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2015年8月10日 (月)

昔の原稿2006年8月版(ブラックウォーム)

2006年8月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください

WinFixer」「WinAntiVirus のように、ユーザーのパソコンが深刻なトラ

ブルに陥っていると誤解させ、セキュリティ対策ソフトの購入を促すサイトは違

法ではないのか?

 

違法です。日本の法律を前提に検討してみましょう。

「ブラックウォーム」なる架空のウィルスに感染するおそれがあるからとウソの警告を発してウィルス対策用のソフトを購入させる行為は、そもそも刑法上の詐欺罪(刑法246条、罰則は10年以下の懲役)に該当するものと考えられます。国外から詐欺行為が行われて被害が日本で発生したような場合にも日本の刑法が適用されるかどうかが問題となりますが、日本で被害が発生している以上、犯罪構成事実の一部分が日本でなされたといえますから、日本の刑法の詐欺罪が成立すると考えてよいと思われます。

 刑法だけでなく民法の観点からみても、このような勧誘行為により利益を得ることは違法なものであり不法行為(民法709条)に該当するものと考えられます。

なお、クレジットカードの情報などを入力せず、ウィルス対策ソフトを購入しないですんだものの、試用版をインストールしてしまったため問題が発生することがあるようです。例えば、PCがスパイウェア、マルウェアなどに侵された状態になっており、該当するソフトがなかなかアンインストールできなかったり、PCの速度が非常に遅くなったりするなどPCの通常の利用が困難になったりする例があります。このような場合であれば、そのPCが業務に使用するものであるとすれば、刑法の電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2、罰則は5年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が成立する可能性もあります。また、民法の不法行為が成立し、損害賠償を請求できるでしょう(民法709条)。

 

・こうしたサイトでソフトウエアを購入するために個人情報を入力しても大丈

夫?

 

 大丈夫ではありません。氏名とカード番号などを悪徳業者に取得された場合には、不正に利用されるおそれがあります。例えば、今回の「WinFixer」「WinAntiVirus」のような不必要なソフトウエアの購入の支払いに1回だけ使われるのではなく、その後、カード番号を含んだ個人情報が売買されたり、不正取得されたカード番号を利用して偽の売上げをカード会社に架空請求するようなケースも考えられます。

 つまり、このようなサイトで個人情報を入力するということはフィッシングサイトと同じような結果を招くことになるのです。原則としては、インターネットではクレジットカード番号や氏名、住所などの個人情報を入力しないこと、入力する場合には信頼できるサイトであることを十分確認した場合に限定するべきでしょう。

 

・こうしたサイトの勧めでセキュリティ対策ソフトを購入してしまった場合、

返品は可能?

 

法律的には可能ですが、実際上難しいでしょう。

本件のようなウソの警告に基づいたセキュリティソフトの購入契約については、民法上の詐欺に該当するので契約を取り消すことができると考えられます(民法96条1項)。

民法のみならず、消費者契約法でも契約の取消しが可能であるかは問題点があります。消費者契約法4条1項本文は「消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。」と定め、同項1号は「重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認」と規定しています。

「勧誘」は、特定の者に対して向けられたものである必要があり、不特定の者に向けられたパンフレットやホームページなどを利用したものは「勧誘」には該当しないとされています。本件の場合には、アクセスしてきた者に対して、無差別的にウソの警告を発してソフト購入を促すわけですから、不特定の者に対して勧誘しているともいえそうです。したがって、「重要事項について事実と異なることを告げ」て購入を促しているが、この法律で定めている「勧誘」には該当しないという考え方もできます。ただ消費者契約法の目的である消費者保護の観点からは、このような警告を発してソフトの購入を促すことは「勧誘」に該当すると考えて、消費者契約法の適用があるべきでしょう。

消費者契約法の適用の有無に関わらず、民法96条1項によって契約の取消が可能ですから、法律的には契約の取消を主張して返金請求することは可能であるといえます。ただ法律でいくら契約の取消しが可能であっても実際にその通りに行くかどうかは別の問題です。実際にどこの業者が売主なのかよくわからないわけですから、連絡先になっているメールアドレス宛に、取消しを伝えるメールをいくら送っても返金を受けることはなかなか難しいのではないかと思われます。

 したがって、今後のクレジットカード情報の悪用を避けるためにも速やかにクレジットカード会社に連絡をとり、事情を説明し、使用を止めてもらう、カード番号を変更してもらうなどの対策をとってもらいましょう。

 

 

刑法

(電子計算機損壊等業務妨害)

第二百三十四条の二  人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 

(詐欺)

第二百四十六条  人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

民法

(詐欺又は強迫)

第九十六条  詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

  相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

  前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

(不法行為による損害賠償)

第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

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