執筆,監修,その他少し関与(しただけ)した本です

2017年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

最近のトラックバック

« 昔の原稿2007年1月版(個人情報漏洩) | トップページ | 昔の原稿2001年11月版(会社で上司にサーバのメールを見られてしまったのだが?他) »

2015年8月19日 (水)

昔の原稿2007年2月版(ドメイン差押え)

 

2007年2月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。

なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。

あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。

ドメインまで差し押さえることって本当に可能?

 

 

 

例えば、裁判で勝訴が確定したにも関わらず、被告がお金を支払ってくれない場合に、原告が裁判所などに被告の財産(銀行預金や不動産や給料など)を勝手に処分できないように申し立てをして(差押え)、さらにその財産を売却するなどして(例えば競売)、お金に換えて、そこから原告は支払いを受ける、という強制手段を採ることがあります(強制執行の一種である「金銭執行」。なお、裁判の前に財産を保全する場合には「仮差押え」といいます)。金銭執行の対象となるのは、「不動産」「船舶」「動産」「債権」「その他の財産権」などです。

 

ドメインが金銭執行の対象となりうるかを検討してみましょう。ドメインは、所有権や財産権ではなく、債権的な性質にすぎないものとされています(東京地裁平成14年5月30日判決)。この判決の中では、ドメイン名は、インターネット利用者とドメイン名登録機関との間で締結された登録規則を内容(契約約款)とする私的な契約を根拠に付与されるものであり、ドメイン名登録者は、ドメイン名登録機関に対して有する債権契約上の権利としてドメイン名を使用するものであって、ドメイン名について登録者が有する権利はドメイン名登録機関に対する債権的な権利にすぎないとされています。このような債権的なものでも金銭執行の対象となるかですが、「その他の財産権」(民事執行法167条1項)とされる可能性もあるでしょう。

 

 

 

また、「.net」のようなgTLDのドメイン登録機関(レジストリ)は米国のVeriSign社です。日本の裁判所に強制執行を申し立てるのでしょうか、それともアメリカの裁判所に申し立てるのでしょうか。日本の判決をアメリカで承認してもらってアメリカで執行するという手もあるかもしれません。日本の裁判所でできるとして、手続きの途中で登録者が勝手に変更されないように日本の裁判所が差押命令をだした場合、米国のレジストリを拘束することができるのか。どちらの国であってもドメインを競売して買い主が代金を支払う、あるいは債権者にドメインが譲渡されるという場合に、譲渡を受けた者にドメインを移転する手続きは具体的にはどのようにするのか、などの問題がたくさんあり、やってみないとよくわからない、つまり事実上はかなり困難ということになるでしょう。

 

 

 

一切の賠償命令を意識的に無視し続けている件について

 

 

 

 債権者(勝訴した原告など)が債務者(被告など)の名義になっている資産を発見したのであれば強制執行が可能です。ただ、どうやって見つけるのかという問題があります。興信所を使うという手もありますが、名義が債務者になっていなければ発見は困難でしょう(費用をたくさん使えば探し出してくれるかもしれませんが)。例えば、債務者名義の海外の銀行預金口座があったとしても発見することは困難ではないでしょうか。仮に債権者が債務者の破産を申し立て、裁判所が破産開始決定をだした場合、管財人が債務者の財産を調査するということも考えられます。管財人が国内金融機関に対して債務者の口座がないか照会することも考えられます(債務者本人名義のものだけです)。債務者宛の郵便物は郵便局から管財人に転送されますから、その郵便物の中に海外の証券会社や銀行などの金融機関からの取引明細書などが含まれていれば海外の口座を発見することはできるでしょう。また、国内に不動産があれば固定資産税の書類などが市役所などから登記上の不動産所有者宛に送付されますから、そこから不動産を発見できるという可能性もあります(債務者本人名義のものだけです)。結局のところ、本人名義でなければ管財人も原則として発見もできないでしょうし手も出せないでしょう。もともと本人名義だったものが第三者に仮装譲渡されている痕跡を管財人が発見すれば、仮装譲渡を取り消して、管財人が管理するということも考えられますが、これも痕跡が残っていればの話で、現実には難しい話でしょう。

 

 

 

海外に資産を移すなど対抗策を講じて、逃げ切るつもりらしいけど、

 

それで逃げ切れるものなの?

 

 

 

 あくまで一般論でいえば、債権者が債務者の財産を発見できないということもありうるでしょう。最近は日本ではなじみのないような海外の銀行や証券会社に資産を移動するという例も多く、一般的に行われているようです。海外投資に関する本もたくさん出ています。「日本の税務署に資金移動を把握されても何にも問題はないが、債権者には知られたくない」という考えであれば、日本国内から海外に送金するということもあまり多くの問題を抱えずに実行できると思われます(日本で暮らしている人が税務署に知られずにいわゆるタックス・ヘイブンで税金を逃れて運用したい、という脱税のような目的であればともかく、日本の債権者から逃れたいというだけの目的であれば、海外投資に詳しい人であれば特に苦労なく、いろいろ手段を思いつくはずですし、お金を出せばもっとよい方法を考えてくれる専門家もいるでしょう)。これを探し出すとしても、かなりのコストと時間がかかり、事実上難しいのではないでしょうか。

 

 

 

条文

 

民事執行法

 

(その他の財産権に対する強制執行)

 

第百六十七条  不動産、船舶、動産及び債権以外の財産権(以下この条において「その他の財産権」という。)に対する強制執行については、特別の定めがあるもののほか、債権執行の例による。

 

  その他の財産権で権利の移転について登記等を要するものは、強制執行の管轄については、その登記等の地にあるものとする。

 

  その他の財産権で第三債務者又はこれに準ずる者がないものに対する差押えの効力は、差押命令が債務者に送達された時に生ずる。

 

  その他の財産権で権利の移転について登記等を要するものについて差押えの登記等が差押命令の送達前にされた場合には、差押えの効力は、差押えの登記等がされた時に生ずる。ただし、その他の財産権で権利の処分の制限について登記等をしなければその効力が生じないものに対する差押えの効力は、差押えの登記等が差押命令の送達後にされた場合においても、差押えの登記等がされた時に生ずる。

 

  第四十八条、第五十四条及び第八十二条の規定は、権利の移転について登記等を要するその他の財産権の強制執行に関する登記等について準用する。

 

« 昔の原稿2007年1月版(個人情報漏洩) | トップページ | 昔の原稿2001年11月版(会社で上司にサーバのメールを見られてしまったのだが?他) »

「法律」カテゴリの記事