昔の原稿2006年5月版(ブログの著作権 )
2006年5月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。
なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。
あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください
●ブログの著作権
・他人のブログのミラーサイトや掲示板のスレのまとめサイトを勝手に作るのは違法?
ブログには文章、写真、イラストなどさまざまな要素が含まれています。「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を著作物といいますが(著作権法2条1項1号)、ブログのこれらの要素は、それぞれ創作した者(通常はブログの開設者)が「思想又は感情を創作的に表現したもの」といえますから、それぞれが著作物といえますし、ブログ全体も著作物といえるでしょう。さらにコメントもコメントを書いた人の著作物といえるでしょう。
ブログの著作権者(ブログに書き込みをした開設者やコメントを書き込んだ人)は、ブログの著作物について著作権を有しています。例えば、印刷したりコピーをとること(複製権、同法21条)、ブログをネットを通じて公開すること(公衆送信権、同法23条)、ブログの内容を要約したり変更すること(翻案権など、同法27条)などです。また、同一性保持権(同法20条)などの著作者人格権も有していることになります。
ブログの著作物について私的使用目的の複製はもちろん許容されています(著作権法30条1項)。また、ブログは広く人々に読んでもらうために公開しているのですから、ブログの開設者やコメントを書き込んだ人も私的使用目的(同法30条1項)でない印刷(例えば会社内での印刷)などについては許諾しているといえることが多いと思われます(複製を黙示的に許諾しているケース)。
しかし、さすがにブログの著作権者も他人が勝手にミラーサイトを開設することまでも黙示的に許諾しているとはいえません。したがって、他人のブログのミラーサイトを勝手に開設することはブログの著作権者やコメントの著作権者の複製権や公衆送信権(送信可能化権を含む、同法23条)を侵害することになるでしょう。
また、掲示板は、書き込みをしている人たちの著作物の集合体です。書き込みをしている人たちにも著作権はありますから、書き込みの条件として著作権を行使しないことなどが周知徹底されている場合を除いて、著作権者に無断で複製したり翻案したりすることはできません。したがって、掲示板のスレのまとめサイトを勝手に作るのは、書き込みをした人たちの複製権や翻案権、同一性保持権を侵害することになります。
これらの侵害に対して権利者は差止請求をすることができますし(同法112条)、罰則もあります(同法119条)。
・トップページでなく特定の記事にリンクを貼るディープリンクは違法?
URLは通常は、ネット上の住所なようなもので、著作物とはいえないと考えられています。したがって、どこにリンクを張ろうと特に著作権を侵害しないといわれています。もっとも「ディープリンクはやめて欲しい」と明示しているサイトについてわざわざディープリンクを張るのはマナー違反といわれていますので、このような場合には違法とはいえませんができるだけ避けるべきであろうと思います。
・ブログに本やCDジャケットのスキャン画像を貼るのは違法?
本の表紙やCDジャケットについてもイラストを描いた人やデザインした人、出版社などが著作権を保有していると考えられます。これらの著作権者も複製権、公衆送信権を有していますから、著作権者に無断で本の表紙やCDジャケットをスキャンした画像ファイルをブログのサーバにアップロードすることは、法律上は著作権者の複製権や公衆送信権(送信可能化権を含む)を侵害することになるでしょう。これらの侵害に対して著作権者は差止請求をすることができますし(同法112条)、罰則もあります(同法119条)。
もちろん、これは画像ファイルそのものをスキャンしブログに取り込んだ場合の話で、例えばネット書店に存在する画像ファイルなどにリンクを張って、画像ファイル自体は複製せずにブログ上に表示するということも考えられます。このような場合には、必ずしもブログの開設者が画像ファイルを複製したわけでもありませんし、画像ファイルを公衆送信しているわけでもありません。ですから通常は著作権を侵害しないものと考えます。ただ、あまりに度が過ぎていれば不法行為(民法709条)などの成立もあり得るかもしれません。
アフィリエイトなどの場合に、アフィリエイトプログラムの主催業者が指定している方法で、本やCDジャケットの画像を用いてブログに表示するケースの場合には、ブログの開設者が画像ファイルをダウンロードしたうえでブログから送信しているというよりは、アフィリエイトプログラムの主催者側の画像ファイルにリンクを張っている、つまり画像ファイルはアフィリエイトプログラムの主催業者が送信しているケースが多いと思います。信頼できる業者であれば業者の側で権利関係については処理しているものと考えられますから、このような場合には、権利者側の許諾があると考えてよいと思われます。
条文
著作権法
(同一性保持権)
第20条1項 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
(複製権)
第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
(公衆送信権等)
第二十三条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。
(翻訳権、翻案権等)
第二十七条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
(差止請求権)
第112条1項 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
(罰則)
第119条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1号 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作者人格権、著作権、実演家人格権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)
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