3項)であるとの主張が可能かもしれません。

 

> ・楽天側は複数アカウントの取得を禁じる規約を用意していなかったにも

> かかわらず、ポイント返還やポイント利用分の買い物を現金で払うよう請求

> したのは、法的に問題がないのか?

 

キャンペーンはもともとサービスの利用拡大を狙っていると思われます。ですから、利用拡大につながるようなポイントの取得は何ら問題はないはずです。ですが、そもそも過剰にポイントを発行し、結果的に事業運営自体ができなくなるようなことは、さすがに合理的な限度を超えたキャンペーンといえます。

楽天側の不備につけ込んで過大にポイントを取得し、そのポイントを利用した場合には、キャンペーンの「ただ乗り」には違いありません(もともと「ただ」ですが)。いくら規約上は複数アカウントの取得を禁止していなかったとしても、何百、何千とアカウントを取得してポイントを取得したような場合には、さすがにポイント取得に合理性があるようには思われません。もしも、楽天側に有利に解釈すれば、過大なポイントを取得し実際に利用することは権利の濫用であって、無効なポイントの利用形態であり、実際に商品を購入した場合には、その対価を返還せよ、ということになるのでしょう。ですが、実際に利用したポイントについて現金で支払を求めたりするのは、ユーザー側の立場からすれば、どうかという印象もあります。楽天自身が当初から過大なポイント取得について何ら制限を設けていなかったからです。バランスをとるとすれば、民法703条(不当利得返還義務)は「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」と定めていますので、利益が残っている限度で返還するという形が結論としてはよいと思われます。例えば、ユーザーによる何百、何千といった明らかに過大なアカウント取得とポイント取得があり、そのポイントを利用して買い物をした場合には、実際に品物がユーザーの手元に残っている範囲で返還するということです。

 

> ・そもそも、サービスポイントは法的にどのように扱われるか?

 

 ポイントは、商品又は役務(サービス)を通常の価格よりも安く購入できる利益です。今回問題となっている楽天ポイントだけでなく航空会社のマイレージなどもこれに該当します。ポイントに応じて割引を受けられる制度は、ポイントが景品類にあたるか否かで法的な扱いが異なると考えられます。もしも景品類に該当すると考えると景品表示法の規制があります。景品表示法の規制がある場合には、例えば、顧客にもれなく景品をつける場合には取引額の10%以内の景品でなければならなくなります。顧客との取引が1万円であるとすれば、その顧客に提供できる景品は1000円以内でなければならないということです。

 では、ポイントは景品といえるでしょうか。この点、値引きをすることやキャッシュバックは景品としては扱われておらず、正常な商慣習に照らして適当な範囲であれば、特に値引き額について規制はありません。結論としては、マイレージを代表とするポイントは景品として扱われておらず、適当な範囲であれば特に規制はありません。

 今回のポイントがもしも「景品類」であったならば、楽天が同一人物にポイントを大量に取得させてしまうことは景品表示法の趣旨に反するということになりますが、ポイントは「景品類」ではないので、この点では問題がないということになります。

 

民法

(基本原則)

第一条  私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

  権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

  権利の濫用は、これを許さない。

 

(不当利得の返還義務)

第七百三条  法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

 

景品表示法

(景品類の制限及び禁止)

第三条  公正取引委員会は、不当な顧客の誘引を防止するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。

2015年7月30日 (木)

昔の原稿2006年1月版(スパイウェア)

2006年1月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください

・スパイウエアをメールなどに仕込んで他人の個人情報を盗み出す

のは違法行為か?あるいは、スパイウエア入りのメールを送っただけ

でも違法行為か?

 

 スパイウエア入りのメールを送る行為そのものは現在の日本の法律では制限されているとはいえません(「通信の秘密」を侵害するようなスパイウエアについては後述)。ただ、スパイウエアが組み込まれた結果、コンピューターの動作に影響を与えたり、個人情報が流出してしまうような場合には、違法といえる場合があるでしょう。また、より限定されたケースですが、スパイウエアを仕込まれた側の「通信の秘密」が侵害されるような場合には、電気通信事業法や有線電気通信法の罰則の適用があるかもしれません。

 

①電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)

 刑法234条の2はコンピューターそのものやプログラム、ファイルを損壊したり、不正な指令などを与えて、コンピューターをダウンさせたり、正常に動作させないようにして業務を妨害することを犯罪としています。5年以下の懲役又は100万円以下の罰金という罰則が設けられています。

 スパイウエアをメールなどに仕込んで、他人のコンピューターに影響を与え、業務を妨害した場合には、この犯罪が成立することもあるかもしれませんが、単に個人情報を盗むにとどまる場合にはこの犯罪は成立しないでしょう。

②個人情報保護法17条違反

 個人情報保護法17条は「個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。」と規定しています。スパイウエアが「不正の手段」といえるかどうかですが、個人情報を盗み出すためのスパイウエアについては、利用者もそのようなスパイウエアを承諾していたとは通常考えられませんので、「不正の手段」といえるでしょう。したがって、個人情報取扱事業者がこのようなスパイウエアを利用して個人情報を取得すれば個人情報保護法17条に違反するものと考えます。

③不法行為(民法709条)

 スパイウエアがコンピューターに仕込まれたため、コンピューターの動作が遅くなったり、スパイウエアをアンインストールできず再度OSからインストールせざるを得なくなったなどコンピューターそのものに何らかの損害を受けてしまったような場合や、個人情報が流出してしまって損害を受けてしまったような場合には、民法上の不法行為責任(民法709条)が発生することも考えられます。

④「通信の秘密」侵害

 もし、スパイウエアが「通信の秘密」を侵害する態様(例えば電話の盗聴のように)で動作するものであれば、電気通信事業法179条1項(2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)、有線電気通信法14条1項(2年以下の懲役又は50万円以下の罰金)の罰則の適用が考えられます。また、かなり限定されたケースだとは思いますがこのようなメールを送りつける行為が未遂罪を構成することもあるかもしれません(電気通信事業法179条3項、有線電気通信法15条)。ただ、実際に起訴するのは難しいでしょう。

 

・駆除サイトを装ってスパイウエアをインストールさせるサイトが存在

するが、法律的に問題ないのか?

 

 駆除サイトを装っているにもかかわらずスパイウエアをインストールさせてしまうというのは道義的には非常に悪質です。ただ、最初の質問と同じようにスパイウエアをインストールさせるサイトが存在しても現在の日本の法律では制限されているとはいえません。ただ、場合によっては電子計算機損壊等業務妨害罪や個人情報保護法違反、不法行為責任が成立する場合もあり得るでしょう。通信の秘密の侵害についても同様です。

 

・「スパイウエアを使った浮気調査は違法」という判決がアメリカ・フロ

リダ州で出たが、日本でも違法行為になる可能性はあるのか?

 

 オンラインゲーム上での夫と妻以外の女性との間の会話ログを妻がスパイウエアを利用して取得した場合、①そもそも妻の行為が違法なのか、②妻が取得した会話ログは離婚訴訟や不倫の損害賠償の訴訟で証拠として用いることができるか、が問題となります。

①妻の行為は違法といえるか?

 電気通信事業法4条、有線電気通信法9条は、通信の秘密は侵してはならない旨規定し、通信の秘密を侵した場合には罰則があります(電気通信事業法179条1項、有線電気通信法14条1項)。例えばスパイウエアの使用が電話回線に盗聴器をつけたケースとほとんど同じといえれば罰則の適用もあり得るかもしれません。

 民事上も夫や相手の女性のプライバシーを侵害する不法行為(民法709条)であるという評価もできるかもしれません。

②妻が取得した会話ログを証拠として用いることができるか

 刑事事件の場合には、法廷で証拠として用いることができる証拠には証拠能力が必要となります(刑事訴訟法319条~)。証拠能力がない証拠は法廷では証拠として取り調べることができません。例えば、警察が令状なしに違法に押収した証拠には証拠能力を認めないという場合があります。

 離婚訴訟や損害賠償請求のような民事の事件の場合にはどうでしょうか。民事訴訟の場合には原則としては証拠能力に制限はありません。例外もありますが、妻の浮気調査が違法なプライバシー侵害だとしても、妻が取得した会話ログについては証拠能力を認める可能性が高いのではないでしょうか。

 

条文

 

刑法

(電子計算機損壊等業務妨害)

第二百三十四条の二  人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 

個人情報保護法

(適正な取得)

第十七条  個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

電気通信事業法

第百七十九条  電気通信事業者の取扱中に係る通信(第百六十四条第二項に規定する通信を含む。)の秘密を侵した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

  電気通信事業に従事する者が前項の行為をしたときは、三年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。

  前二項の未遂罪は、罰する。

 

有線電気通信法

第十四条  第九条の規定に違反して有線電気通信の秘密を侵した者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

  有線電気通信の業務に従事する者が前項の行為をしたときは、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 

2015年7月29日 (水)

昔の原稿2005年12月版(海外サイトやファイル共有で入手したROMファイルをPSP上で遊ぶのは違法行為か?)

2005年12月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください

●海外サイトやファイル共有で入手したROMファイルをPSP上で遊ぶのは違法行為か?

 

ROMファイルはプログラム(著作権法2条1項10号の2)の著作物(著作権法10条1項9号)であり、ネット上でROMファイルを入手しダウンロードすることは、著作物の複製に該当します。著作権者に無断で複製することは原則として複製権(著作権法21条)の侵害になりますが、私的使用目的の範囲では複製が認められています(著作権法30条1項)。また、プログラムの実行は日本の著作権法では原則として制限されていませんので、PSP上で遊ぶ行為は法律上は違法行為とはいえないでしょう(但し、例外として海賊版を海賊版と知って入手し、「業務上」使用する行為は著作権法113条2項により著作権を侵害する行為とみなされています)。

 

UMDPSPのゲームメディア)からデータを吸い出すのは違法行為か?

 

 データが「プログラム」であれば、データを吸い出す行為はプログラムの著作物の複製に該当します。この複製が私的使用目的であれば違法ではないということになりますが、私的使用目的の解釈については厳しく解釈する人もいれば緩やかに解釈する人もおり、狭く解釈すれば違法ということになりますし、広く解釈すれば合法ということになります。著作権法は30条1項で私的使用目的での複製を認めている他に、47条の2でプログラムの著作物の複製物の所有者に一定の限度で複製を認めています。UMDの所有者(購入者)がデータを吸い出す行為が47条の2に該当する場合には複製が許されるということになります(但し、これについても狭く解釈する人もおり、ROMカセット・CD-ROM・UMDからのバックアップは47条の2に該当しないという解釈もありえます)。

なお、ネット上にアップロードする目的でデータを吸い出すという場合には、複製の目的がそもそも私的使用目的ではありませんし、私的使用の目的で複製したデータをさらに複製して第三者に頒布する場合は、複製権の侵害を行っていることになります(著作権法49条1項1号)。また、利用許諾契約(ライセンス契約)などで無断複製を禁じていると考えられますので、この契約が有効であるとすれば少なくとも契約違反ということになるでしょう。

 

PSPをダウングレードすると不正行為なのか保障対象外になるとのことだが、ダウングレード自体は違法行為か?違法でないとしたら、ダウングレードによる故障に対して保障をしてもらうことはできないのか?

 

 ダウングレード自体は違法行為ではないでしょう。ただ違法でないからといってメーカーに保証を求めることができるかというとそうではありません。

 ユーザーがある商品を店から購入する場合、ユーザーと店との間には売買契約が存在し、もし商品に問題があればその店に交換や修理を求めることができるでしょう。しかしながらユーザーとメーカーとの間には直接の売買契約はありません(直販の場合は除きますが)。メーカー保証という制度がありますが、これはあくまでも消費者保護、消費者サービスのため、メーカーが独自に行っているものであって、必ずしもメーカーの法的義務として行っているものではありません。仮にメーカーが責任を負うとすれば、製造物責任法(PL法)の場合ですが、本件は「製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合」(製造物責任法1条)ではありませんのでメーカーは製造物責任を負いません。

 メーカーが消費者サービスの一環として無改造の製品やメーカーが推奨したアップグレードを行った製品のみを保証の対象とすることはメーカーの自由です。また、ユーザーがメーカーが推奨しない改造をした結果、製品に問題が発生したとしてもそれはメーカーの責任ではありません。

メーカーが推奨するアップグレードで故障が発生したという場合にはメーカーに責任があると思われますが、メーカーが推奨しないダウングレードを行った場合にはメーカーに対して保証を求めることは法的にはできないでしょう。

 

PSPがウイルスで故障してしまった。ソニー以外のパッチを当てたPSPは修理を行なってくれないとのことだが、メーカー側に修理の義務はないのか?

 

 ユーザーとメーカーとの間には直販などの場合を除き直接の契約関係がありません。メーカー保証はメーカーが直接の契約関係にないユーザーに対して、一定の条件の下で保証義務を負うことを定めたものであって、条件を満たさないようなケースではユーザーがメーカーに対してメーカー保証や修理を求めることはできません。

 改造やダウングレードを行わなかったにもかかわらず(まったく無改造であるにもかかわらず)ウイルスで故障したような場合には、メーカーもメーカー保証や修理に応ずるべきだと考えますが、ソニー以外のパッチをあてるなどの改造を行った結果、ウイルスに感染し故障してしまったような場合には、メーカー側にはメーカー保証や修理に応ずる義務はありません。たまたま修理に応じてくれたというケースもあるようですが、修理に応ずる義務まではないので修理を断られたとしてもメーカー側に責任を追及することは難しいと思われます。

メーカーが提供していないパッチを使用することは、あくまでも「自己責任」になりますから注意してください。

 

条文

著作権法

(著作物の例示)

第十条一項  この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

  小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物

  音楽の著作物

  舞踊又は無言劇の著作物

  絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物

  建築の著作物

  地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物

  映画の著作物

  写真の著作物

  プログラムの著作物

 

(私的使用のための複製)

第三十条一項  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

 

(プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等)

第四十七条の二  プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。ただし、当該利用に係る複製物の使用につき、第百十三条第二項の規定が適用される場合は、この限りでない。

  前項の複製物の所有者が当該複製物(同項の規定により作成された複製物を含む。)のいずれかについて滅失以外の事由により所有権を有しなくなつた後には、その者は、当該著作権者の別段の意思表示がない限り、その他の複製物を保存してはならない。

2015年7月28日 (火)

昔の原稿2005年11月版(オンラインゲームへの不正アクセス)

2005年11月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。 あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

> ●オンラインゲームで他人のアカウントに侵入し、アイテムを

> 入手するのは違法行為か?

 

 他人のアカウント(ID)、パスワードを無断で使用し、オンラインゲームを利用すること自体が不正アクセス禁止法違反になります。

 平成12年2月13日に施行された「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(以下「不正アクセス禁止法」)では、「何人も、不正アクセス行為をしてはならない。」(同法第3条1項)と定めています。この法律でいう「不正アクセス」とは同法第3条2項に掲げられた次のような場合をいいます。

① アクセス制御機能のあるコンピューターに、ネットワークを通じて、他人の識別符号(パスワードなど)を入力することによって利用を可能にする行為。いわゆる「なりすまし行為」などを想定しています。

② アクセス制御機能のあるコンピューターに、ネットワークを通じて、他人の識別符号以外の情報を入力することによって利用を可能にする行為。架空のID・パスワードの入力やセキュリティ・ホールへの攻撃などを想定しています。

③ 認証サーバーによって利用を制限されているコンピューターに関して、ネットワークを通じて、その制限を免れる情報を入力し、利用を可能にする行為。セキュリティ・ホールへの攻撃などを想定しています。

今回のケースは①の「なりすまし」型の不正アクセスに該当します。不正アクセスを行った者に対しては、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金という罰則があります(不正アクセス禁止法8条1号)。

なりすまされた他人のアイテムを入手することで何か犯罪は成立するでしょうか。まず窃盗罪(刑法235条)は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役に処する。」と規定しており、物理的な「財物」を対象にしています。したがって、オンラインゲームのアイテムを対象にしていませんので成立しません。また、詐欺罪(刑法246条1項)は「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。」としており「人を欺いて」いるわけではない本件のようなケースには適用されません。

ただ、なりすまされた側は入手したアイテムが利用できなくなるわけですから損害が発生しているといえるでしょう。したがって、民事上はこのようななりすまし行為を行いアイテムを入手した者について不法行為(民法709条)が成立し、損害賠償責任が発生します。

 

> ●オンラインゲームのレアアイテムを現金で売買するのは

> 違法行為か?

 

 時間のないサラリーマンなどは、長時間ゲームをするということはできませんからレアアイテムを購入してキャラを強くし、時間を節約したいという希望があるでしょう。逆に時間はあるけど仕事はしていないという人は、レアアイテムを売ってお金にしたいという希望があるかもしれません。

 オンラインゲーム先進国ともいえる韓国では、アイテムの取引をめぐるトラブルの増加に伴い、社会問題化し、公正取引委員会がオンラインゲーム運営会社に対して約款上アイテム売買禁止を盛り込むよう勧告しているそうです。

 日本では、オンラインゲームに関してここまで公的な規制がされておらずオンラインゲームのレアアイテムを売買したからといって違法ということにはなっていません(運営会社との間の契約違反ということはあり得ます)。ただ、所得が発生しているのに申告しない場合には所得税法違反の問題があります。

なお、オンラインゲームのアイテムを売るといって現金を振り込ませたうえ実際にはアイテムを渡さない、あるいはアイテムを渡してもらったのに現金を振り込まないというケースであれば、最初からそのつもりであれば詐欺罪(刑法246条)が成立します(十年以下の懲役)。

 

> ●オンラインゲームで別ユーザーに粘着され、スムーズな

> ゲーム進行を再三妨げられた。メーカー側はユーザー同士

> のトラブルに関与しないと規約でうたっていたら、妨害行為

> に対して泣き寝入りするしかない?

 

 現実の世界でこんなことをされれば、場合によってはストーカー規制法、業務妨害罪、民法上の不法行為責任などが問題になりそうです。

オンラインゲームの場合、利用者はオンラインゲーム運営会社の約款(規約)に同意してゲームをしているわけですから、約款に従う必要があります。ただ、約款でユーザー同士のトラブルに関与しないと規定している以上、ユーザーが運営会社に対して苦情を伝えてその運営会社が何ら対応しなくともユーザー側としては運営会社に責任を追及しにくいでしょう。

オンラインゲーム上でつきまとわれ、ゲーム進行を妨げられるというケースは、多数のユーザーが参加するオンラインゲームの性質上、もともと想定されているともいえます(もともと現実の世界と比べれば法律のようなものがないので無法地帯に近い)。にもかかわらず約款上でとくに規定されていないのであれば、そのような「仕様」のゲームであると諦めるしかありません。

ただ、約款上、ユーザーの禁止行為が規定されているような場合には運営会社に何らかの対応をとるよう申し出た方がよいでしょう。

オンラインゲームが本当のコミュニティになるのであれば、オンラインゲーム上の自警団、警察、検察、裁判所などが整備されてもいいかもしれません。半径何十メートル?以内に接近することを禁止する仮処分などがあると泣き寝入りしなくてよいでしょう。

 

 

 

条文

 

刑法

(窃盗)

第二百三十五条  他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役に処する。

 

(詐欺)

第二百四十六条  人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

不正アクセス行為の禁止等に関する法律

 

(不正アクセス行為の禁止)

第三条  何人も、不正アクセス行為をしてはならない。

  前項に規定する不正アクセス行為とは、次の各号の一に該当する行為をいう。

  アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。)

  略

 

(罰則)

第八条  次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

  第三条第一項の規定に違反した者

二 略

 

2015年7月27日 (月)

昔の原稿2005年10月版(アスキーアートは著作物になり得るか)

2005年10月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。 なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。 あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

 

> ●AA(アスキーアート)は著作物になり得るか。
>
社団法人著作権情報センターなどの見解を例に
>
著作物となるという見解がネットでは主流となっているが実際にそうなのかどうか。

 

文字や記号を組み合わせて作成した絵をアスキーアートといいます。顔文字もAAですが、数行に渡って複雑に描かれるものもあります。今回問題になっているモナーもAAということになります。AAが著作物にあたるかどうかですが、ケースバイケースになるものと思われます。

 著作権法2条1項1号は著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定めています。「思想又は感情を創作的に表現」となっていますが、高度なものである必要ななく、幼児が描いた絵であっても著作物に該当するといわれています。

 AAの場合には、誰でも思いつくような単純な文字・記号の組み合わせから数行にわたる複雑な文字・記号の組み合わせまで様々なものがあります。複雑なものについては著作物としての価値があるように思われます。

 

「モナー」は著作物か

 「モナー」「モララー」はネコキャラですが、他のネコキャラとは違う特徴があるように思われます。AAという制約の中から文字・記号を組み合わせて、「モナー」と識別できる絵として成立しているわけですから「著作物」といいうるのではないでしょうか。

 著作物だとすれば、通常は著作権者がはっきりしているわけですが、ネット上で徐々に「モナー」というキャラクターが成立してきたとすれば、著作権者は不詳であったとしても著作権は著作者(キャラクターの形成に関与した人たち)が共有しているといってよいと思われます。

 なお、著作物だとすれば、著作権者に複製権(著作権法2条1項15号、21条)、翻案権(著作権法27条)などがありますし、同一性保持権(著作権法20条)などの著作者人格権も発生しています。ネット上で非商業目的で使う限りにおいては、誰も文句を言わなかったわけですから、非商業目的に限って著作者らが使用を許諾し、また改変や翻案についても許諾していた状態にあるとみることができます。

 

> ●今回エイベックスが使っている「インスパイヤ」という言葉は
>
とても解釈が難しい言葉だと思うが、
>
実際に過去の判例などで、これは著作権侵害ではなくインスパイヤ
>
されてだけの創作物だという主張が認められた例はあるのか?

 

 「インスパイヤ」されたということはオリジナル作品にアクセスしたことを自認しているわけですが、訴訟の場合、パロディを除いて、アクセスしたという主張がなされることはほとんどありません。その理由をケースごとに分けて説明します。

 

A 「創作」といえるためには他人の著作物とは異なるものを作成しなければなりませんが、たまたま既存の著作物と同じものを作成してしまっても、既存の著作物に「依拠」したわけではなく、独自に同じものをつくりだしてしまった場合にも「創作」であるとされています。

B 逆にYがXの著作物を参考にしてYの作品を作った場合はどうなるでしょう。

① Yの創作が加えられていないと評価できる場合には、Yの作品はXの複製、あるいは改変と評価され、Yの行為は、Xの複製権侵害、同一性保持権侵害となります。

② Xの作品にYの創作を加えて新たな著作物をつくったがXの作品の表現が残っているという場合には、Yの著作物はXの著作物の二次的著作物になります。この場合、Yの行為はXの翻案権侵害ということになります。

③ Xの作品を参考にYが新たな著作物をつくりもはやXの作品の表現が残っているとはいえない場合には、YはXの作品を参考にはしたといえますがXの権利を侵害したとはいえません。

 

例えばXがYの作品の存在を知り、著作権侵害で訴えたとしましょう。YとしてはまずAのケースであり、自分はXの著作物なんて知らないと主張するはずです。Bの段階になってしまうと③を主張しなければYは負けてしまうからです。ですから「インスパイヤ」されただけ、という主張をする被告はほとんど存在しないということになります。

 

「のまネコ」騒動はどのケースか

 今回、Aは主張されていません。Bの①②③のどれに該当するでしょうか。「モナー」「モララー」と「のまネコ」を比較してみましょう。目や口、全体の印象を比較しても①か②には該当するが③には該当しないような印象を受けます。

なお、漫画のキャラクターの場合には、まねをした絵がその漫画のどのコマをまねたのかが一応問題になりますが、昭和51年の「サザエさん」の裁判では、まねされたコマを特定することなく著作権侵害を認めています。本件もネット上のどの絵にインスパイヤされたのかは明らかではありませんが、仮に特定できなかったとしても訴訟上は問題ないと思われます。一番問題なのは「モナー」に関しては著作者が誰かがわからないというところではないでしょうか。

 

仮に「のまネコ」が商標登録されたとしたら?

 報道によれば商標登録は取り下げられたそうですが、仮に商標登録されたとしても、ネット上での非営利的な使用は違法にはなりません。商標法上「業として」に該当しない場合には商標権侵害にはならないからです。また、「のまネコ」が独自の著作物だと判断されたとしてもネット上で「モナー」「モララー」を使用することは「のまネコ」の著作権を侵害しません。

 

著作権法

(定義)

第二条一項  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一号  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

十五号  複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。

イ 脚本その他これに類する演劇用の著作物 当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。

ロ 建築の著作物 建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。

 

(同一性保持権)

第二十条一項 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

 

(複製権)

第二十一条  著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

 

(翻訳権、翻案権等)

第二十七条  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

2015年7月24日 (金)

昔の原稿2005年9月版(ブログなどのネット上で他人の誹謗中傷をするのは法的にどんな問題があるのか。 )

2005年9月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください

●ブログなどのネット上で他人の誹謗中傷をするのは法的にどんな問題があるのか。

 

 刑事上の問題と民事上の問題があります。

 まず、刑事上の問題ですが、誹謗中傷の内容によって名誉毀損罪(刑法230条)、侮辱罪(刑法231条)が成立する場合があります。名誉毀損罪は「公然」と「事実を摘示」し、「人の名誉を毀損」した場合に成立します。「公然」というのは、不特定または多数人が認識しうる状態と解されていますから、書き込みがブログなどのネット上になされた場合には、通常は不特定または多数人が認識できる状態になったといえます。「事実を摘示」というのは具体的に人の社会的評価を低下させるに足りる事実を告げることをいいます。具体的かどうかの判断は微妙ですが、「あほ」「ばか」「税金泥棒」は具体的な事実ではないですが、「○○は××と不倫をしている」というのは具体的事実になりうるでしょう。「人の名誉を毀損」は具体的事実を摘示して人の社会的評価を低下させる危険性を生じさせることをいいますから、実際に社会的評価が低下する必要はありません。

 侮辱罪は名誉毀損罪の場合と異なって事実の摘示がなくても人を侮辱した場合に成立します。

名誉毀損罪も侮辱罪も親告罪(刑法232条)といって、被害者からの告訴がなければ起訴することができない犯罪です。

民事上の問題ですが、民事の名誉毀損は事実の摘示がある場合だけでなく、ある事実を基礎として意見や論評を表明する場合を含みます。故意または過失によって人の名誉を毀損した場合には不法行為(民法709条)となり、損害賠償の対象となります。誹謗中傷まではいかず単に個人情報を書き込んだという場合には、プライバシー侵害にはなりますが名誉毀損にはならないでしょう。もちろんプライバシー侵害は民法上の不法行為責任が発生し損害賠償の対象になります。

 

> ●相手が個人ではなく不特定多数の場合でも、それは適用されるのか。

 

 誹謗中傷される相手、つまり名誉の主体は個人だけでなく会社や団体も含みます。しかしながら特定人であることを要します。あるカテゴリーの集団を誹謗中傷したとしてもそれが特定人あるいは特定団体に対する誹謗中傷といえなければ犯罪は成立しませんし、不法行為とならないケースがほとんどでしょう。

 

> ●逆に、自分の個人情報などが書き込まれてしまった場合、どのような対策がとれるのか?

 

 ブログやHPの開設者、ブログやHPのサービスを提供しているプロバイダなどに対して削除を請求することが考えられます。まず、ブログやそれに含まれるコメントなどに個人情報が書き込まれている場合、ブログの開設者に削除を求めましょう。削除を求めたにもかかわらずブログの開設者が何も対応してくれない場合、ブログのサービスを提供しているプロバイダなどに対してプロバイダ責任制限法3条2項を根拠として削除を求めることができます。プロバイダ責任制限法に基づいてプロバイダに削除を求める場合の書式がホームページ上で公開されていますので参考にしてください(http://www.telesa.or.jp/guideline/pdf/provider_041006_2.pdf)。

 

> ●書き込む内容はどのレベルから違法となるのか?

 

 電話帳で公開されている氏名、住所、電話番号であっても他人の個人情報ですから本人の同意なくして公開すればプライバシー侵害となり違法となります。電話帳で公開されているから既に公開されている情報であって別の場所でも公開していいという考え方をするかもしれませんが、電話帳で公開することとネット上で公開することではその影響力が異なります。過去の裁判でもタウンページで公開している情報をネット上の掲示板で公開することがプライバシー侵害として不法行為の成立を認めたものがあります。

 単純な個人情報を掲載するだけでなく、特定の個人や団体について誹謗中傷したりすることは刑法上、名誉毀損罪や侮辱罪の成立があり得ます。また民事上も不法行為責任が成立することになるでしょう。

 会社員やアルバイトが勤務先や取引先の会社の営業秘密など会社内部の情報をブログに書き込むことは、会社との間の就業規則や秘密保持契約などに違反する場合もあります。秘密保持契約に違反しない勤務先に関する書き込みであっても、「大量オタ・・きもい!」発言のように会社のイメージに重大な影響を与えるケースもあります(「過去の事例」参照)。アメリカではブログの書き込みで解雇になったという事例が多数あるそうです。

 一方、他人の情報ではなく自分の氏名や写真や住所などの個人情報を書き込むことは特に違法ではありません。しかし、自分の個人情報をブログに書き込むということは自分のプライバシーを不特定多数の人間に渡すということです。ストーカー被害にあったり、いたずらの対象になったりする危険性は増えていきます。

 ブログは非常に簡単に情報発信できるツールですが、自分の個人情報も他人の個人情報も勤務先などの秘密情報も一度公開されてしまえばその後情報が流通し、書き込んだ本人がいくら努力しても取り返しのつかない状況に陥るという可能性もあるのです。ブログへの書き込みはその後の影響も考えて慎重に行うことを心がけましょう。

 

過去の事例

 平成17年8月、コミケに出店していたホットドッグチェーンの移動店舗内スタッフのブログ上の写真付きの発言が「客をバカにしている」と波紋を呼んだ事件です。ホットドッグチェーン側が当該ブログと会社の関わりはないが、当該発言についてはこれを遺憾とする文書をウェブ上で発表しています。

 

条文

刑法

(名誉毀損)

第二百三十条  公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

  死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

 

(公共の利害に関する場合の特例)

第二百三十条の二  前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

  前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。

  前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

 

(侮辱)

第二百三十一条  事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

 

(親告罪)

第二百三十二条  この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

  略

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

 

2015年7月23日 (木)

昔の原稿2005年7月版(スパイウェア)

2005年8月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください

 スパイウエアは無料ソフトなどと一緒にインストールされることが多いといわれています。このようなソフトの開発者がオンライン広告会社に情報を売ってコストを回収したり、収益をあげようというわけです。通常のユーザはインストール時に表示される利用条件や使用許諾契約書にスパイウエアに関する内容が含まれていたとしても目を通すことなくそのままインストールしてしまうため、ユーザ本人が気付かないままスパイウエアがPCに潜んでしまうということもあるようです。またメールに添付されたファイルにスパイウエアが仕組まれていたなどということもあるようです。

 スパイウエアと呼ばれるものは、ユーザの通信履歴などを収集し、特定のサーバに送るものもあるのですから個人情報を収集しているということになります。まず思いつくのが個人情報保護法の適用があるのか、ということです。個人情報保護法の適用がある「個人情報」というのは、氏名と結びついた住所や電話番号などの情報に加えて、他の資料から容易に個人を特定できる情報などを含みます。またメールアドレスなどは、会社のドメインと氏名を組み合わせたようなものですと特定の個人を識別できるため個人情報と考えられていますが、単なる記号の羅列のような場合には個人情報ではないと考えられています。もし、スパイウエアが収集している情報が特定の個人を識別できる性質のものであるとすれば個人情報保護法の適用があるでしょう。ただ、単にユーザのウェブ閲覧履歴にとどまるとすれば個人情報保護法の適用はありません。

 

> ●利用条件に同意してしまったら被害を受けても、責任を求めることはできないのか?

 ユーザが被害を受けるようなスパイウエアは、いくら利用条件に同意したからといって被害を受けることまで同意しているわけではありません。また、不正に預金を引き出されたなどという場合には、情報取得者が銀行にアクセスする行為が不正アクセスに該当すると思われますし(不正アクセス禁止法3条1項、8条)、ユーザの情報が流出すれば民法上の債務不履行責任や不法行為責任を追及することもできるでしょう。

 逆に利用条件に同意していなくても収集する情報が個人情報に該当しないとか、パソコンの操作にたいして影響を与えていないなどという場合には、違法とはいいにくいでしょう。

 結局のところ同意の有無で違法性が決まるというよりは、スパイウエアの悪質さの度合いや、収集した情報の性質や利用方法、被害の程度などが違法性の判断では重要と考えておいた方がよいでしょう。

 

> 利用条件が長文でとても読みきれないようなものでも法律的には有効なのか?

 

 利用条件が長文で読み切れないという場合でも、現在の法律では有効であると考えられます。ただ、利用条件の内容がスパイウエアの動作についてウソの内容を説明していたり、正確に説明していなかった場合には、錯誤(民法95条)を理由に無効を主張できるかもしれません。無償ソフトのダウンロード時やインストール時の利用条件の表示が極めて見にくいなどという場合にも同様です。

個人情報保護法の適用がある場合を考えてみましょう。個人情報保護法では、個人情報の利用目的をできる限り特定しなければならないこと、個人情報を取得した場合には、その利用目的を本人に通知するか公表しなければならないこと、収集した個人情報を第三者に提供する場合には本人の同意を得ること、偽りその他不正の手段によって個人情報を取得してはならないことなどが定められています。実際の個人情報の利用がこれらの条件をみたしていない、利用条件の内容とスパイウエアの実行内容が異なっていると判断されるのであれば違法ということになります。

 

> ●スパイウエアを他のプログラムなどに忍び込ませて、他人のパソコンに
>
侵入させる行為に違法性はないのか?

 

  プライバシーの問題や民法上の不法行為の問題がありそうですが、たいした実害がないような場合には、明確に違法とまではいえないでしょう。スパイウエアの性質にもよります。ただ、スパイウエアによってパソコンの動作が非常に遅くなったり、ユーザが意図しない動作をして通常の作業ができないという場合には、電子計算機損壊等業務妨害(刑法234条の2)に該当することも考えられます。


> ●
ネットバンキングなどの個人情報を収集して、外部へ送信する活動に
>
違法性はないのか?

 

 ネットバンキングのIDやパスワードを外部に送信するだけでは、情報を盗むことを原則として処罰していないわが国の法律では違法とまでいえない可能性があります。ただ、IDやパスワードとともに氏名なども送信して、個人情報を取得する場合には個人情報の不正な取得になり違法ということになります。また実際に銀行にアクセスし送金した場合には、不正アクセスに該当し、また銀行に対する電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)が成立します。


> ●
スパイウエアの多くは海外製のものだが、海外製のスパイウエアの場合、
>
法的対応をとることはできないのか?

 

海外製のスパイウエアで被害にあってしまっても、どこの国の法律を適用するか、その国の法律はスパイウエアの規制があるか、どこの国の裁判所で裁判をしなければならないのか、などいろいろな問題があり現実には法的対応は難しいでしょう。

なお、国内のネットバンキングのIDやパスワードが盗まれ、実際に別の口座に振り込まれてしまった場合、犯人が日本人であるのであれば、海外から操作したとしても電子計算機使用詐欺罪が成立します(刑法3条14号)。犯人が特定されれば、犯人に対して民事上の裁判を起こすことも可能です。

 

過去の事例

 

 イーバンク銀行のHPによれば、平成17年6月から7月にかけて、法人顧客が通常使用しているPCとは別のIPアドレスで口座にログインした形跡と他行口座への不正な出金が判明したため調査したところ、顧客PCにスパイウエアが侵入していることが判明したとのことです。顧客がクレームメールを受信した際に「動画を添付したので、見てください」との記述があったため思わず添付ファイルを開いた際に侵入されたのではないかとみられています。

 

条文

 民法

(錯誤)

第九十五条  意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

 

刑法

(電子計算機使用詐欺)

第二百四十六条の二  前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。

 

不正アクセス禁止法

(不正アクセス行為の禁止)

第三条一項  何人も、不正アクセス行為をしてはならない。

(罰則)

第八条  次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

  第三条第一項の規定に違反した者

  第六条第三項の規定に違反した者

 

個人情報保護法

(適正な取得)

第十七条  個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。

2015年7月22日 (水)

昔の原稿2005年7月版(MODチップ・アクセスコントロール)

2005年7月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。

著作権法・アクセスコントロールについてはこの後、改正がありました。

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください

 ゲームソフトCDの中には、特殊な場所に一定の信号が記録されており、ゲーム機がその信号をチェックして、信号が記録されていない場合にはゲームの実行ができないというものがあります。ゲームソフトCDCD-Rにコピーしても特殊な信号まではコピーできないため、コピーされたCD-Rなどでは遊ぶことができないということになります。

 MODチップはこのような仕組みを回避するためのものです。具体的にはMODチップと呼ばれる部品をゲーム機に取り付け、MODチップによって特殊な信号をゲーム機に認識させることによって、ゲームソフトCDをコピーしたCD-Rでもゲーム機で遊ぶことができるようになります。

 

> ・ネットオークションなどでMODチップは販売されているが、
>
それは違法ではないのか? 海外から購入した場合でも違法なのか?

 まず、MODチップの販売が違法かどうかですが、不正競争防止法2条1項10号の「不正競争」に該当し、結論としては違法となります。MODチップを購入することについては、不正競争防止法上は違法ではありませんし、使用することは違法ではありません。

 海外からMODチップを購入する場合ですが、「輸入」に該当する場合には「不正競争」になりますので、違法ということになります。


>
・それらMODチップを購入した場合、使用は違法なのか?
>
・そもそもなぜMODチップの譲渡等は違法になったのか?

 

違法となるのは、MODチップを譲渡したり輸入する行為です。国内でMODチップを購入し、ゲーム機に取り付け、コピーしたゲームCD-Rを使って家庭用ゲーム機で遊ぶことは違法ではありません。使用することは「不正競争」には該当しないので、違法ではありません。

 

著作権法で違法となるか?

 コンテンツの作成には莫大な費用を要する場合があります。無断コピーが横行したり、海賊版が流通すればその費用の回収はできません。そのため権利者側は、無断コピーを防止するためのコピーコントロール技術や、海賊版の利用を防ぐためのアクセスコントロール技術の開発と利用を行ってきました。しかしながら、コピーコントロールもアクセスコントロールも新たな技術が出れば、これを無効にするツールが開発され、権利者側はまた新たなコピーコントロールやアクセスコントロールの技術を開発・利用せざるを得なくなってしまいます。いわゆる「いたちごっこ」の状態になってしまいます。当然ながら、権利者側では新たな費用や労力を費やすことになってしまいます。そこで、平成11年に改正された著作権法30条1項2号は「技術的保護手段の回避」によって行う複製は仮に私的使用目的であったとしても違法な複製になるとしています。ただ、この「技術的保護手段」はコピーコントロールだけを意味していてアクセスコントロールを含んでいません(著作権法2条1項20号)。したがって、アクセスコントロールを回避して、その結果コピーしたゲームの使用が可能になった場合には、コピーコントロールを回避していない限り著作権法上は違法ではないということになってしまうのです。MODチップはコピーコントロールを回避するものではなく、アクセスコントロールを回避するものです。したがって、MODチップの販売も著作権法で定められた技術的保護手段の回避を行う装置や機器の販売に該当しません。したがって、著作権法上は、MODチップの販売は違法にはならないという結論になります。

もっともマクロビジョン信号を除去する機能を有するチップなどがあれば、それを使用し、マクロビジョンを除去して映画などの無断複製行為を行えば、たとえ私的使用目的であったとしても違法な複製になるということになりますし(著作権法30条1項2号)、そのようなチップの販売はもちろん違法になります(著作権法120条の2第1号)。

 

不正競争防止法で違法となるのはなぜか?

 

 著作権法では規制されていないアクセスコントロールの無効化の問題については、不正競争防止法の改正によって規制されることになりました。平成11年に改正された不正競争防止法2条1項10号は、「技術的制限手段」(著作権法の技術的保護手段と異なりコピーコントロールだけでなくアクセスコントロールも含まれる)の効果を妨げる機能のみを有すると認められる装置(この装置を組み込んだ機器、たとえばコピーガードキャンセラーが組み込まれたレコーダーやスクランブル解除装置が組み込まれた受信機)の譲渡や輸入、輸出、この機能を有するプログラムを提供する行為を「不正競争」としています(試験又は研究の場合は除かれます)。

 つまり、不正競争防止法はMODチップのような無効化装置やMODチップに無効化機能を追加するプログラムなどの譲渡、インターネットを通じた提供などの行為を規制しているということになります。

 個人がMODチップを利用してコピーしたゲームCD-Rを利用することは規制されていませんが、これはいちいち個人を規制しても煩雑であり、実効性が乏しいということが理由となっているそうです。ただ、あまりに横行するようだと、権利者側の働きかけで何らかの立法がなされるということもあるかもしれません。

 

条文

 

著作権法

(私的使用のための複製)

第30条1項  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

  略

  技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

 

第120条の2  次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

  技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化した者

  業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避を行つた者

 

 

不正競争防止法

(定義)

第2条1項  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

 略

  営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為

 

第2条5項  この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録のために用いられる機器をいう。以下同じ。)が特定の反応をする信号を影像、音若しくはプログラムとともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

2015年7月21日 (火)

昔の原稿2005年5月版(不正アクセス)

2005年5月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。

ウイルスについては特に変更がありましたね。

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください

> 価格.comのサイトがハッキングされたが、犯人はどのような
>
罪に問われるのか?また、個人サイトと商用サイトでは罪状が
>
異なることはあるのか?

 

 価格.comは、平成17年5月11日から14日にかけて不正アクセスによる改ざんが行われ、5月14日から24日の再開に至るまでの間、一時閉鎖されました。

 不正アクセスにより価格.comを利用したユーザーがウイルスを取り込んでしまうようにプログラムを改ざんされたり、一部のメールアドレスが閲覧された可能性があるということです。不正アクセスを行った者がどのようにアクセスを行ったのかは不明ですが、一般的に不正アクセスが行われた場合、またユーザーがウイルスを行うようにプログラムを改ざんするなどした場合について、どのような犯罪となるのかを説明したいと思います。

 

1 不正アクセス

2000年2月13日に施行された不正アクセス禁止法3条1項は「何人も、不正アクセス行為をしてはならない」と定めています。この規定に違反して不正アクセス行為を行った者については1年以下の懲役又は50万円以下の罰金という罰則があります(同法8条1号)。個人サイトか商用サイトかで差異はありません。

  もちろん刑罰だけでなく、被害を受けた会社は、犯人に対して民法上の損害賠償(民法709条)を請求することができます。

2 プログラムの改ざん

  不正アクセス禁止法が定めているのは、アクセスまでの行為であって、不正アクセス後にさらにサーバー上のプログラムを改ざんしたりするような行為については特に不正アクセス禁止法には規定がありません。不正アクセス後の改ざん行為については別に犯罪が成立するかどうかを検討する必要があります。

① 電磁的記録不正作出及び供用罪(刑法161条の2)

  この犯罪は「権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った」場合に成立します。「権利、義務又は事実証明」というのは、銀行預金残高のようなものを想定しています。したがって価格.comの事件においては必ずしも該当しないかもしれません。

② 電子計算機損壊等業務妨害(刑法234条の2)

  刑法234条の2はコンピューターそのものやプログラム、ファイルを損壊したり、不正な指令などを与えて、コンピューターをダウンさせたり、正常に動作させないようにして業務を妨害することを犯罪としています。5年以下の懲役または100万円以下の罰金という刑罰が設けてられています。

  犯人は、価格.comだけでなく価格.comを閲覧するユーザーのパソコンがウイルスに感染することも意図していたものと考えられますから、ユーザーの業務を妨害したような場合にはユーザーもこの犯罪の被害者といえるでしょう。

  個人サイトであっても商用サイトであっても業務を妨害すれば成立することになります。

③ 私用文書毀棄罪(刑法259条)

  権利または義務に関するファイルを消去するなどして利用できない状態においた場合に成立します。個人サイトか商用サイトかで差異はありません。①と同様に、価格.comの事件においては必ずしも該当しないかもしれません。

 

> ・ウイルス作るだけで違法なのか?あるいは、ウイルスを
>
ばらまいた時点で違法なのか?

 

 ウイルスを作るだけでは日本の現行法では何ら違法ではありません。また作ったウイルスをばらまく行為を直接規制している法律もありません。ばらまかれたウイルスが実際に感染しデータを消失させたり業務を妨害した段階で、電磁的記録不正作出罪(刑法161条の2)や電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)に問われることになります。

ウイルスをばらまいて何らかの犯罪の未遂罪に問われるということは想定できると思われます。例えばSF的な話ですが、外科医がネットワークを利用して遠隔手術を行っているときに、それを妨害するようなウイルスを送り込み手術を妨害して実際に患者を死に至らしめることができるような場合には、ウイルスを送り込むだけで殺人未遂罪(刑法203条)などといえるかもしれません。

 なお、サイバー犯罪条約では、データやシステムの妨害を行うために使用する意図で装置やデータを製造、配布等をすることを犯罪とすること求めています。この条約を受けて法務省は平成15年3月24日に刑法の改正案を法制審議会に諮問し、刑法の一部改正案は平成16年2月には国会に提出されています。改正案では、ウイルス等の作成・配布は犯罪とされ、罰則も3年以下の懲役または50万円以下の罰金とされています。

 

> ・ウイルスによって、Winnyで個人情報が流れてしまった。
>
対処方法はあるのか?

 Winnyで流れてしまった個人情報は、既にもう誰も管理できない情報であり、Winnyを使用している者がいる限り流れ続けます。したがって、どうしようもない、というのが現状です。ウイルスを避ける方法としてはウイルス用のソフトの定義を最新にする、Windowsのアップデートは頻繁に行う、あやしいソフトは使わない、あやしいメールは開かない、あやしいファイルは開かない、あやしいサイトに行かない、といった当たり前のことを実行し続けるしかありません。自分の個人情報を誰かが流出させてしまい、ネットワーク上を流通しているという場合にはもうどうしようもありません。

個人情報が自分ではなく他人のコンピューターから流出することもあります。自分の個人情報を安易に書き込んだり(ネット上に限りません)、安易に人に教えたりすることは控えましょう。また、自分の個人情報を取得し利用している企業から流出してしまった場合には企業の責任を追及できる場合があります。被害が大きい場合には被害者弁護団が結成されることもあります。被害者になってしまったら被害者弁護団に相談するということも考えてみてください。

 

 

条文

不正アクセス禁止法

(不正アクセス行為の禁止)

第三条一項  何人も、不正アクセス行為をしてはならない。

(罰則)

第八条  次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

  第三条第一項の規定に違反した者

 

刑法

(電磁的記録不正作出及び供用)

第百六十一条の二  人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

  前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

  不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。

  前項の罪の未遂は、罰する。

 

(電子計算機損壊等業務妨害)

第二百三十四条の二  人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 

(私用文書等毀棄)

第二百五十九条  権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、五年以下の懲役に処する。

 

民法

第七百九条  故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス

2015年7月17日 (金)

昔の原稿2005年4月版(メールの盗聴)

2005年4月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください

社や学校で私用のメールをしていたら、サーバの管理者に内容が筒抜けだった。プライバシーの侵害ではないのか?

従業員の私用メールが許されるか

 そもそも私用メールが許されるかということですが、会社や学校の従業員については職務専念義務がありますから、会社や学校が明確に禁止していなくとも原則としては許されないと考えるべきでしょう。だからといって会社がメールのモニタリングを自由に行ってよいかどうかは別の問題です。

 

モニタリングは許されるか?

平成12年12月20日、厚生労働省は「労働者の個人情報の保護に関する行動指針」を発表しています。この指針では、常時モニタリングは企業の秘密情報やシステムの安全確保などの場合に限って認められること、モニタリングを行う場合には、犯罪などの不正行為があると考えられるような場合を除いて、原則として労働者に事前に通知することなどを求めています。

この指針は事前の通知を求めていますが、事前の通知がなくモニタリングを行ったとしても必ずしも違法とはいえません。

事前の通知なくモニタリングを行い実際に裁判となった事例としては、平成13年12月3日東京地裁判決と平成14年2月26日東京地裁判決があります。平成13年の判決では、裁判所は被告(会社)による監視行為が社会通念上相当な範囲を逸脱していないと判断しています。また平成14年の判決では、裁判所は、私用メールは職務専念義務に違反し、企業秩序違反になるとしています。

就業規則などで明確に私用メールを禁止せず、黙認していたような場合には、合理的な理由なく無断で私用メールをモニタリングすることはプライバシーの侵害として不法行為となることもあると考えられます。ただ、合理的な理由がある場合には、裁判例と同様、違法ではないという結論に傾くでしょう。

会社側の指示がないのにサーバの管理者が独自の判断でモニタリングしたり、単に興味本位でのぞき見をするような行為は違法であり不法行為(民法709条)が成立するでしょう。

 

学生の私用メール

 生徒や学生のメールの内容をサーバの管理者があえて取得するということは許されるでしょうか?生徒や学生は学校に雇われているわけではありません。したがって、生徒や学生には職務専念義務がありませんから、従業員のケースと異なりモニタリングはプライバシーを侵害する違法な行為であり、原則として不法行為となる可能性が高いと思われます。

 

有線電気通信法

 会社や学校のネットワークが有線電気通信法に該当する場合には、電気通信事業法と同様に「通信の秘密」を侵してはならないとされており(有線電気通信法9条)、罰則もありますので(同法14条)、サーバ管理者が従業員や学生の同意なくしてモニタリングを行えば、通信の秘密を侵害することになり、違法ということになります。

 

個人情報保護法

 会社や学校がメールをモニタリングするということは個人情報を取得する場面に該当します。モニタリングが違法であるという場合には会社や学校は個人情報を不正の手段により取得したことになり、個人情報保護法17条に違反するケースもあります。

 

・家族や会社で共用しているパソコンで、他人のメールを見るのは違法行為にあたるのか?

 

 共用しているパソコンに保存してある他人のメールが見えてしまった場合には、たまたま見えてしまっても違法とまではいえません。放置してあるハガキをたまたま読んでも特に違法にならないのと同じです。また、あえて他人のメールを見たというような場合でもIDやパスワードでロックされていないような場合にはマナー違反、エチケット違反のレベルにとどまるのではないでしょうか(封書をあけてしまう場合には刑法133条の信書開封罪が成立しますがメールの場合の条文がありません)。

 WindowsのログインのアカウントやメールソフトのIDやパスワードがきちんと決められており、通常は他人のメールが見えない状態になっているにもかかわらず、あえて他人のIDやパスワードを利用してメールを見る場合には、その頻度や目的によっては違法となり得ます。

 例えば、未成年者のメールを親が見ることは、未成年者に対する親権や監護権の行使に該当するケースが多いと考えられますから、目的が正当であり、頻度が多くても違法とはいえないでしょう。

なお、パソコンにメールが保存されておらず、メールサーバにメールが保存されている場合で、他人のIDやパスワードを入力してメールサーバにアクセスし他人のメールを閲覧した場合には不正アクセス禁止法3条に違反する場合もあります。他人のIDやパスワードを利用して、共用しているパソコンに保存されているメールを見たとしても不正アクセス禁止法には該当しません。ネットワークを経由して他人のIDやパスワードを無断で入力しているわけではないからです。

 

 

過去の事例

 平成13年12月3日東京地裁判決(電子メールモニタリング事件)

上司が部下の私用メールを閲読していたとして、部下が上司に対して損害賠償を求めましたが、裁判所は、上司の監視が社会通念上相当な範囲を逸脱したものとはいえず、プライバシー侵害には該当しないとしています。

 

 平成14年2月26日東京地裁判決(日経クイック事件)

 誹謗中傷メールの調査に際して、会社側が従業員のメール閲覧などを行った行為が不法行為に該当するか否かが争われた事例です。原告(元従業員)は被告ら(会社と従業員)に対して損害賠償などを求めましたが、裁判所は、元従業員に対する私用メールの調査などが不法行為に該当しないと判断しました。

 

条文

有線電気通信法

(有線電気通信の秘密の保護)

第九条  有線電気通信(電気通信事業法第四条第一項又は第百六十四条第二項の通信たるものを除く。)の秘密は、侵してはならない。

(罰則)

第十四条  第九条の規定に違反して有線電気通信の秘密を侵した者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

  有線電気通信の業務に従事する者が前項の行為をしたときは、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 

個人情報保護法

 (適正な取得)

第十七条 個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはな らない。

 

刑法

(信書開封)

第百三十三条  正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

 

不正アクセス禁止法

(不正アクセス行為の禁止)

第三条  何人も、不正アクセス行為をしてはならない。

  前項に規定する不正アクセス行為とは、次の各号の一に該当する行為をいう。

  アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。)

  略

  略

昔の原稿2005年4月版(フリーソフトと著作権)

2005年4月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

ソフトウェアと著作権

 まずソフトウェアは創作性があれば、プログラムの著作物(著作権法2条1項10の2、10条1項9号)となります。したがって創作性のあるソフトウェアの作者は著作権と著作者人格権を有することになります(17条)。著作権はいろいろな権利の集合体です。ソフトウェアに関する著作権としては、複製権(21条)、公衆送信権(23条)、譲渡権(26条の2)、貸与権(26条の3)、翻案権(27条)などがあります。また著作者人格権には、公表権(18条)、氏名表示権(19条)、同一性保持権(20条)があります。著作権は作者から第三者へ譲渡することが可能ですが(61条1項)、著作者人格権は作者だけが保有する権利であって譲渡することができません(59条)。著作権を譲渡したような場合には著作権者と著作者人格権者が別人ということがあります。

 

フリーソフトとは

 フリーソフトには大まかに分けて二つの意味があるといわれています。一つは、無償で使うことができるという意味、もう一つはユーザーが自由に利用できるという意味です。

 無償という意味の場合でも作者の側で再配布や改造を禁止している場合もありますし、そうでない場合もあります。また自由に利用できるという意味の場合でも、オープンソース・ソフトウェアのようにソースプログラムを公開し、誰でも改変や再配布ができるというものもあれば、そうでないものもありますし、オープンソース・ソフトウェアの中にも改変したソフトウェアを配布する場合にはソースプログラムを公開しなければならないという取り決めをしている場合もあります。

 作者がユーザーに対して、どの程度の利用を許しているのかはReadMeに書かれている内容によってケースバイケースということになります。

 

・改造禁止のフリーソフトを私的に改造するのは違法行為にあたるのか?

 

 ユーザーが行うソフトウェアの改造は、著作権者(著作者)の許諾がない場合には、著作権法上は翻案権侵害や同一性保持権の侵害に該当することがあります。

 そのソフトウェアが記録された媒体の所有者については、自分のPCで利用するために必要と認められる限度においては複製、翻案、改変が認められていますが(47条の2第1項、20条2項3号)、作者があえて改造禁止としているソフトウェアについては、ダウンロード時などに作者と利用者との間の利用許諾契約が成立しており、契約上、著作権法47条の2第1項、20条2項3号を適用しないという合意が成立している場合があると考えられます。したがって、このような場合には、改造禁止のフリーソフトを私的に改造する場合であっても作者の有する翻案権や同一性保持権を侵害するということになります。


 
・フリーソフトのReadMeによく見られる「著作権を放棄していない」という
 
のはどういう意味?

 

 ソフトウェアの作成者は、作成と同時に著作権と著作者人格権を取得します。この著作権(著作者人格権)が何らかの理由で消滅しているソフトウェアをパブリックドメインソフトウェアといいます。例えば、日本の著作権法は、著作権者が相続人なくして死亡し、民法の規定(民法959条)により本来なら著作権が国庫に帰属すべき場合には著作権が消滅すると定めています(62条1項1号)。なお、「日本では著作権の放棄ができない」と解説しているものがありますが、学者の文献を読みますと、「著作権は財産権の一種なので一定の場合には放棄できる」というのが通説のようです。また日本では「著作者人格権は放棄できない」とする考え方が通説ですが、国によって異なるようです。

パブリックドメインソフトに該当するのであれば、ユーザーがこれを再配布したりすることは自由ということになります。

 フリーソフトはユーザーが無償あるいは自由に使えるソフトウェアですが、無償あるいは自由に使えるからといって作者が著作権や著作者人格権を失っているわけではありません。ここがパブリックドメインソフトウェアと異なる点です。作者がフリーソフトを公開し「無償で使ってよい」といっていたとしても、それ以外に何ら許諾していない場合には、原則どおり作者に無断でそのフリーソフトを改造することは、作者の翻案権や同一性保持権を侵害します。またユーザーが作者に無断でホームページ上に公開し、ダウンロード可能にしてしまう場合には作者の複製権や公衆送信権を侵害することになります。さらにユーザーが作者の氏名を勝手に他人に変更して公開していれば作者の氏名表示権を侵害することになります。

 パソコン通信の時代に、フリーソフトとパブリックドメインソフトウェアの意味を混同する説明がなされたり、いわゆるフリーソフトをパブリックドメインソフトウェアと呼んでいたこともあったことから、「フリーソフト=著作権を放棄している、著作権が消滅している」と誤解される傾向があるため、作者の側でそのような誤解をされないよう、あえてReadMeに「著作権を放棄していない」と記載しているのでしょう。

 

条文

 

著作権法

(著作物の例示)

第十条一項  この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

  小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物

  音楽の著作物

  舞踊又は無言劇の著作物

  絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物

  建築の著作物

  地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物

  映画の著作物

  写真の著作物

  プログラムの著作物

 

(著作者人格権の一身専属性)

第五十九条  著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。

 

(著作権の譲渡)

第六十一条一項  著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。

 

(相続人の不存在の場合等における著作権の消滅)

第六十二条一項  著作権は、次に掲げる場合には、消滅する。

  著作権者が死亡した場合において、その著作権が民法 (明治二十九年法律第八十九号)第九百五十九条 (相続財産の国庫帰属)の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。

  著作権者である法人が解散した場合において、その著作権が民法第七十二条第三項 (残余財産の国庫帰属)その他これに準ずる法律の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。

2015年7月16日 (木)

昔の原稿2005年3月版(ゲームのコピーは違法?)

2005年3月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。

この分野は合法だった行為が違法になったりして本当に変わってしまいました

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

 

ゲームソフトはプログラムの著作物であり(著作権法10条1項9号)、著作権者以外の者による複製は著作権者の許諾がない限り原則として禁止されています(著作権法21条)。この例外として、私的使用目的の複製(著作権法30条1項)と著作権法47条の2による複製があります。この例外に該当する場合には、著作権者の許諾は必要ありません。

 ただ私的使用目的の複製の場合でも、「技術的保護手段の回避」を行った場合には例外に該当せず、原則どおり複製権の侵害ということになり(著作権法30条1項2号)、違法となります。

 

> Alpha-ROMなどのプロテクトを外してゲームソフトの私的複製を
>
行なうのは違法か?

 

著作権法30条1項で複製できるか

 

ではゲームソフトのプロテクトは著作権法の「技術的保護手段の回避」に該当するでしょうか。著作権法が規定している「技術的保護手段」とは「電磁的方法により、著作権を侵害する行為の防止又は抑止をする手段であって、著作物の利用に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、又は送信する方式によるもの」をいいます(著作権法2条1項20号)。つまり妨害信号(CDのSCMS、DVDのCGMS、マクロビジョンなど)を利用したコピーコントロールということになります。

「技術的保護手段の回避」とは「技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすること」をいいます。ゲームソフトのプロテクトが上記の例、例えば、SCMSのようなもので、このプロテクト信号の除去や改変を行って複製を行う場合には「技術的保護手段の回避」に該当し、私的使用目的だとしても複製権の侵害ということになります。

 プロテクトの中には、コピーコントロールだけではなく、アクセスコントロールというものがあります。例えば信号を暗号化したり(DVDのCSSや有線衛星放送のスクランブルなど)、CD-ROMに記録する際に特殊セクタを用いることにより、正規品以外のソフトウェアの起動を防止する場合です。このような場合には、著作権法の「技術的保護手段」に該当しませんし、また「信号の除去又は改変を行う」わけではありませんから、「技術的保護手段の回避」にも該当しないことになります。

 したがって、アクセスコントロールだけを回避して私的使用目的の複製を行っても違法ではないという結論になります。

 ただ、アクセスコントロールについては、実質的には著作権法の「技術的保護手段」に該当するという見解もありますし、特定のゲームソフトのプロテクトが、コピーコントロールなのかアクセスコントロールなのかは技術的も法律的にもはっきり区別できるとは限りません。プロテクトをはずして複製を行うことは避けた方がよいでしょう。

 

著作権法47条の2で複製できるか

 

 なお、著作権法47条の2は、「プログラムの著作物の複製物」(フロッピーやCD-ROMなど)の所有者が、その複製物のバックアップを作成することを認めています。ゲームソフトを購入した者は、普通の場合、所有者に該当します。したがって、この47条の2を根拠として、ゲームソフトを購入した者(つまり所有者)は、プロテクトをはずしてバックアップを行うことができるという見解があります。ただ47条の2の規定は、市販のゲームソフトをバックアップする場面にまで適用されないという有力な見解がありますので、やはり47条の2を根拠としてプロテクトをはずして複製を行うことは避けた方がよいと思われます。

 

> ・コピーしたゲームを友人に配布・販売するのは違法か?

 

 私的使用目的で適法にコピーを作成したとしても、その後に、そのコピーを友人に配布・販売した場合には、複製権(著作権法21条)侵害で違法となります(著作権法49条1項1号)。

 著作権法47条の2に基づいて複製されたバックアップを配布・販売した場合にも同様に複製権侵害となり違法となります(著作権法49条1項3号)。

 

> ・私的複製をした元のゲームソフトを中古店に売るのは違法か?

 著作権法47条の2に基づいて適法にバックアップをとったとしても、その後、オリジナルを譲渡したり、バックアップを譲渡した場合には、自分の手元にバックアップやオリジナルを保存しておくことはできません(著作権法47条の2第2項)。保存し続けた場合には複製権の侵害があったものとされ違法となります(著作権法49条1項4号)。

 一方、仮に自分の所有しているゲームソフトを複製した行為が著作権法30条1項の私的使用目的に該当し適法であるという場合、コピーの方は自分で保管して元のゲームソフトを中古店に売ることは特に制限されていません。また47条の2の場合と異なり、コピーを保管しておく行為も特に違法とはされていません。

 

ライセンス契約に注意する

著作権法上は合法であったとしても、ライセンス契約の内容によっては契約に違反することになり、債務不履行(民法415条)となる場合がありますので注意が必要です。

 

 

条文

著作権法

(定義)

2条1項20号

技術的保護手段 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(次号において「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、又は送信する方式によるものをいう

 

(複製権)

第二十一条  著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

 

(私的使用のための複製)

第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

  略

  技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

 

 

(プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等)

第四十七条の二  プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。ただし、当該利用に係る複製物の使用につき、第百十三条第二項の規定が適用される場合は、この限りでない。

  前項の複製物の所有者が当該複製物(同項の規定により作成された複製物を含む。)のいずれかについて滅失以外の事由により所有権を有しなくなつた後には、その者は、当該著作権者の別段の意思表示がない限り、その他の複製物を保存してはならない。

 

(複製物の目的外使用等)

第四十九条  次に掲げる者は、第二十一条の複製を行つたものとみなす。

  第三十条第一項、第三十一条第一号、第三十三条の二第一項、第三十五条第一項、第三十七条第三項、第四十一条から第四十二条の二まで又は第四十四条第一項若しくは第二項に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示した者

  略

  第四十七条の二第一項の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物(次項第二号の複製物に該当するものを除く。)を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示した者

  第四十七条の二第二項の規定に違反して同項の複製物(次項第二号の複製物に該当するものを除く。)を保存した者

 

2015年7月15日 (水)

昔の原稿2005年2月版(DVDコピーは違法?)

2005年2月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。

この分野は合法だった行為が違法になったりして本当に変わってしまいました

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

DVDコピー(マクロビジョンの解除)は違法で、DVDリッピング

CSSの解除)は合法というのは本当?

 

 本当です。マクロビジョンの信号を除去して無断複製することは著作権法違反になりますが、CSSの解除そのものは著作権法違反にはならないからです。ただ、事案によってはCSSの解除が民法上違法とされる可能性もあります。

 

CSSの解除はなぜ著作権法違反にあたらないのか?

 

 DVDの無断複製を放置したり、有料衛星放送のスクランブル解除受信機を放置したりすれば権利者の利益は減少します。したがって、権利者側は対価徴収を確保するために、コンテンツに無断複製や無断視聴を防止する手段を施しています。この手段は二つの種類に分けられます。一つはコピーコントロールと呼ばれるもので、もう一つはアクセスコントロールと呼ばれるものです。

 

コピーコントロールとは?

 

 簡単にいうとコピーを妨害する信号を映像などのコンテンツと一緒にビデオやDVDなどの記録媒体に記録し、コピーすることを妨げることをいいます。

 コピーコントロールの例としては、ビデオやDVDに用いられているマクロビジョン方式(ダビングしても見るに耐えない画像になってしまう)、MDなどに用いられているSCMS(Serial Copy Management System、1回だけコピーを認める)、DVDに用いられているCGMS(Copy Generation Management System、コピーを認めないこともコピーを認めることもできる)などがあります。

 

アクセスコントロールとは?

 

 今回問題になっているCSS(Content Scrambling System)がこれに該当します。アクセスコントロールは映像信号などを変換し(暗号化、スクランブル)、無断使用や無断視聴などを防ぐことをいいます。

 アクセスコントロールの例としては、CATVや有料衛星放送が用いているスクランブル方式、DVDに用いられているCSS方式があります。

 

著作権法は何を違法としているのか?

 

 著作権法は基本的には複製権を中心としており、無断複製を禁止していますが著作物の使用、視聴は禁止していません。本を読むのに著作権者の許諾は必要ありませんし、隣の家のケーブルテレビを無断で窓越しに眺めていたからといって、著作権侵害は成立しません。

 著作権法30条1項2号は「技術的保護手段の回避」(条文上は「技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変」。アクセスコントロール回避は、信号の除去や改変はしない)によって行う複製は仮に私的使用目的であったとしても違法な複製になるとしています。

この「技術的保護手段」はコピーコントロールだけを意味していてアクセスコントロールを含んでいません(「技術的保護手段」=「機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、又は送信する方式著作権法2条1項20号、具体的にはマクロビジョンなど)。したがって、アクセスコントロールを回避して、その結果複製が可能になった場合には、コピーコントロールを回避していない限り著作権法上は違法ではないということになってしまうのです。つまりCSSの解除を行っても著作権法上違法にはならないが、マクロビジョンやCGMSなどのコピーコントロール信号をコピーガードキャンセラーなどを使って除去し、無断複製行為を行えば、たとえ私的使用目的であったとしても違法な複製になるということになります。

 

ではCSSの解除は規制されていないのか?

 

 実はCSSの解除、つまりアクセスコントロールの回避を問題にしている法律があります。それは不正競争防止法です。不正競争防止法2条1項10号は、「技術的制限手段」(著作権法の技術的保護手段と異なりコピーコントロールだけでなくアクセスコントロールも含まれる)の効果を妨げる機能のみを有すると認められる装置(この装置を組み込んだ機器、たとえばコピーガードキャンセラーが組み込まれたレコーダーやスクランブル解除装置が組み込まれた受信機)の譲渡や輸入・輸出、この機能を有するプログラムをインターネット等の電気通信回線を通じて提供する行為を「不正競争」としています(試験又は研究の場合は除かれます)。

 つまり、不正競争防止法は譲渡等の行為を規制しているのであって、ユーザーがこれらの装置やプログラムを用いて技術的制限手段の行為を妨げる行為を行っても不正競争とはなりません。

 したがって、不正競争防止法でもユーザーによるCSSの解除は規制されていないことになります。

 

・今後CSS解除が違法になる可能性はあるのか?

 著作権法がアクセスコントロールの回避を問題とせずコピーコントロールの回避による無断複製を問題にし、不正競争防止法がコピーコントロールやアクセスコントロールを回避する装置やプログラムの譲渡等だけを「不正競争」としている現在の状況ではCSSの解除は違法ではありません。

しかしながら、CSS解除が何に使われているかというと最終的にはDVDの複製やファイル交換です。実質的にはコピーコントロール回避の機能を有しているといえないことはありません。実際にCSS解除によって行われるDVDの無断複製は、著作権法上のコピーコントロールを回避した無断複製行為と同様の機能を有しているので私的使用目的であったとしても著作権法上違法であるという見解もないわけではありません。

CSSの解除による権利者の損失が無視できない程度に広まれば、今後何らかの規制がなされてもおかしくはないでしょう。

 

 

条文

 

著作権法

(定義)

第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(略)

二十  技術的保護手段 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(次号において「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、又は送信する方式によるものをいう。

 

(私的使用のための複製)

第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

  略

  技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

 

不正競争防止法

(定義)

第二条  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

  営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為

2015年7月14日 (火)

昔の原稿2004年12月版(ネット賭博)

04年12月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります(11年前とは結構変わっています)

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

 

賭博とは?

 

 

 

 まず、賭博とは、偶然の事情に係わる勝敗に関して財物をもって賭け事をすることをいいます。賭博を行えば賭博罪(刑法185条)が成立します。賭博の常習者が賭博を行う場合には常習賭博罪(刑法186条1項)が成立します。

 

 自ら主宰者となって賭博場を開設して利益(手数料や寺銭など)を得ようとした場合には賭博場開張罪(刑法186条2項)が成立します。判例上は、一定の場所に人を集めずに電話で申込みを受けるなどする場合にも成立するとしていますので、インターネット上に賭博サイトを開設しても違法ということになります。

 

賭博罪のほかに富くじ罪(刑法187条)というものがあります。富くじというのは賭博の一種ですが、あらかじめ番号札などを発売し、抽選などによって偶然の利益を参加者に得させるものをいいます。例えば、宝くじなどについては法律で認めていますし(当せん金証票法)、ほかにも競馬や競輪など法律で認められている場合があります。法律で認められていない富くじの授受を行った場合には富くじ罪が成立します。

 

 賭博と富くじの区別ですが、古い判例では、抽選の方法を用いるか、賭けてすぐに賭けた財物の所有権を失うか(賭博の場合は勝負の結果が出るまで財物の所有権は賭けた人に残っているが、富くじの場合は富くじを購入した段階で現金の所有権は富くじ発売者に移転する)、いわゆる胴元が損をすることがあるか(富くじの場合、胴元が損をすることは考えにくい)という基準を用いているようです。

 

 オンラインカジノやスポーツベッティングは賭博罪や富くじ罪に該当する場合があるといえます。

 

 なお、胴元がイカサマをやっているような場合は、勝敗が偶然とはいえないので、胴元には詐欺罪(刑法246条)が成立します。

 

 

 

「日本人が海外のカジノサイトに参加するのは違法にあたるのか?違法だとしたら、処罰の可能性はあるのか?」

 

 

 

日本人がラスベガスに行って賭け事をしたら、賭博罪に関しては国外犯を処罰していないので(刑法2条、3条)、日本の刑法では違法にはなりません。もしも日本のサーバにカジノサイトがあって、日本国内からこのカジノサイトに参加して賭博を行ったら、参加した者には賭博罪が、サイトを開設した者には賭博場開張罪が成立します。

 

 では、日本人が日本国内から海外のカジノサイト(主宰者の所在地やサーバ設置国では賭博が合法と仮定します)に参加する場合はどうでしょうか。

 

①合法であるという考え方

 

 合法であるとする考え方は「賭博罪や富くじ罪というのは、必要的共犯のうち対向犯という類型の犯罪(例えば、重婚罪、贈賄と収賄、わいせつ物頒布)であり、必ず相手方が必要である。賭博罪には胴元と賭博を行う者がいる。胴元である国外サーバ上のカジノサイトには日本の刑法が及ばず合法であるならば、そのカジノサイトへの日本からの参加者の行為も合法であるはずだ」という考え方です。

 

②違法であるという考え方

 

 この考え方は、「賭博罪や富くじ罪が対向犯であるというのはわかるが、参加者の相手方である胴元は必ずしも違法である必要はない。例えばわいせつ物の販売の場合、販売した者は違法とされるが購入した者には犯罪が成立しない。賭博の場合も同様であり、必ずしも胴元が違法である必要はない。また参加者が複数いれば賭博はできるのであり、必ずしも胴元は必要ではない。本件のような場合、賭け事をするという行為、つまり賭博の実行行為の一部は日本国内で行われているのであるから、参加者には賭博罪が成立する。」というものです。

 

 

 

 合法なのか違法なのか判例上ははっきりしませんが、日本国内からインターネットを通じて賭博に参加しあるいは富くじの授受を行った場合には、実行行為の一部は日本国内で行われたと考えるのが素直であり、かなり黒に近いグレーだろうという印象を受けます。

 

 

 

 したがって、安全を考えて日本国内からインターネットを通じて海外のカジノサイトやスポーツベッティングに参加した場合には、賭博罪や富くじ罪に該当すると考えておいた方がよいでしょう。賭博罪の場合には50万円以下の罰金又は科料、富くじ罪の場合には20万円以下の罰金又は科料に処せられる可能性があります。インターネットを通じて参加する場合には捜査機関としてもなかなか証拠を集めにくく、実際に立件されにくいためにグレーのままになっているだけだと思われますので、カジノサイトに参加することは慎んだ方がよいでしょう。

 

 

 

「日本人が海外のサーバを利用して、カジノサイトを運営するのは違法にあたるのか?」

 

 

 

 日本国内のサーバにカジノサイトを開設すれば賭博場開張罪が成立します。日本人が国内からインターネットを通じて海外のサーバにカジノサイトを開設した場合には、賭博場開張罪の実行行為の一部が国内で行われていることからやはり賭博場開張罪が成立すると考えるべきでしょう。海外にいる日本人が海外のサーバにカジノサイトを開設した場合には、国外犯を定めた刑法2条や3条に賭博場開張罪が含まれていないことから日本の刑法上は違法ではないと考えられます。

 

 

 

(賭博)

 

第百八十五条  賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

 

 

 

(常習賭博及び賭博場開張等図利)

 

第百八十六条  常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。

 

  賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

 

 

 

(富くじ発売等)

 

第百八十七条  富くじを発売した者は、二年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。

 

  富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 

  前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二十万円以下の罰金又は科料に処する。

 

 

 

2015年7月13日 (月)

昔の原稿2004年11月版(架空請求)

04年11月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります(11年前とは結構変わっています)

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

「アダルトサイトのバナーをクリックしただけで、勝手に入会したことになるアダルトサイトに対して、規定の料金を払わなければならないのか?」

 

 まず、入会が法的に認められるのはどの段階かということを検討してみましょう。簡単にいえば、消費者が、そのサービスの内容を理解し、勘違いや間違いでなく、そのサービスを申し込む意思をもって申し込み、業者がそれを承諾した段階ということになります。

 アダルトサイトのバナー広告に入会に必要な情報、例えば、「このバナー広告にクリックすれば入会申込みとなること」「利用料金」「支払方法」などの掲示がなく、クリックしてみたらいきなり入会扱いになっていたなどというのは、消費者側ではまったく予想外のことで、そのサービスをきちんと理解して入会申込みのクリックを押したということではありません。したがって、そもそも入会の申込みをしていないということになります。この場合には契約が成立していないのですから、一切料金を支払う必要はありません。

 また、よくよくアダルトサイトをみてみたら、利用規約などが記載されていたにもかかわらず、間違えて申込みのクリックをしてしまったという場合もあるでしょう。

このような場合を想定して、法律(電子消費者契約法3条)では、事業者側が消費者の真意を確認するきちんとした措置を講じていない限り(ちゃんとした通販サイトなどではきちんと意思確認のページがあらわれます)、消費者に重過失があったとしても錯誤(民法95条)の成立を認めています。錯誤が成立すれば契約の申込みは無効となりますのでやはり規定の料金を支払う必要はありません。また消費者契約法でも契約を取り消すことは可能です。

 

バナーをクリックしただけでIPが表示され、「料金を払わなければ、プロバイダに個人情報開示を請求する」と規約にうたう類のアダルトサイトへの対処

 

 悪徳業者がプロバイダに個人情報開示を請求しても、プロバイダは法律上守秘義務(通信の秘密、電気通信事業法4条)がありますから、個人情報を開示するということはありません。プロバイダ責任制限法は「特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合」に適用される法律です。例えば、著作権侵害や名誉毀損の場合に適用される法律ですから、料金請求のために開示を請求したとしてもプロバイダ側では開示に応ずることは一切ありません。したがって、「プロバイダに個人情報開示を請求する」というのは単なる脅し文句に過ぎないということになります。無視してください。

 

請求書が送られてきたらどう対処するか

 

 請求書の中には、債権回収業者(サービサー)を名乗ったり、弁護士を名乗ったり、債権譲渡を受けたなどと記載する通知もあるそうです。また、法外な遅延損害金を請求する例もあるようです。

債権回収業者は法務省の許可を受ける必要があり、本当の債権回収業者であるか、その連絡先もネットを利用すればすぐにわかります。実在の弁護士かどうかも日弁連のHPをみれば、事務所の所在地や電話番号を確認できます。債権譲渡の通知については、債権を譲り受けた会社側からではなく、譲り渡す側からの通知がなければ効力がありません(民法467条1項)。譲り受けた側からの通知はまず偽物と考えていいでしょう。遅延損害金は年14.6パーセントを超える部分は無効です(消費者契約法9条)。

 契約が成立していないにもかかわらず料金を請求するような悪徳業者の請求については、何ら根拠がなく、仮に少しは身に覚えがあったとしても、いちいち対応すると消費者側の個人情報が流出したりしますので、原則として無視することが必要です。

 

「架空請求を無視すると、少額訴訟を起こされて、請求金額を払わなければならないケースに、どう対処すればいいのか?」

 

 原則として、架空請求は無視するべきです。しかしながら無視してはいけない請求があります。例えば、裁判所(簡易裁判所か地方裁判所)から支払督促命令あるいは(少額)訴訟の訴状が送られてきたら、本物かどうかを確認したうえで、対応を決めなくてはいけません。

 まず、書類を送ってきた裁判所に電話してみましょう。偽物の書類かもしれませんから、封筒や書類に書いてある電話番号が本当に裁判所なのかどうかを確認してから電話してください。そして、裁判所の担当書記官を呼び出して、事件番号(例えば平成16年(少コ)第○○○○号)を伝えて本当に訴えられたかどうか確認してください。

 もし本物だとしたら、無視してはいけません。どうしてかというと、まったく異議を述べなかったり、出頭しなかったりすると、欠席裁判でそのまま業者側勝訴の判決が出されるからです。一度判決がでてしまうと、もともとは架空の請求であろうと、勤務先の給料を差し押さえられてしまったり、その他の財産を差し押さえられたりする可能性が高くなってしまいます。

 本物の訴状が届いた場合には、すぐに弁護士に相談してください。各地の弁護士会のHPや弁護士のHPには法律相談受付の情報が載っていることがあります。これらを利用して被害を最小限に食い止めてください。

 

過去の事例

平成16年11月5日、徳島県警は、全国に架空請求のはがきを送付し、大分県の女性から現金を振り込ませたなどとして、東京都内の2名の男性を逮捕しました。2名の男性は金融機関から現金を引き出し、報酬を得ていたということです。

 

平成16年4月、大阪の出会い系サイト業者が東京都の男性を相手方として大阪簡易裁判所に少額訴訟の申立てをしました。身に覚えのない男性が弁護士に相談し、手続きは大阪から東京簡易裁判所、さらに東京地方裁判所に移送され、男性側の弁護士も弁護団を結成。逆に業者に対して、架空請求に対する慰謝料を請求する訴えを起こしました。

 

条文

電子消費者契約法(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律)

第三条  民法第九十五条 ただし書の規定は、消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について、その電子消費者契約の要素に錯誤があった場合であって、当該錯誤が次のいずれかに該当するときは、適用しない。ただし、当該電子消費者契約の相手方である事業者(その委託を受けた者を含む。以下同じ。)が、当該申込み又はその承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込み若しくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合は、この限りでない。

  消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該事業者との間で電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき。

  消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき。

 

民法

95条

意思表示ハ法律行為ノ要素ニ錯誤アリタルトキハ無効トス但表意者ニ重大ナル過失アリタルトキハ表意者自ラ其無効ヲ主張スルコトヲ得ス

 

467条1項

指名債権ノ譲渡ハ譲渡人カ之ヲ債務者ニ通知シ又ハ債務者カ之ヲ承諾スルニ非サレハ之ヲ以テ債務者其他ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス

2015年7月10日 (金)

昔の原稿2004年11月版(自殺サイトの運営)

04年11月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります(11年前とは結構変わっています)

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

「自殺サイトの運営は違法にあたるのか?」

 

 自殺サイトといっても自殺志願者を救うためのものから、一緒に自殺をしたい人を募るサイトまで様々です。一緒に自殺する相手を捜すためのサイトを開設し運営していくことが何か法律に違反するかどうかを検討してみたいと思います。

 そもそも「人」を殺すことは殺人罪(刑法199条)に該当します。ここでいう「人」というのは他人のことで、自分自身は含まれません。ですから自分自身を殺す行為である自殺は殺人罪にはあたりません。自殺未遂も殺人未遂ではありません(なお、国によっては自殺自体が処罰されたり、逆に自殺のみならず自殺教唆も自殺幇助も処罰されない例があるようです)。

 自殺は犯罪ではありませんが、他人の自殺に関与することは犯罪とされます。自殺教唆や自殺幇助と呼ばれるものです(刑法202条前段)。自殺教唆とは、自殺の決意を有しない者に自殺の決意を与え、自殺を行わせることをいいます。自殺幇助とは、自殺の決意を有する者に対して、その自殺の意思を強めたりすることや、自殺行為に援助を与え自殺を遂行させることをいいます。自殺したい人に毒薬を渡すことは自殺幇助ですが、自殺したい人の口に毒薬を流し込んで殺すことは嘱託殺人(刑法202条後段)になります。

 自殺の方法を示したり、一緒に自殺する相手を捜すことができるサイトを運営することは、既に自殺の決意を有している者の決意を強めたり、援助を与えていることになりますから、形式的には自殺幇助罪に該当することになります。

 ただ、教唆や幇助というのは形式的に考えると非常に幅が広くどこまで処罰される範囲なのかということが不明確です。したがって、自殺をした人とのつながりがある程度あって自殺の決意を強めていった場合、実際に自殺をしようとした人を目の前にしてその人の自殺の決意を強めていくことや自殺行為に援助を与えた場合などでなければ教唆や援助で処罰されるということはないのではないかと思われます。

インターネットの掲示板の場合、匿名性が強く、必ずしも自殺をしようとしている人が現実にそのように考えているのかそうではないのかはっきりしません。例えば掲示板で、ある程度参加者同士の考え方が把握できたりした場合や、1対1のメールである程度つながりができた人に対して具体的に自殺の決意を強めたり、やり方を教える場合などはたとえインターネット上でも教唆や幇助になる場合があるでしょう。

そのレベルに達していない単なる自殺サイトの運営だけでは処罰される程度の違法性があるとはいいがたいように思われます。ただ、自殺サイトによると思われる集団自殺が頻繁に起こり社会問題となっていることから、自殺サイトのような有害な情報を規制すべきであるという議論もなされているようです。

 

「掲示板やメールで一緒に自殺する相手を探すのは違法にあたるのか?」

 

 1人ではなく共同で自殺をしようとした場合、ネット上の掲示板やメールのやりとりで相手を捜すという例が多く見受けられます。一緒に自殺してくれる相手を捜すという行為自体は、教唆ともいえませんし幇助ともいえません。ただ、探し出した相手と一緒に具体的に自殺の計画を立てたりすることによって、自分だけでなく相手の自殺の決意を強めていくことになります。また、お互いの自殺のための道具や薬物の入手をすること、その他一緒に自殺するための様々な準備をすることは、自分の自殺だけでなく、相手の自殺の援助をしていることになります。したがって、自分と相手方が共同して実際に自殺してしまった場合には、お互いに自殺幇助罪が成立することになります。

 一方、共同して自殺を図ったにもかかわらず、一方が生き残ってしまった場合にはどのようになるかを検討してみましょう。

 AとBという人物がネット上で知り合い、共同で自殺の計画を立て、実際に共同自殺を図ったものの、Aは幸い生き残り、Bは亡くなってしまったというケースを考えてみましょう。

 AはBの自殺の決意を強め、Bの自殺を援助したことになりますから、AにはBに対する自殺幇助罪が成立することになります。

 BはAの自殺の決意を強め、Aの自殺を援助したものの、Aは幸い助かったわけですからAの自殺は未遂になったことになります。したがってBにはAに対する自殺幇助未遂罪(刑法203条、202条)が成立するということになります。

 もしAもBも幸いにして助かった場合には、AもBもそれぞれ自殺幇助未遂罪が成立するということになります。平成15年の山梨県の事件では実際に書類送検されましたが、検察庁はお互いの処罰感情などを考慮し起訴猶予にしたとのことです。

 

 

過去の事例

 平成16年10月12日、埼玉県皆野町皆野の蓑山中腹の駐車場に停車中のワンボックスカーで7人の男女が死んでいるのが発見されました。車内からは練炭や七輪が発見され、窓はビニールテープで目張りされていました。運転席にいた女性がネット上で自殺者を募ったものとみられています。

 

 同じ日に神奈川県横須賀市で乗用車の中で女性2名が自殺した事件で、神奈川県警は10月13日、この2名を被疑者死亡のまま自殺幇助の容疑で書類送検する方針を固めたとのことです。

書類送検された例としては、平成15年3月山梨県上九一色村で集団自殺を図った4人について、自殺幇助未遂容疑で山梨県警が甲府地検に書類送検した例があります。甲府地検は、この4人について起訴猶予処分にしたということです。

 

 

条文

 

刑法

(殺人)

第百九十九条  人を殺した者は、死刑又は無期若しくは三年以上の懲役に処する。

 

(自殺関与及び同意殺人)

第二百二条  人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。

 

(未遂罪)

第二百三条  第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

2015年7月 9日 (木)

昔の原稿2004年9月版(インターネット通販で、商品の値段を間違えて掲載した場合、間違えて掲載した値段で販売しないのは違法?)

04年9月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります(11年前とは結構変わっています)

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

「インターネット通販で、商品の値段を間違えて掲載した場合、間違えて掲載した値段で販売しないのは違法にあたるのか?」

 

 インターネット通販で商品を買う場合には、商品の売買契約(民法555条)が成立しなければなりません。売買契約が成立すれば、売主には商品を買主に引き渡す義務、買主には代金を売主に支払う義務が発生します。契約が成立するためには、買主が売主に注文し(契約の申込み)、買主がこの注文を承諾(契約の承諾)すればよいのです。この「申込み」と「承諾」が合致して契約が成立することになります。

 通信販売の場合、買主はカタログや広告などをみて注文することになります。これらのカタログや広告などを売主が示すことを「申込みの誘引」といいます。インターネットを利用して、このカタログなどをみて注文する行為は「申込み」となり、売主がこの注文に基づいて商品を発送したり、注文に対する返信が買主に届いた時点で(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律第4条、民法526条1項、民法97条1項)、売主の「承諾」の効力が発生することになり、この時点で売買契約が成立することになります。

 ご質問のケースの場合、間違えた値段を掲載したページを見た人が注文したとしても、売主側の「承諾」が未だなされていない時点では、売買契約は成立していないことになります。ですから、売主が間違いに気付き「承諾」をしなかったとしても「承諾」が法的に義務づけられていない以上、違法にはならないということになります。

 では、仮に売主が「承諾」した後に間違いに気付いたとしたらどうでしょうか?「承諾」している以上、売買契約が成立しています。この場合、売主は「承諾は勘違いであり契約は無効である」と主張する場合があります。この勘違いを「錯誤」といいます。「錯誤」による意思表示は無効とされていますので(民法95条本文)、この主張も成り立つ可能性があります。ただ、売主に重過失がある場合には無効とならないとされていますので(民法95条但書)、売主側に重過失があった場合には、やはり契約は有効なままであり、売主側は間違えた値段で買主に商品を売らなければならないということになります。売主にどの程度の過失があったのかということが最終的なポイントということになります。

 

過去の事例

 

eMacの価格誤表示

 平成16年4月21日、Yahoo!ショッピング内でeMacの価格が27878円と誤表示されていたため翌日に削除されるまで、約2万人から1億台以上の注文が殺到した事件です。この事件では一切の注文を受け付けませんでした。

昔の原稿2004年9月版(個人情報流出と慰謝料)

04年9月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります(11年前とは結構変わっています)

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

「個人情報を流出させた企業に対して、ユーザー側はどのような法的措置を取ることができるのか?少額の商品券などの他に慰謝料を取ることができるのか?」

 

 顧客リストなどの個人情報が流出する事件が続出しています。内部の人間が名簿業者に名簿を売り渡したり、公務で使用している私物のパソコンを自宅で使用して、Winnyを経由して流失させたり、個人情報の入ったフロッピーの入ったカバンをカバンごと盗まれたり、情報処理の委託を受けていた会社が故意あるいは過失によって流出させたり、メールを誤送信したり、IDやパスワードの管理が不十分だったり、原因は様々です。

 

 個人情報が流出したケースでは、その情報の主体である個人に多大な影響をあたえることがあります。例えば、身に覚えのない料金の請求書が来たり、スパムメールが増えたり、いたずら電話をされたりすることがあります。このような大きな影響をもたらすおそれのある個人情報が流出した場合、ユーザー側はどのような措置をとれるでしょうか。

 まず、考えられるのは流出させた企業に対して流出した個人情報の回収を求めることです。とはいっても、従来の紙ベースの情報と異なり電子化された情報はコピーが容易で一度流出してしまうと元の状態に戻すことは不可能といってもよいでしょう。

 そこで考えられるのは、被害を受けた個人が流出させた企業に対して損害賠償を請求することです(民法709条)。企業側もこれを予想して、流出が発覚してからすぐに見舞金として商品券をユーザーに配布するなどの事例があります。金額としては500円、1000円という例があるようです。

 500円や1000円の商品券を受け取ってしまったら、それ以外に損害賠償をすることができないかというとそうではありません。裁判で認められた損害賠償のケースでは、損害賠償額が商品券の金額を上回るものがあります。

 例えば、京都府宇治市住民基本台帳のデータが流出した事件では1人あたり1万5000円の損害賠償が認められていますし、早稲田大学が江沢民主席講演会の出席者名簿を警察に提出した事件では、1人あたり1万円の損害賠償が認められています。また、電話帳に氏名・電話番号・住所を掲載しないよう依頼したにもかかわらず掲載されてしまった事例では10万円の損害賠償が認められています。

 500円や1000円では満足できないような場合、実際に個人情報が流出したことによって具体的な被害が発生している場合には、流出させた企業に妥当な金額を払うよう請求することが考えられます。ただ、企業側がこれに応じてくれないような場合には裁判を起こすしか手がありません。裁判費用と手間、損害賠償の額などを考えると訴訟をするかどうか迷うところですが、被害者が多い場合には弁護団が設立される場合がありますので、情報を収集して弁護団に依頼するかどうかを検討してみるとよいと思います。

 

過去の事例

Yahoo! BB顧客情報漏洩事件

平成16年1月からYahoo! BBの個人情報が漏洩していることが報道され、2月には合計451万7039件の個人情報が流出していることが確認され社会問題となった。流出した情報は住所、氏名、電話番号、申し込み時のメールアドレス、Yahoo!メールアドレス、Yahoo! JAPAN IDなどで、ソフトバンクBBは、500円相当の金券をユーザーに送ったり、メールアドレスを無料で何度でも変更できるようにするなどの対応をとっている。

 

2015年7月 8日 (水)

昔の原稿2004年9月版(名誉毀損で実刑)

04年9月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります(11年前とは結構変わっています)

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

『対抗言論の法理』があるにもかかわらず、この事件(下の過去の事例)で異例の実刑判決がでたのはなぜか?

 

実刑判決は本当に異例か?

 

この事件は、交通事故で男子高校生をはね死亡させたとして業務上過失致死罪に問われていた被告人が、その裁判中に交通事故の被害者の高校生の両親らの実名をネット上に挙げたうえ、「人間のくず」などと書き込んだ行為が名誉毀損罪に問われていたものです。

交通事故の裁判では懲役2年執行猶予5年の判決がでていましたので、執行猶予中に名誉毀損事件で有罪の判決がでたことになります。執行猶予の判決を受けた者に対し、さらに別の犯罪で有罪判決を出す場合、「再度の執行猶予」を付けられるかが問題となります。刑法25条2項は①「前に禁錮以上の刑に処せられた者であってもその執行を猶予された者が」②「1年以下の懲役又は禁固の言渡を受け」③「情状に特に酌量すべきものがあるとき」には、再度の執行を猶予することができるとしています。

本件では、最初の交通事故で懲役2年執行猶予5年の判決を受けていますので、①に該当します。次の名誉毀損事件では、検察官が懲役2年の求刑(検察官がこれくらいの刑罰が相当であると裁判所で述べる意見)をし、裁判所は、懲役1年4ヶ月の判決を出していますので②には該当しないことになります。したがって、この時点で再度の執行猶予をつけることは法律上できません。この事件に限っていえば、実刑は異例でもなんでもないわけです。

 

対抗言論とは

 

 表現の自由と名誉毀損の調整の見地から、言論で名誉を毀損された者は、言論でその回復を図るべきだというのが対抗言論といわれるものです。

 例えば、政治家や有名人などであれば記者会見を開くなどして、自分の名誉を回復する機会がありますし、一般人でもネット上で反論するなどして名誉を回復する機会があるので、そこで十分な反論がなされ名誉を回復したのであれば、最初の名誉毀損が成立しないのではないかというものです。

 

対抗言論を認めた事例

 実際に対抗言論が問題となった事件としては、ニフティ「本と雑誌のフォーラム」事件(東京地方裁判所平成13年8月27日判決)があります。

この事件で東京地裁は、

①パソコン通信の場合、フォーラムへの参加を許された会員であれば、自由に発言することが可能であるから、被害者が加害者に対し、必要かつ十分な反論をすることが容易な媒体であると認められるので、被害者の反論が十分な効果を挙げているとみられるような場合には、社会的評価が低下する危険性が認められず、名誉ないし名誉感情毀損は成立しない

②被害者が、加害者に対し、相当性を欠く発言をし、それに誘発される形で、加害者が被害者に対し、問題となる発言をしたような場合には、その発言が、対抗言論として許された範囲内のものと認められる限り、違法性を欠くこともある、としています。

この事件の場合には、最初に被害者が加害者に対して不当等な発言をし、それに応ずる形で加害者が問題発言をしたような場合でしたので、名誉毀損には該当しないという結論になっています。

 

対抗言論を認めなかった事例

 一方、対抗言論を認めなかった事件としては同じニフティの「現代思想フォーラム」事件(東京高等裁判所平成13年9月5日判決)があります。

この事件で加害者側は対抗言論なので違法性がないと主張しましたが、裁判所は「フォーラムにおいては、批判や非難の対象となった者が反論することは容易であるが、言葉汚く罵られることに対しては、反論する価値も認め難く、反論することが可能であるからといって、罵倒することが言論として許容されることになるものではない」「議論に臨むについて、節度を超えて他人を貶め、又は他人の名誉を傷つけることが許されるものではない」として、加害者の対抗原論の主張を認めませんでした。

 

対抗言論の問題は、簡単にいえば「殴られたら殴り返せ」のようなものです。限定した範囲では成立する理論ですが、一般的に名誉毀損の違法性を失わせるものではないということに注意する必要があります。

 

匿名掲示板で見ず知らずの人を口汚く罵倒するのは、違法行為にはならないのか?あるいは、有名人についての誹謗中傷は違法行為にはならないのか?

 

 他人の名誉や名誉感情を毀損する場合は、民事上不法行為(民法709条)となり損害賠償の対象となります。また、刑事上も名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)が成立する場合があります。民事でも刑事でも報道などで、公共の利害に関する事実に関して、公益目的があり、真実であることの証明がなされた場合などには違法性がないと判断される場合がありますが、これは例外であり(刑法230条の2)、原則としては罵倒、誹謗中傷などで他人の名誉や名誉感情を害する場合には不法行為や名誉毀損罪、侮辱罪となりますので、絶対にやめましょう。

 

 

条文

刑法

(執行猶予)

第二十五条  次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。

  前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。

(名誉毀損)

第二百三十条  公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

  死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

(公共の利害に関する場合の特例)

第二百三十条の二  前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

 

過去の事例

 大阪府で男子高校生をはね死亡させたとして業務上過失致死罪で起訴され、大阪地裁岸和田支部で懲役2年、執行猶予5年の判決を受けた大阪府の29歳の男性が、裁判中の平成13年7月に、ネット上で被害者の男子高校生の両親の実名を挙げて「人間のくず」などと書き込んだ行為が名誉毀損罪に問われた事例。大阪地裁は懲役1年4ヶ月を言い渡したところ、被告人が控訴。大阪高裁は控訴を棄却したため、さらに被告人は最高裁に上告していたが、最高裁は平成16年8月に上告を棄却した。

2015年7月 7日 (火)

昔の原稿2004年7月版(不正アクセス)

04年7月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります(11年前とは結構変わっています)

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

>「複数のグローバルIPアドレスにランダムアクセス
>
してポートスキャンをかけたら、知らない会社のパソコンの
>
ポートが開いているのが分かった。パスワードも掛かって
>
いなかったが、そこに侵入するのは違法?」

 

 不正アクセス禁止法に該当するかが問題となります。

平成12年2月13日に施行された「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(以下「不正アクセス禁止法」)では、「何人も、不正アクセス行為をしてはならない。」(同法第3条1項)と定めています。この法律でいう「不正アクセス」とは同法第3条2項に掲げられた次のような場合をいいます。

① アクセス制御機能のあるコンピューターに、ネットワークを通じて、他人の識別符号(パスワードなど)を入力することによって利用を可能にする行為。いわゆるなりすまし行為などを想定しています。

② アクセス制御機能のあるコンピューターに、ネットワークを通じて、他人の識別符号以外の情報を入力することによって利用を可能にする行為。架空のID・パスワードの入力やセキュリティ・ホールへの攻撃などを想定しています。

③ 認証サーバーによって利用を制限されているコンピューターに関して、ネットワークを通じて、その制限を免れる情報を入力し、利用を可能にする行為。セキュリティ・ホールへの攻撃などを想定しています。

簡単にいえばネットワークを通じて鍵のかかっているコンピューターに侵入することが「不正アクセス」ということになります。

全ての場合について、「電気通信回線を通じて」と規定していますので、ネットワークを通じてアクセスする場合でなければこの法律の「不正アクセス」には該当しません。たとえば、会社の建物に忍び込んで、サーバーを直接操作する行為は、「不正アクセス」には該当しません。また、ネットワークに接続されていないスタンドアロンのコンピューターについては「不正アクセス」は成立しません。またここでいう「電気通信回線」はインターネットに限らず会社のLANなども含まれます。

なお、アクセス管理者自身が設備のチェックのために第3条2項に該当する行為を行っても「不正アクセス」には該当しません。またアクセス管理者の承諾がある場合(チェックを外部に委託する場合)も「不正アクセス」には該当しません。会社の場合、アクセス管理者は実際にその仕事を行う従業員ではなく、会社そのものがアクセス管理者となりますので注意が必要です。

また、①の場合には利用を許されているユーザー自身がIDとパスワードの利用を承諾している場合には「不正アクセス」にはなりません。本人の承諾を得ている以上「なりすまし」とはいえないからです。

「不正アクセス」を行った者に対しては、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金という罰則があります(同法8条1号)。

ご質問のケースの場合ですが、単にポートスキャンを行うことは鍵がかかっているかを調べているだけですし、パスワードがかかっていなかったということですので鍵がかかっていなかったということになります。結論としては、上記の①②③のいずれにも該当せず「不正アクセス」になりません。したがって、これだけでは違法ということにはならないでしょう。

 

どのような場合に不正アクセス禁止法に該当するのか?

 

①に該当するケースとしては他人のID・パスワードを入手して、無断でコンピューターに侵入すること(他人のID・パスワードを利用して他人のメールをサーバーから読み出したり、有料コンテンツを閲覧したりダウンロードすることも含まれます)。

②と③に該当するケースとしては、セキュリティ・ホールへの攻撃、会社から正当にIDとパスワードを与えられていたが、退職後も管理者がID・パスワードの削除を忘れ、そのID・パスワードを利用して退職した会社のコンピューターにアクセスした場合などが考えられます(過去の事例参照)。

そのほかにも他人のIDやパスワードを第三者に伝える行為は不正アクセス行為を助長する行為として違法となります(同法第4条)。

不正アクセスを行った場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(同法第8条1項)。助長する行為は30万円以下の罰金に処せられます(同法第9条)。

 

コンピューターに侵入しただけでなく、さらに何らかの行為を行った場合にはどうなるのか?

 

1 電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)。業務に使用するコンピューターのファイルを消去したり、書き換えたり、使用目的に反する動作をさせて業務を妨害する行為を行った場合に成立します。またコンピューターにウィルスに感染させて異常な動作をおこなわせ業務に支障を来すことになった場合にも成立しますし、ホームページを書き換えて業務を妨害した場合などにも成立します。

2 電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)。コンピューターに虚偽の情報や不正な指令を与えて財産上不法な利益を得た場合に成立します。他人のインターネットバンキングのID・パスワードを使って他人の口座から自分や第三者の口座に現金を振り込んだ場合などが考えられます。

3 私用文書等毀棄罪(刑法259条)。権利または義務に関する他人の電磁的記録を書き換えたり、消去する場合に成立します。

 

過去の事例

 平成16年7月16日、警視庁はヤフーBBの顧客情報が流失した事件で無職の男性とソフトバンクBBの元派遣社員をそれぞれ不正アクセス禁止法違反の疑いで書類送検しました。両名は元派遣社員が在職中に与えられていたIDやパスワードを使い、同社の顧客データベースにアクセスした(本文の②③参照)とのことです。

 

条文

 

不正アクセス行為の禁止等に関する法律

(不正アクセス行為の禁止)

第三条  何人も、不正アクセス行為をしてはならない。

  前項に規定する不正アクセス行為とは、次の各号の一に該当する行為をいう。

  アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。)

  アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別符号であるものを除く。)又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者の承諾を得てするものを除く。次号において同じ。)

  電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機が有するアクセス制御機能によりその特定利用を制限されている特定電子計算機に電気通信回線を通じてその制限を免れることができる情報又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為

(不正アクセス行為を助長する行為の禁止)

第四条  何人も、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を、その識別符号がどの特定電子計算機の特定利用に係るものであるかを明らかにして、又はこれを知っている者の求めに応じて、当該アクセス制御機能に係るアクセス管理者及び当該識別符号に係る利用権者以外の者に提供してはならない。ただし、当該アクセス管理者がする場合又は当該アクセス管理者若しくは当該利用権者の承諾を得てする場合は、この限りでない。

(罰則)

第八条  次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

  第三条第一項の規定に違反した者

第九条  第四条の規定に違反した者は、三十万円以下の罰金に処する。

2015年7月 6日 (月)

昔の原稿2004年7月版(ノークレームノーリターン)

04年7月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります(11年前とは結構変わっています)

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

「『ノークレームノーリターン』と表記のある商品を 購入したら、状態が非常に悪かった。返品は可能か?」

 

ネットオークションで、「ノークレームノーリターン」という表示がある場合、売主としては「一切のクレームを受け付けないし、返品も一切受け付けない」ということを表示しているわけです。ですから買主が「ノークレームノーリターン」という表示があることを知っていて商品を購入するということは、「ノークレームノーリターン」という条件付の売買契約が成立したということになり、原則としては、返品することはできません。法律的にいえば、売買契約における担保責任を免除する特約があったと認められるからです(民法572条)。

 ただ、この特約が有効な場合と無効な場合があることに注意しなければなりません。たとえば、「商品のどこどこが汚れている」「機能しない」「ジャンク品である」とか「状態が悪い」など、売主がこの商品の状態をきちんと説明したうえで「ノークレームノーリターン」と表示した場合にはこの特約は有効でしょう。

 一方、実際に購入してみたら何らかのキズや汚れがあり、このことを売主自身が知っているにもかかわらずきちんと説明せずに売っていた場合には、「ノークレームノーリターン」という特約があったとしても売主がこれを主張することが信義則違反であり、特約自体が無効となる可能性があります。このような場合には、「ノークレームノーリターン」がない通常の売買契約ですから売主には債務不履行責任や瑕疵担保責任があり、契約を解除したり、損害賠償請求することができます。契約を解除した場合には、返品が可能です。

また、買主としては、売主の詐欺(民法96条)を主張して契約を取り消したり、説明が不十分で「こんな状態の商品であることを最初から知っていたら購入することはなかった」という場合には、契約の錯誤無効(民法95条)などを主張することができる場合もあります。契約が無効であるとか契約を取り消す場合には、商品を返品することができます。

 なお、売主が個人であろうと法人であろうと「事業者」である場合には、消費者契約法8条により「ノークレームノーリターン」という特約は無効となりますので、何らかの理由があれば返品が可能であるということになります。

 

 

「明らかに安値でブランド品が販売されている場合がある が、問題ないのか?落札して偽物だとわかったら、詐欺にあたる?」

 

 安いからには理由があるはずですから、偽物の可能性があります。正規なブランド品であるのであれば、安値だからといって売ったり買ったりすることは問題ありません。正規なブランド品には通常「商標権」があると思われますが、真正商品が一度適法に流通におかれた場合には、その段階で「商標権」は消尽しており、それを転売した段階では商標権が及ばなくなるからです。

 問題は偽ブランド品です。偽ブランド品については、まず、商標法上の問題があります。

 

商標法上の問題

  ブランド品のほとんどは商標権の登録がなされていると思われます。商標というのは文字だったり図形だったり記号だったりしますが、これが商標として登録されている場合には、商標を「業として」使用することは商標権者あるいは商標権者から許諾を受けた者に限られます(商標法25条)。

  インターネットオークションでブランド品を出品するということは商標の使用になります。もちろん真正な商品を売る場合には、商標の使用といっても通常の広告と同じですから特に問題はありません。

  商標権を侵害する場合というのは、出品者が「業として」「真正商品でない商品を売る場合」です。

  この「業として」という言葉の意味は、実際に反復継続して取引を行っていた場合だけでなく、これから反復継続して取引する予定である場合も含みます。したがって、個人であっても反復継続して同一の商品を販売する場合(予定を含む)には「業として」に該当することになります。この商品が偽物であった場合には、オークションで販売すること自体が商標権侵害になり、商標権者に対して損害賠償責任を負ったり、差止めの対象となったり(商標法36条)、刑罰の対象となります(商標法78条)。

 

民法上、刑法上の問題

 偽ブランド品を真正商品と偽って販売することは、刑法上は詐欺罪(刑法246条)に該当しますし、民法上も契約の取消や無効の主張が可能です。

 

もしトラブルになったら

 

トラブルの際に最も重要なのは証拠です。商品の写真や説明文などはプリントアウトするなりPCに保管しておいてください。被害にあった場合には、PCに保管された情報などは全てプリントアウトして時系列に従って整理してください。

自分でできる方法としては、とりあえずこちらの主張を売主側に伝えて交渉することや、主催者の補償制度などの利用も考えられます。出品者側の住所がわかっている場合には、内容証明郵便(インターネットからでも内容証明郵便を送ることができます)を送付して返金や損害賠償を求めたり、簡易裁判所の調停や少額訴訟を利用して返金や損害賠償を請求することなども考えられます。

悪質なトラブルに遭遇し、自分ではとても対処できないという場合には、手持ちの資料を整理して経過をまとめたうえで、警察に相談したり、お近くの弁護士会の法律相談を利用してみてください。

 

 

過去の事例

 2004年6月、中国から持ち帰った偽ブランド品約300点をネットオークションで売る目的で自宅に隠し持っていたとして愛知県の会社員が逮捕されました。容疑者は過去に300人に偽ブランド品を販売した疑いもあるとのことです。

 

 

条文

 

民法

第95条  意思表示ハ法律行為ノ要素ニ錯誤アリタルトキハ無効トス但表意者ニ重大ナル過失アリタルトキハ表意者自ラ其無効ヲ主張スルコトヲ得ス

第96条第1項  詐欺又ハ強迫ニ因ル意思表示ハ之ヲ取消スコトヲ得

第572条  売主ハ前十二条ニ定メタル担保ノ責任ヲ負ハサル旨ヲ特約シタルトキト雖モ其知リテ告ケサリシ事実及ヒ自ラ第三者ノ為メニ設定シ又ハ之ニ譲渡シタル権利ニ付テハ其責ヲ免ルルコトヲ得ス

 

刑法

(詐欺)

第246条  人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

商標法

(侵害の罪)

第78条  商標権又は専用使用権を侵害した者は、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。

2015年7月 5日 (日)

昔の原稿2004年4月版(ホームページと著作権)

 

04年4月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります(11年前とは結構変わっています)

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

他人のHPは、文章や画像で構成されています。通常の場合、文章や画像はそれを作った人の著作物であり、作成者が著作権を有することになります。

 

 著作物というのは、法律では「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、芸術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」とされています(著作権法2条1項1号)。この著作物を創作した者が著作者であり(著作権法2条1項2号)、著作者は著作権を有するということになります。

 

 著作物というと「なにか高尚なものでなければならない」と思われるかもしれませんが、必ずしも芸術的なものである必要はなく、表現した人の何らかの創作性があればよいのです。日記程度のものでもかまいません。著作物に該当しないものとしては、事実の伝達にすぎない報道などがあげられます(著作権法10条2項)。記者や新聞社の意見が含まれていない単なる事実の報道や死亡記事などは著作物に該当しないのです。誰が書いたとしても似通った表現になるような場合には著作物とはいえないということです。

 

 著作権の中にはいろいろな権利が含まれています。例えば、無断でコピーすることを禁止する権利(複製権)や、無断で内容を変形することを禁止する権利(同一性保持権、翻案権)、無断でインターネットなどで送信することを禁止する権利(公衆送信権)などです。

 

 ご質問のように、他人のHPの画像や文章を自分のHPに引用することは、他人のHPの内容を自分のHPに複製することになります。他人の許諾なしに複製をしていることになりますから他人の複製権を侵害しているということになります。しかしながら、そもそも著作権法は「文化の発展に寄与することを目的とする」と定めています。他人の著作物を一切利用できないということは、必ずしも文化の発展になるとはいえません。他人の表現から新しい表現が生まれることもありますし、他人の主張を踏まえて自分の主張をするということもあるのです。そこで、著作権法は、「引用」にあたる場合には、他人の著作物を無断で複製してもかまわないとしています(著作権法32条1項)。ただし、どのような引用でも許されるわけではありません。

 

著作権法32条1項は、「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と定めています。

 

HPに掲載されている文章は既に公表されているものですから、この条文の「公表された著作物」に該当することになるでしょう。「公正な慣行に合致する」というのは、社会通念上「引用」が妥当であると認められる場合のことをいいます。文章の流れからいって必然的に引用せざるを得ないものであれば公正な慣行に合致することになるでしょう。

 

「引用の目的上正当な範囲」に該当するためには、第一に、引用する側の著作物と引用された著作物とが明瞭に区別できることが必要になります。引用された文章を「 」(カギ括弧)で表示する、フォントの種類や大きさを変える、などして、自分の書いた文章と明確に区別できるようにしておくことです。第二に、引用する側の著作物と引用された著作物に主従関係があることが必要です。自分が書いた文章より引用した文章の方が多いような場合には、「引用の目的上正当な範囲」とはいえません。また引用する文章は必要最小限度の分量にする必要があるでしょう。第三に、著作者人格権を侵害するような態様で引用しないことが必要です。第四に、引用した文章の出所を明示することが必要です(著作権法48条1項、2項)。以上のような条件をみたさない無断引用は適法ではありません。著作権者の複製権を侵害しますので損害賠償や差止請求の対象となります。

 

では、引用はしないが無断でリンクを張ることは許されるのでしょうか。リンクを張っても単にリンク先のURLの情報を示しているだけです。URLは単なる住所みたいなものですからリンクを張っても著作権侵害の対象にはなりません。また、他人のHPの見出しをそのまま使うことは、その見出しがそもそも創作性のある「著作物」かどうかを検討する必要があります(「過去の事例」参照)。

 

著作権法上問題となるとすればフレームリンクのケースが考えられます。フレームリンクの場合、リンク先のHPの作者の意図とは違った表示がなされることになります。この場合、リンク先の作者の同一性保持権を侵害する場合も考えられます。

 

トップページへのリンクは認めるが下の階層のページに直接リンクを張ることを禁止しているHPも見受けられます。我が国では違法ではないと思われますが違法とする海外の判例もありますので注意は必要です。画像ファイルなどに直接リンクを張ることも形式的にはそのファイルの場所を示しているだけなのですが、リンク先のページ全体の同一性保持権やリンク先の氏名表示権を侵害するとの見解もあるようです。

 

 

 

過去の事例

 

1、産経新聞社と連邦

 

 平成15年3月、産経新聞社の社員から「連邦」などに対して、無断リンクが著作権法侵害に該当するとした警告メールが送られた事件。著作権法上、リンクが違法かどうかについてネット上で議論がなされた。

 

2、読売新聞VSデジタルアライアンス事件

 

  デジタルアライアンスがリンクの見出しにヨミウリ・オンラインの記事見出しと同一語句を使用した点について読売新聞社が著作権侵害を主張した事件。平成16年3月24日、東京地裁は同記事見出しについて「ありふれた表現であり、創作性を認めることはできない。」などとして著作権侵害を否定した。

 

 

 

 

 

条文

 

著作権法

 

(定義)

 

第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 

  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

 

 

 

(複製権)
第二十一条  著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

 

 

 

(引用)
第三十二条  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

 

 

 

(出所の明示)
第四十八条  次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
 
 一  第三十二条(中略)の規定により著作物を複製する場合

 

2015年7月 4日 (土)

昔の原稿2004年3月版(CDやDVDのコピープロテクト)

04年3月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります(今回の原稿は特に変化があった部分ですね。11年前とは結構変わっています)

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

 

コピープロテクトを外したら違法なのか、コピーしたCDあるい

 

DVDを私的ではない範囲で使用する(友人に配る、または

 

オークションで販売するなど)した時点で違法なのか、あるい

 

は私的に楽しむ分には合法なのか、どこの時点から違法に

 

なるのか。

 

 

 

 

 

「CDやDVDのコピーは、私的使用目的であれば違法ではない。」という話を聞いたことのある読者は多いと思います。他方で、コピープロテクトのかけられたCDやDVDも私的使用目的であればコピーしてもよいのかと疑問に思われる方もいらっしゃると思います。また「私的使用目的」とはどんな範囲のことなのか、コピープロテクトのはずし方を雑誌やインターネットで公開することが違法になるのかといったことも気になると思います。そこで、今回は、この問題に説明していきたいと思います。

 

1 コピープロテクトCD・DVDの複製について

 

  著作権法30条1項は、著作権者の複製権に制約を加えて、一定の例外を除き、著作権者以外の者が私的使用目的のために複製を作成することを許しています。

 

  この「私的使用目的の複製」が許されない場合の一つとして、「技術的保護手段の回避」によって意図的に複製物を作成した場合が挙げられており、コピーコントロールCDやDVDをコピーすることは、この例外の場合にあたり、許されず、違法ではないかが問題となります。

 

  「技術的保護手段」および「回避」の意味については著作権法に定められています(著作権法2条1項20号、同法30条1項2号)。

 

  コピーコントロールCDや通常の市販DVDは、通常の音声信号や映像信号とは異なった「信号」が用いられていることから、法律的には「技術的保護手段」が採られている著作物であると評価されることになると思われます(厳密に考えると、場合によっては著作権法の予定している「技術的保護手段」ではないコピープロテクトのついたCDやDVDもあるかと思いますが、その判断は微妙な点があるので、コピープロテクトといわれているものは「技術的保護手段」にあたると考え、注意した方が無難です)。

 

  したがって、コピーコントロールCDやDVDを技術的保護手段の「回避」によって複製することは、著作権者の複製権を侵害し、違法ということになります。この「回避」とは、技術的保護手段に用いられている信号を除去・改変(記録または送信の方式の転換に伴う技術的な制約による除去または改変を除く)することにより、その技術的保護手段による防止・抑止の効果を働かなくしてしまうことをいいます。パソコン等の機器に、この信号に反応する仕組みが備わっていないために(いわゆる「無反応機器」)、技術的保護手段が機能せずにコピーが行われてしまうような場合には、信号の除去・改変が行われているわけではありませんので「回避」にはあたらず、複製権の侵害にはなりません。また、パソコン上で、音楽CDをWAVやMP3に変換するような場合には、上記の「記録または送信の方式の転換に伴う技術的な制約による除去または改変」にあたり、これも複製権の侵害とはなりません。

 

  繰り返しになりますが、コピーコントロールされたCDや通常の市販DVDをコピープロテクトをあえて破るソフトウェアなどを使用してコピーすることは、たとえバックアップなどの私的使用目的であったとしても「違法」となりますので、注意してください。

 

2 「私的使用目的」の範囲について

 

  著作権法では、「私的使用目的」に関して「個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」という具体的範囲が明示されています。「これに準ずる限られた範囲内」といえるためには、複製する者の属するグループのメンバー相互間に強い個人的結合関係があることが必要であって、何らかの趣味なり活動なりを目的として集まった、ごく親しい少人数のグループに限られます。したがって、この範囲を超えて友人にコピーを配ったりオークションで販売することは、「私的使用目的」とはいえず、複製権を侵害し違法となります。

 

  仮に私的使用目的で作成した複製物であっても、これを私的使用目的の範囲を超えて第三者に譲渡したりすることは、著作権者の複製権を侵害する行為となりますから注意してください(著作権法49条1項)。

 

3 コピープロテクトのはずし方を雑誌やインターネットで公開することについて

 

  著作権法120条の2は、技術的保護手段を回避することを専らその機能とする機器(いわゆる「キャンセラー」)やプログラムの複製物を、譲渡の目的をもって製造したり、公衆に譲渡したり、公衆に対してそのプログラムを公衆送信、送信可能化した場合には、刑事罰を科しています。

 

  したがって、コピープロテクトのはずし方を文章化し、それを雑誌やインターネットで公開すること自体は、違法とはならず、処罰を受けることはありません(ただ、著作権法の趣旨からして、そのような行為が推奨されないことはもちろんです)。

 

  他方、コピープロテクトをはずすプログラムを作成したり複製したりして、それをインターネット上でダウンロード可能な状態にしたような場合には、著作権法に違反し、処罰を受けることがあります。

 

  なお、不正競争防止法にも同趣旨の規定があり、損害賠償請求や差止請求が認められています。

 

 

 

 

 

著作権法

 

 

 

 

 

(私的使用のための複製)

 

第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

 

  略

 

  技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

 

 

 

第百二十条の二  次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 

  技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化した者

 

  業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避を行つた者

 

2015年7月 3日 (金)

昔の原稿2004年2月版(中古ハードディスクを購入したら、前の持ち主のデータが残っていた。データ救済ソフトを使って、これらのデータを吸い出して閲覧するのはOKか?)

04年2月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります(11年前とは結構変わっています)

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

「中古ハードディスクを購入したら、前の持ち主のデータが残っていた。データ救済ソフトを使って、これらのデータを吸い出して閲覧するのはOKか?」

 

パソコンを中古パソコンショップに売ったりネットオークションにかけたり、企業が使用していたパソコンのリース期間が終了してリース会社が引き取り再生したうえ、中古パソコンとして市場に出したりすることは多くみられることです。

全くファイルを削除せずに手放す前の持ち主もいるでしょうし、フォーマットくらいはかけておこうかという持ち主もいるでしょう。

データをゴミ箱に入れたりハードディスクにフォーマットをかけただけではデータを完全に消去することはできないということは読者のみなさんには常識かもしれません。現在ではデータ消去ソフトなども出回っていますし、物理的にハードディスクを破壊することも行われたりしているようです。

 たまたま、このような処理をしていない中古ハードディスクを購入し、データ救済ソフトを使ってデータを読み出した行為が違法となるかどうかについて検討してみましょう。

 中古ハードディスクには前の持ち主の個人データなどが入っている可能性が高いため、本件のようにデータを閲覧すること自体が前の持ち主のプライバシーを侵害しないのでしょうか。特に、今回の質問では、わざわざデータ救済ソフトを使用しなければ読めなかったわけですから、前の持ち主がファイルを削除するとかハードディスクをフォーマットするなど、自分のデータを他人には見せたくないという意思があったことが推察されます。

ただ、中古のハードディスクに残存していたデータを読みとったり、データ救済ソフトを使用して閲覧することについては、何ら規制する法律はありません(封をしてある信書をあけることは刑法133条の信書開封罪になりますがハードディスクは「信書」とはいえません)。買主としては、自分が購入したハードディスクですからどのように使用しても原則としては自由です。骨董店や古本屋で買ってきた昔の人の日記や手紙を読むのは問題ありませんし、消しゴムで消された部分を何らかの方法で読みとっても別に問題がないのと同じことです。

読みとることは自由だからといって、読みとったデータを公開してもいいかというとそれは別の問題です。読みとったデータが何かのソフトの設定ファイルだったとか著作物でも個人情報でもなんでもないデータであれば別ですが、個人や会社の何らかの情報であるとすればそれを公開することは違法となる場合があります。

たとえば、読みとったデータが、ある病院や健康保険組合の患者のリストだったとしましょう。患者にとっては通常、自分の病名などを公開していいとは思っていないはずです。また、病院にかかっているということだけでも公開していいとは思っていないでしょう。このように人に知られたくないデータを公開することは、患者のプライバシーの侵害として不法行為(民法709条)となるでしょう。

また、読みとったデータが警察の内部文書だったとしましょう。容疑者の住所、氏名、年齢、職業、容疑の内容、前科前歴などが書かれていた場合、そのようなデータを公開することは容疑者の名誉を著しく害することになります。プライバシー侵害として民事上違法となるのみならず、刑事上も名誉毀損罪(刑法230条)が成立します。

また、前の持ち主が作成した文書やメールなどについては、前の持ち主の著作物である可能性があります。著作物だとすれば、それをHPで公開することは著作権者の複製権(著作権法21条)や公衆送信権(著作権法23条)を侵害することになります。また、ネットオークションで売り出し、実際に買主に送信した場合にも複製権の侵害となる場合があるでしょう。

以上のように、読み出したデータを公開するということは、違法となる場合が多く、絶対に行わないようにしていただきたいと思います。

逆に、公開されないようにするためにはどのような措置を採ればよいのでしょうか。一度流出した情報はもう元には戻せません。最も重要なことはパソコン、それに含まれるハードディスク、CD-Rなどの媒体を処分する場合には、物理的に媒体を破壊するとかデータを完全に消去するソフトなどを利用して、紙をシュレッダーにかけるのと同じように、データを完全に消去するということです。フォーマットすれば大丈夫だと思っている人も現実には多数存在します。このような認識では自分や自分の取り扱う他人の秘密は守れません。とくに多数の個人情報を扱う企業や個人事業主はきちんとした認識をもたなければなりません。平成17年4月30日施行予定の個人情報保護法20条では「個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。」と規定しています(個人情報保護法は既に施行されていますが、民間事業者に関する部分はまだ施行されていません)。自分だけでなく他人の情報を扱っている人はとくに慎重に媒体を処分していただきたいものです。

 

 

過去の事例

 

平成14年1月、福岡県警の内部文書が残ったままの中古ノートパソコンがリサイクル店で販売されました。署員の情報や容疑者の情報などが記載されていたため問題となりました。また同じ時期に、名古屋市で販売された中古パソコンから消去したはずの健康保険組合の診療報酬明細書(レセプト)が復元できたことが明らかになり、問題となりました。

 

 

 

条文

 

刑法

(信書開封)

第百三十三条 正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

(名誉毀損)

第二百三十条  公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

  死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

 

 

2015年7月 2日 (木)

昔の原稿2004年1月 Winnyでダウンロードしたアプリケーションをインストールして実際に使用することが違法か?

2004年1月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります(11年前とは結構変わっています)

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

 

Winnyでダウンロードしたアプリケーションをインストールして実際に使用することが違法かどうかは微妙な問題です。

そもそも、アプリケーションファイルをダウンロードすることが違法かどうかですが、ダウンロード自体は私的使用を目的とする場合には著作権者の複製権を侵害するわけではありません(著作権法30条)。ただ、Winnyを利用してダウンロードすることは、必ずしも合法であるという見解ばかりではありません。他人の著作物をアップロードしたりアップロードできる状態にする場合には著作権者の公衆送信権(送信可能化を含む、著作権法23条)を侵害し違法となります。Winnyはご存じのとおりキャッシュを利用しています。Winnyの利用者は、自分がダウンロードするばかりではなく、知らないうちにアップロードをしていることになるわけです。私的使用目的でダウンロードしたファイルがキャッシュされ第三者に送信される可能性があるということは、そもそもダウンロード自体が私的使用目的に該当せず著作権者の複製権を侵害する、あるいはキャッシュから送信された場合には著作権者の複製権(著作権法49条1項1号、30条)および公衆送信権(送信可能化権を含む)を侵害するという見解もあるのです。

従来、キャッシュに関しては、物理的には複製であることは当然としても、ネットワークの混雑の解消などの有用性を認め、常識的な範囲にとどまる限り、著作権者の複製権や公衆送信権を侵害しないという見解が多かったように思われます。しかしながら、著作権者もあまり目くじらをたてていなかった従来のキャッシュの利用にとどまらず、Winnyを利用したファイルの流通の増大から、キャッシュもその利用形態によっては違法であるという見解が出てくるようになったわけです。

現状ではアップロードフォルダではなく単にキャッシュしただけで逮捕された例などがなく、判例もないため裁判所がどのような見解を採るのかは全く不明な状態です。ただ、アップロードフォルダにアプリケーションファイルを置いた、というような明確な権利侵害のかたちではなく、知らないうちにキャッシュされていて送信もしてしまったようだ、というだけでは違法性があるというのはちょっと厳しいような気がします。

さて、Winnyを利用してアプリケーションファイルをダウンロードする行為が合法だと仮定します。この場合、そのファイルをインストールしたり、利用する場合には違法といえるでしょうか。

私的使用目的でダウンロードしたMP3やROMファイルを利用することは問題がない行為です。ROMファイルのようなプログラムを使用する行為はライセンスがないので違法ではないか、ということを考えるかもしれません。しかしながら、日本の著作権法では、著作権者が使用権(ライセンス)を与えた者だけがプログラムを利用できるということにはなっていませんし、違法に複製されたプログラムですら「業務上」使用するのでなければ自由に使ってもよいことになっています(著作権法113条2項)。したがって、上記の行為は合法ということになるわけです。

では、インストールして使用することは違法となるのでしょうか。インストール行為は、自分のパソコンの中でファイルの複製がなされるということにほかなりません。この複製行為が法律に違反するかどうかが問題となります。例えばシリアルナンバーを打ち込まなければインストールできない場合に、どこかから入手したシリアルナンバーを打ち込んだり、シリアルナンバーを打ち込まなくてもインストールできるよう改変されたインストーラーを利用するような場合には違法となるのでしょうか。

著作権法では、コピーガード信号などを除去して私的使用目的でコピーすることは許されていません(著作権法30条2項)。しかし、インストールの際に、不正に得たシリアル番号を入力する行為自体は、コピーガード信号を除去するわけではないので、条文に該当しないことになります。また、シリアルナンバーを打ち込まなくてもインストールできるよう改変されたソフトを使用したとしても、「業務上」でない場合には、これを明確に違法とする条文もありません。では、これがはっきり合法かというとそういうわけでもありません。ある見解では、私的使用目的といっても度を過ぎた行為は、著作権法30条の許容範囲ではないとしていますし、「著作権法にはっきりと違法と書いていないからといって民法上の不法行為責任が一切生じないほど違法性がないのかというとそうではないのではないか」と述べる弁護士もいます。Winnyで入手したアプリケーションソフトをインストール及び使用する行為は、私的使用目的であるとしても法律的にグレーな状態であることはもちろん、道義的にも許されることではないと思います。節度をもった利用を心がけましょう。

 

過去の事例

 平成15年11月27日、京都府警察本部ハイテク犯罪対策室、五条警察署は、ゲームボーイアドバンスのソフトや映画のファイルを不特定多数の者に送信できるようにしたとして、愛媛県松山市の男性と、群馬県高崎市の男性の自宅をそれぞれ著作権侵害(公衆送信権の侵害、送信可能化権を含む)の疑いで家宅捜索し、同人らを逮捕しました。

 

条文

著作権法

(私的使用のための複製)

第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

  公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合

  技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

 

(侵害とみなす行為)

第百十三条

  プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物(当該複製物の所有者によつて第四十七条の二第一項の規定により作成された複製物並びに前項第一号の輸入に係るプログラムの著作物の複製物及び当該複製物の所有者によつて同条第一項の規定により作成された複製物を含む。)を業務上電子計算機において使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り、当該著作権を侵害する行為とみなす。

2015年7月 1日 (水)

昔の原稿2003年9月版(インターネットオークション)

2003年9月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります(12年前とは結構変わっています)

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

 

> Q.1 説明文と実際に届いた商品の内容が違ったが、違法

 

>    ではないのか?

 

 

 

インターネット・オークションで出品者が説明していた商品と実際に送られてきた商品が異なる場合、いろいろなケースを想定することができます。

 

たとえば、電器製品やパソコンなどであれば、そもそも型番がちがうとか、まったく違う種類のものが送られてくるということや、商品はまちがいなくその型番であっても付属品が欠けていたり、新品同様の中古品という説明にもかかわらず、程度が悪いということなどが考えられます。

 

このような場合、違法なのか違法でないのかというのはケースバイケースになります。

 

そもそも出品者と落札者との間には、落札時あるいは落札後別途合意が成立したときに出品物の売買契約(民法555条)が成立したものといえます。売買契約が成立すれば、出品者にはその商品を落札者に引き渡さなければならない義務が発生し、落札者には代金を出品者に支払わなければならないという義務が発生します。

 

出品者側の義務、すなわち商品の引き渡し義務の内容は、もちろん説明したとおりの商品を落札者に引き渡すことです。新品の場合、当然説明どおりの新品の商品を落札者に引き渡す必要があります。説明とは違う商品が送られてきた場合には、当初に説明したとおりの商品を送るよう請求できます。

 

一方、中古品の場合、商品の性能や機能に無関係な軽微なキズがある場合には、落札者から出品者に対して損害賠償の請求や契約の無効を主張することはできません。中古品である以上、新品とまったく同じというわけにはいかないからです。「どの程度ならば軽微なのか」という疑問も当然あると思いますが、これは商品の性質などによってケースバイケースだと思われます。

 

中古品の場合であっても、説明の内容とあまりにちがう商品が送られてきた場合、たとえば、動くといっていたのに動かないとか、写真や説明文にあったキズとは別のキズがあるとか、衣服であればシミや汚れがあるといった場合には、その程度に応じて出品者は債務不履行責任(民法415条)を負います。具体的には、機械であれば故障していて使用できないとか、衣服であれば汚れやシミの程度がひどくとても着るわけにはいかない、ちょっと気付きにくいところに穴があいていた、などといった場合には、出品者は債務不履行責任や瑕疵(かし)担保責任を負い、落札者は出品者に対して損害賠償を請求したり契約の解除をすることができます(民法415条、民法570条)。

 

さらに、落札者が「こんな商品だと知っていれば落札することはなかった」ということであれば、落札者は売買契約の錯誤無効(民法95条)を主張することが考えられます。錯誤無効を主張する場合には、売買契約がそもそも無効(存在しなかった)ということになりますので落札者は出品者に返金を求め、商品を出品者に返品することになります。

 

なお、出品者が「ノークレーム・ノーリターン」という記載をしていて、落札者がそれを理解したうえで落札したとしても、「商品の程度がきわめて悪い」「商品の性能や機能に影響する」ということを出品者があらかじめ認識していた場合あるいは重過失で認識していなかった場合には落札者は損害賠償の請求や売買契約の無効を主張できると考えられます(民法572条)。

 

また、出品者が最初から落札者を騙すつもりであった場合(明らかな偽ブランド品を送ってきた)などには、落札者は詐欺(民法96条1項)を理由に売買契約を取り消すということも考えられます。この場合には、出品者には詐欺罪(刑法246条1項)が成立するとともに出品者が偽ブランド品と知っていた場合には商標権を侵害することになり、罰せられる可能性があります(商標法78条)。

 

 

 

特定商取引法が適用になる場合

 

 

 

個人であれ法人であれ、特定商取引法で指定されている「指定商品」(特定商取引に関する法律施行令別表第1に1から55までの指定商品が記載されています。興味がある方は総務省の「法令データ提供システム」http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgiなどで調べることができます)を「営利の意思」を持って「反復継続」して販売を行う場合には、個人であっても「事業者」となり特定商取引法の規制対象になると考えられています。特定商取引法は、訪問販売や通信販売を規制する法律ですが、インターネット・オークションは、この法律の「通信販売」に該当すると考えられています。したがって、一般の個人であろうと特定商取引法の規制に服する場合があります。例えば、個人が同一の商品を短期間に多数出品するような場合には、特定商取引法の規制が及び、その個人は特定商取引法上のさまざまな義務を守る必要があります。例えば、特定商取引法11条(および特定商取引に関する法律施行規則8条)は、広告に表示する事項を定めていますし、同法12条は誇大広告を禁止しています。したがって、出品の際に特定商取引法11条に定められた必要事項の記載がない場合には、違法ということになりますし、出品の際に「著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものより著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」(同法12条)をした場合には違法ということになります。

 

ちなみに、「クーリングオフ」という制度は特定商取引法に規定がありますが、条文上「通信販売」の場合にはクーリングオフ制度はありません。

 

 

 

不当景品及び不当表示防止法(景表法)が適用になる場合

 

 

 

 この法律も法人であろうと個人であろうと事業を行う者が出品者となる場合に適用になる法律です。同法第4条は、「実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示」のように一般消費者を誤認させるような不当な表示を禁止しています。この法律に違反する場合には公正取引委員会の警告を受けることになります。

 

 

 

「ノークレーム・ノーリターン」について

 

 

 

個人であろうと法人であろうと事業者が出品者である場合、たとえ「ノークレーム・ノーリターン」という記載をしたとしても消費者契約法第8条によって一般消費者に不利な部分は無効となり、出品者側は「一切返品を受け付けない」という主張はできません。また、特定商取引法第11条1項4号は返品に関する特約を表示しなければならないと規定していますので、返品特約の記載がない場合には、逆にどんな理由でも返品を受け付ける(落札者側は解除権がある)という解釈もできます。

 

 

 

 

 

> Q.2 入金したのに商品が届かなかった、違法ではないのか?

 

 

 

出品者と落札者との間には商品の売買契約が成立していますので、出品者は商品を落札者に引き渡す義務を負っています。引き渡しの方法は、出品者と落札者の話し合いによって決めることができ、商品を郵送するとの合意があった場合には、出品者は落札者に対して商品を郵送し落札者に引き渡さなければなりません。したがって、商品が届かない場合には、落札者側が債務不履行責任(民法415条)を負うことになります。したがって、落札者は出品者に対して、引き続き商品を送るよう請求したり、契約を解除して返金を求めたり、損害賠償を請求することができます。

 

なお、商品が届かなかった原因として、出品者が商品を送付していた場合と送付していない場合が考えられます。出品者が商品を送付していたにもかかわらず落札者に届かないということは郵便事故の場合が考えられます。出品者側としては落札者にあらためて商品を送るか返金するなどしたうえで、日本郵政公社(旧郵政事業庁)や宅配業者に責任を問いたいところですが、普通郵便の場合やメール便の場合には事故の場合に商品の値段を賠償してくれるわけではありません。出品者側としては送付する商品の性質に応じて賠償金額の上限を考慮したうえで郵便や宅配便などの送付手段を決定する必要があるでしょう。

 

一方、出品者が商品を送付していない場合も考えられます。この場合、出品者側は商品を送付すべき義務を負っているわけですから、出品者は債務不履行責任(民法415条)を負うことになります。出品者側に最初から送る気がないということであれば、詐欺(民法96条1項)に該当し、落札者側は契約を取り消し、返金を請求することができます。また、刑事上も詐欺(刑法246条1項)に該当することになるでしょう。

 

 

 

> Q.3 詐欺・トラブルにあったら、どう対処すればいいのか?

 

 

 

 詐欺やトラブルの際に最も重要なのは証拠です。商品の写真や説明文などはプリントアウトするなりPCに保管しておいてください。また、落札後のメールでのやりとりなども保管しておく必要があります。また、お金を振り込む前に出品者の振込指定銀行、氏名、メールアドレス、住所、電話番号(なるべくなら固定電話番号)などをしっかり確認し、情報・記録を残しておいてください。

 

 被害にあった場合には、PCに保管された情報などは全てプリントアウトして時系列に従って整理してください。相談を受ける際にスムーズな相談を受けられると思います。

 

 自分でできる方法としては、出品者側の住所がわかっている場合には、内容証明郵便(インターネットからでも内容証明郵便を送ることができます。詳しくはhttp://www3.hybridmail.jp/mpt/)を送付して返金や損害賠償を求めたり、簡易裁判所の調停や少額訴訟を利用して返金や損害賠償を請求することなども考えられます。

 

悪質なトラブルに遭遇し、自分ではとても対処できないという場合には、手持ちの資料を整理して経過をまとめたうえで、お近くの弁護士会の法律相談を利用してみてください(日本弁護士連合会に各地方の弁護士会へのリンク集がありますhttp://www.nichibenren.or.jp/)。弁護士会以外にもインターネット上で相談に応じている弁護士や弁護団もあります。また、詐欺のような刑事事件の被害にあってしまったと考えられる場合には、各都道府県警察本部のハイテク相談窓口(http://www.npa.go.jp/hightech/soudan/hitech-sodan.htm)に相談することもできます。

 

 

 

過去の事例

 

1 警視庁は、平成15年3月、約2000人から3000万円~4000万円をだまし取ったとして埼玉県の男性を逮捕しました。この男性は、当初デジタルカメラなどの電気製品を安く出品し実際に商品を送付して落札者からの評価を高めた後に、一転して金を受け取っても商品を発送せず、詐欺行為を行ったということです。

 

 

 

2 公正取引委員会は、平成14年3月ころから8月ころまでの間に事業者がインターネット・オークションに出品し一般消費者に販売した腕時計に関する表示について景表法第4条第1号に違反するとして、当該事業者に警告を行ったとのことです。

 

 

 

 

 

 

 

条文

 

 

 

民法

 

第九十五条  意思表示ハ法律行為ノ要素ニ錯誤アリタルトキハ無効トス但表意者ニ重大ナル過失アリタルトキハ表意者自ラ其無効ヲ主張スルコトヲ得ス

 

 

 

第九十六条  詐欺又ハ強迫ニ因ル意思表示ハ之ヲ取消スコトヲ得

 

 

 

第四百十五条  債務者カ其債務ノ本旨ニ従ヒタル履行ヲ為ササルトキハ債権者ハ其損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得債務者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リテ履行ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキ亦同シ

 

 

 

第五百五十五条  売買ハ当事者ノ一方カ或財産権ヲ相手方ニ移転スルコトヲ約シ相手方カ之ニ其代金ヲ払フコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス

 

 

 

第五百六十六条  売買ノ目的物カ地上権、永小作権、地役権、留置権又ハ質権ノ目的タル場合ニ於テ買主カ之ヲ知ラサリシトキハ之カ為メニ契約ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサル場合ニ限リ買主ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得其他ノ場合ニ於テハ損害賠償ノ請求ノミヲ為スコトヲ得

 

 

 

第五百七十条  売買ノ目的物ニ隠レタル瑕疵アリタルトキハ第五百六十六条ノ規定ヲ準用ス但強制競売ノ場合ハ此限ニ在ラス

 

 

 

第五百七十二条  売主ハ前十二条ニ定メタル担保ノ責任ヲ負ハサル旨ヲ特約シタルトキト雖モ其知リテ告ケサリシ事実及ヒ自ラ第三者ノ為メニ設定シ又ハ之ニ譲渡シタル権利ニ付テハ其責ヲ免ルルコトヲ得ス

 

 

 

刑法

 

 (詐欺)

 

第二百四十六条  人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

 

  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

 

 

特定商取引法

 

(通信販売についての広告)

 

第十一条  販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の指定商品若しくは指定権利の販売条件又は指定役務の提供条件について広告をするときは、経済産業省令で定めるところにより、当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。ただし、当該広告に、請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、販売業者又は役務提供事業者は、経済産業省令で定めるところにより、これらの事項の一部を表示しないことができる。

 

  商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には、販売価格及び商品の送料)

 

  商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法

 

  商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期

 

  商品の引渡し又は権利の移転後におけるその引取り又は返還についての特約に関する事項(その特約がない場合には、その旨)

 

  前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項

 

   略

 

 

 

(誇大広告等の禁止)

 

第十二条  販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の指定商品若しくは指定権利の販売条件又は指定役務の提供条件について広告をするときは、当該商品の性能又は当該権利若しくは当該役務の内容、当該商品の引渡し又は当該権利の移転後におけるその引取り又はその返還についての特約その他の経済産業省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。

 

 

 

不当景品類及び不当表示防止法

 

(不当な表示の禁止)

 

第四条  事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号に掲げる表示をしてはならない。

 

  商品又は役務の品質、規格その他の内容について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示

 

  商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示

 

  前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認めて公正取引委員会が指定するもの

 

 

 

消費者契約法

 

(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)

 

第八条  次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。

 

  事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項

 

  事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項

 

  消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の全部を免除する条項

 

  消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の一部を免除する条項

 

  消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があるとき。次項において同じ。)に、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項

 

  略

 

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