橋本拓朗、加藤美香保、南部朋子、横溝昇、梅村陽一郎: 図解入門ビジネス 最新著作権の基本と仕組みがよーくわかる本 (How‐nual Business Guide Book)
橋本拓朗、横溝昇、加藤美香保、梅村陽一郎、弁護士法人リバーシティ法律事務所(監): 図解入門ビジネス 最新 著作権の基本と仕組みがよ〜くわかる本
横溝昇、南部朋子、加藤美香保、越川芙紗子、橋本拓朗、和田はる子、南川麻由子、弁護士法人リバーシティ法律事務所(監) : 図解すぐに使える!契約書式文例集―ビジネス契約書の読み方と作り方
加藤美香保、越川芙紗子、和田はる子、南川麻由子、高橋麻理: 図解入門ビギナーズ 最新刑事訴訟法の基本と仕組みがよーくわかる本 (How‐nual Visual Guide Book)
宮本 勇人: 図解入門ビジネス 最新事業承継の対策と進め方がよーくわかる本 (How‐nual Business Guide Book)
プロジェクトタイムマシン: コンピュータユーザのための著作権&法律ガイド―CDバックアップからホームページ作成まで、身近な著作権の疑問を解決!
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2006年3月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。
なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。
あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください
●未成年とインターネット犯罪
・未成年が出会い系サイトやアダルトサイトを見て、請求を受けた。身に覚えがある場合は料金を支払わなければならないのか?
民法上の成年は20歳です(民法4条)。20歳未満の者を未成年といいます。未成年の場合には成人の場合と異なって、その法定代理人(親など)の同意を得なければ契約をすることはできません(民法5条1項)。これに反して契約をした場合には、基本的には契約を取り消すことができます(民法5条2項)。ただ、未成年であるにもかかわらず、成人のふりをして契約をした場合には、契約を取り消すことができません(民法21条)。民法21条により取り消すことができない場合には、成人の場合と同様の流れになります。
成人でも未成年でも、アダルトサイトを利用した場合に、本当に利用したサイトから請求されているのかどうか不明な場合には、請求を無視するのが基本です。別の業者からの架空請求かもしれません。いちいち対応して自分の個人情報をこれ以上業者に渡す必要はありません。
では一度は利用してしまったことが明らかなサイトの業者から請求が来た場合はどうでしょうか。サイトにもよりますが、悪質な業者ということはないですか?例えば、無料という広告につられてクリックしたらいきなり料金を請求されたとか、申込みの前に確認の画面がないとか、料金体系が非常にわかりにくく支払いが遅れると異常に高い損害金を取られることになっているとか。
電子消費者契約法3条では、事業者側が消費者の真意を確認するきちんとした措置を講じていない限り(ちゃんとしたサイトなどではきちんと意思確認のページがあらわれます)、消費者に重過失があったとしても錯誤(民法95条)の成立を認めています。錯誤が成立すれば契約の申込みは無効となりますので料金を支払う必要はありません。また消費者契約法で契約を取り消すことが可能です。この場合にも料金を支払う必要はありません。
異常に高い損害金については消費者契約法9条2号が年14.6パーセントを超える遅延損害金は無効としています。
・未成年が自分のHPで児童ポルノ画像を公開するのは違法行為か?
児童ポルノ画像をHPで公開することは児童買春・児童ポルノ禁止法7条4項に該当します。罰則としては、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金(懲役と罰金の両方を科す場合もある)があります。わいせつ物頒布等の罪(刑法175条)は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料という罰則になっており、児童買春・児童ポルノ禁止法の方が重いということになります。またHPで公開するのではなく、メールなどで児童ポルノを提供する場合には児童買春・児童ポルノ禁止法7条1項に該当し、こちらは3年以下の懲役又は300万円以下の罰金という罰則があります。
未成年が犯罪行為を行った場合でも違法は違法です。ただし、「14歳に満たない者の行為は、罰しない」とされていますので(刑事責任能力がない、刑法41条)、14歳未満の場合には違法な行為であっても現在の法律では罰せられることはありません。ただし、少年法3条は「14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年」については都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けた場合には家庭裁判所の審判に付するとしていますので、法律上は、まったくフリーというわけではありません。
では14歳以上20歳未満の場合にはどうなるでしょうか。こちらも少年法の定める流れに従って処分されることになります。
仮に逮捕された場合の流れをおおまかに説明すると、逮捕から48時間以内に検察官に送致、勾留あるいは勾留に代わる観護措置を経て家庭裁判所に送致、家庭裁判所から観護措置(鑑別所)、その後家庭裁判所の審判を受け、不処分、試験観察、保護処分(保護観察、少年院送致)、あるいは検察官送致(逆送)となります。検察官送致された場合にはさらに起訴あるいは不起訴という流れになります。
・未成年が自分のHPで爆弾製造法など過激な裏情報を公開するのは違法行為か?
憲法21条は表現の自由を保障しています。しかしながら表現の自由は無制限ではなく、他人の人権を侵害するような場合などには当然制限を受けます。例えば、表現の自由があるからといってHP上で他人を中傷する場合には、他人の名誉を傷つけることになりますから、名誉毀損として違法になりますし、わいせつ物や児童ポルノを提供することも表現の自由の一つではあるとしても法律上禁止されています。これは成人でも未成年でも同じです。
では、自分のHPで爆弾製造法など過激な裏情報を公開することは法律上制限されているかですが、私の知る範囲ではそのような法律は見受けられません。ですから違法とまではいいにくいでしょう。ただ、自殺サイトのケースでも問題になりましたが、このようなサイトを禁止せよという意見もないわけではありません。将来にわたって合法であるとまでは言い切れません。
条文
民法
(成年)
第四条 年齢二十歳をもって、成年とする。
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
(制限行為能力者の詐術)
第二十一条 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
児童買春・児童ポルノ禁止法
(児童ポルノ提供等)
第七条 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2、3 略
4 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
2006年2月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。
なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。
あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください
> ●楽天ポイント騒動
> ・1アカウント300~500円分のポイントが付与される楽天のキャンペーンで、
> アカウントを複数所得してポイントを大量取得する行為は、法的に問題が
> ないのか?(数アカウント程度ならよくても、1万アカウントならダメというよう
> なケースもあるのか)
今回問題となったキャンペーンは、1アカウントについて300~500円分のポイントが付与されるというキャンペーンですが、もともと楽天会員のアカウントは1人につき1アカウントではなく、1つのメールアドレスにつき1アカウントというもののようです。したがって、複数のメールアドレスを保有している人物が複数の楽天会員のアカウントを保有することは理屈としては予想されていたでしょうし、その人物がポイントを複数回取得することもある程度は予測していたものと考えられます。
しかしながら、1人の人物が数十、数百、数千のメールアドレスを保有し、さらにその数に応じた楽天のアカウントを保有することまでは、理屈としてはありえるとしても、実際に行う人がいるとは予想しなかったのでしょう。
実際にポイントを大量取得した人について何か法的に問題となるのか検討してみましょう。まず、楽天側は複数アカウントの取得そのものを禁止しているわけではありません。また、今回のキャンペーンについて1人につき1回だけ参加できるとしていたわけではないようです。これだけを考えると、1人で1万アカウント取得して、キャンペーンに参加し、ポイントを大量取得することは問題がないようにも思えます。しかしながら物事には限度というものがあります。仮に規約の理屈上は問題ないということでも、権利を行使される楽天側からすれば、そのような大量取得者については、大量取得行為自体が規約の別の条項に反している(規約の一般条項の部分ではポイント提供者側が一方的にポイントを無効にできるような部分が用意されていることが多いと考えられます)など、何らかの形で大量取得者の権利行使を防ぐ手段が用意されている可能性があります。また、ユーザーの権利行使が信義則(民法1条2項)に反するとか、権利濫用(民法1条3項)であるとの主張が可能かもしれません。
> ・楽天側は複数アカウントの取得を禁じる規約を用意していなかったにも
> かかわらず、ポイント返還やポイント利用分の買い物を現金で払うよう請求
> したのは、法的に問題がないのか?
キャンペーンはもともとサービスの利用拡大を狙っていると思われます。ですから、利用拡大につながるようなポイントの取得は何ら問題はないはずです。ですが、そもそも過剰にポイントを発行し、結果的に事業運営自体ができなくなるようなことは、さすがに合理的な限度を超えたキャンペーンといえます。
楽天側の不備につけ込んで過大にポイントを取得し、そのポイントを利用した場合には、キャンペーンの「ただ乗り」には違いありません(もともと「ただ」ですが)。いくら規約上は複数アカウントの取得を禁止していなかったとしても、何百、何千とアカウントを取得してポイントを取得したような場合には、さすがにポイント取得に合理性があるようには思われません。もしも、楽天側に有利に解釈すれば、過大なポイントを取得し実際に利用することは権利の濫用であって、無効なポイントの利用形態であり、実際に商品を購入した場合には、その対価を返還せよ、ということになるのでしょう。ですが、実際に利用したポイントについて現金で支払を求めたりするのは、ユーザー側の立場からすれば、どうかという印象もあります。楽天自身が当初から過大なポイント取得について何ら制限を設けていなかったからです。バランスをとるとすれば、民法703条(不当利得返還義務)は「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」と定めていますので、利益が残っている限度で返還するという形が結論としてはよいと思われます。例えば、ユーザーによる何百、何千といった明らかに過大なアカウント取得とポイント取得があり、そのポイントを利用して買い物をした場合には、実際に品物がユーザーの手元に残っている範囲で返還するということです。
> ・そもそも、サービスポイントは法的にどのように扱われるか?
ポイントは、商品又は役務(サービス)を通常の価格よりも安く購入できる利益です。今回問題となっている楽天ポイントだけでなく航空会社のマイレージなどもこれに該当します。ポイントに応じて割引を受けられる制度は、ポイントが景品類にあたるか否かで法的な扱いが異なると考えられます。もしも景品類に該当すると考えると景品表示法の規制があります。景品表示法の規制がある場合には、例えば、顧客にもれなく景品をつける場合には取引額の10%以内の景品でなければならなくなります。顧客との取引が1万円であるとすれば、その顧客に提供できる景品は1000円以内でなければならないということです。
では、ポイントは景品といえるでしょうか。この点、値引きをすることやキャッシュバックは景品としては扱われておらず、正常な商慣習に照らして適当な範囲であれば、特に値引き額について規制はありません。結論としては、マイレージを代表とするポイントは景品として扱われておらず、適当な範囲であれば特に規制はありません。
今回のポイントがもしも「景品類」であったならば、楽天が同一人物にポイントを大量に取得させてしまうことは景品表示法の趣旨に反するということになりますが、ポイントは「景品類」ではないので、この点では問題がないということになります。
民法
(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。
(不当利得の返還義務)
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
景品表示法
(景品類の制限及び禁止)
第三条 公正取引委員会は、不当な顧客の誘引を防止するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。
2006年1月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。
なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。
あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください
・スパイウエアをメールなどに仕込んで他人の個人情報を盗み出す
のは違法行為か?あるいは、スパイウエア入りのメールを送っただけ
でも違法行為か?
スパイウエア入りのメールを送る行為そのものは現在の日本の法律では制限されているとはいえません(「通信の秘密」を侵害するようなスパイウエアについては後述)。ただ、スパイウエアが組み込まれた結果、コンピューターの動作に影響を与えたり、個人情報が流出してしまうような場合には、違法といえる場合があるでしょう。また、より限定されたケースですが、スパイウエアを仕込まれた側の「通信の秘密」が侵害されるような場合には、電気通信事業法や有線電気通信法の罰則の適用があるかもしれません。
①電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)
刑法234条の2はコンピューターそのものやプログラム、ファイルを損壊したり、不正な指令などを与えて、コンピューターをダウンさせたり、正常に動作させないようにして業務を妨害することを犯罪としています。5年以下の懲役又は100万円以下の罰金という罰則が設けられています。
スパイウエアをメールなどに仕込んで、他人のコンピューターに影響を与え、業務を妨害した場合には、この犯罪が成立することもあるかもしれませんが、単に個人情報を盗むにとどまる場合にはこの犯罪は成立しないでしょう。
②個人情報保護法17条違反
個人情報保護法17条は「個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。」と規定しています。スパイウエアが「不正の手段」といえるかどうかですが、個人情報を盗み出すためのスパイウエアについては、利用者もそのようなスパイウエアを承諾していたとは通常考えられませんので、「不正の手段」といえるでしょう。したがって、個人情報取扱事業者がこのようなスパイウエアを利用して個人情報を取得すれば個人情報保護法17条に違反するものと考えます。
③不法行為(民法709条)
スパイウエアがコンピューターに仕込まれたため、コンピューターの動作が遅くなったり、スパイウエアをアンインストールできず再度OSからインストールせざるを得なくなったなどコンピューターそのものに何らかの損害を受けてしまったような場合や、個人情報が流出してしまって損害を受けてしまったような場合には、民法上の不法行為責任(民法709条)が発生することも考えられます。
④「通信の秘密」侵害
もし、スパイウエアが「通信の秘密」を侵害する態様(例えば電話の盗聴のように)で動作するものであれば、電気通信事業法179条1項(2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)、有線電気通信法14条1項(2年以下の懲役又は50万円以下の罰金)の罰則の適用が考えられます。また、かなり限定されたケースだとは思いますがこのようなメールを送りつける行為が未遂罪を構成することもあるかもしれません(電気通信事業法179条3項、有線電気通信法15条)。ただ、実際に起訴するのは難しいでしょう。
・駆除サイトを装ってスパイウエアをインストールさせるサイトが存在
するが、法律的に問題ないのか?
駆除サイトを装っているにもかかわらずスパイウエアをインストールさせてしまうというのは道義的には非常に悪質です。ただ、最初の質問と同じようにスパイウエアをインストールさせるサイトが存在しても現在の日本の法律では制限されているとはいえません。ただ、場合によっては電子計算機損壊等業務妨害罪や個人情報保護法違反、不法行為責任が成立する場合もあり得るでしょう。通信の秘密の侵害についても同様です。
・「スパイウエアを使った浮気調査は違法」という判決がアメリカ・フロ
リダ州で出たが、日本でも違法行為になる可能性はあるのか?
オンラインゲーム上での夫と妻以外の女性との間の会話ログを妻がスパイウエアを利用して取得した場合、①そもそも妻の行為が違法なのか、②妻が取得した会話ログは離婚訴訟や不倫の損害賠償の訴訟で証拠として用いることができるか、が問題となります。
①妻の行為は違法といえるか?
電気通信事業法4条、有線電気通信法9条は、通信の秘密は侵してはならない旨規定し、通信の秘密を侵した場合には罰則があります(電気通信事業法179条1項、有線電気通信法14条1項)。例えばスパイウエアの使用が電話回線に盗聴器をつけたケースとほとんど同じといえれば罰則の適用もあり得るかもしれません。
民事上も夫や相手の女性のプライバシーを侵害する不法行為(民法709条)であるという評価もできるかもしれません。
②妻が取得した会話ログを証拠として用いることができるか
刑事事件の場合には、法廷で証拠として用いることができる証拠には証拠能力が必要となります(刑事訴訟法319条~)。証拠能力がない証拠は法廷では証拠として取り調べることができません。例えば、警察が令状なしに違法に押収した証拠には証拠能力を認めないという場合があります。
離婚訴訟や損害賠償請求のような民事の事件の場合にはどうでしょうか。民事訴訟の場合には原則としては証拠能力に制限はありません。例外もありますが、妻の浮気調査が違法なプライバシー侵害だとしても、妻が取得した会話ログについては証拠能力を認める可能性が高いのではないでしょうか。
条文
刑法
(電子計算機損壊等業務妨害)
第二百三十四条の二 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
個人情報保護法
(適正な取得)
第十七条 個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。
民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
電気通信事業法
第百七十九条 電気通信事業者の取扱中に係る通信(第百六十四条第二項に規定する通信を含む。)の秘密を侵した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 電気通信事業に従事する者が前項の行為をしたときは、三年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
有線電気通信法
第十四条 第九条の規定に違反して有線電気通信の秘密を侵した者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 有線電気通信の業務に従事する者が前項の行為をしたときは、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2005年12月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。
なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。
あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください
●海外サイトやファイル共有で入手したROMファイルをPSP上で遊ぶのは違法行為か?
ROMファイルはプログラム(著作権法2条1項10号の2)の著作物(著作権法10条1項9号)であり、ネット上でROMファイルを入手しダウンロードすることは、著作物の複製に該当します。著作権者に無断で複製することは原則として複製権(著作権法21条)の侵害になりますが、私的使用目的の範囲では複製が認められています(著作権法30条1項)。また、プログラムの実行は日本の著作権法では原則として制限されていませんので、PSP上で遊ぶ行為は法律上は違法行為とはいえないでしょう(但し、例外として海賊版を海賊版と知って入手し、「業務上」使用する行為は著作権法113条2項により著作権を侵害する行為とみなされています)。
●UMD(PSPのゲームメディア)からデータを吸い出すのは違法行為か?
データが「プログラム」であれば、データを吸い出す行為はプログラムの著作物の複製に該当します。この複製が私的使用目的であれば違法ではないということになりますが、私的使用目的の解釈については厳しく解釈する人もいれば緩やかに解釈する人もおり、狭く解釈すれば違法ということになりますし、広く解釈すれば合法ということになります。著作権法は30条1項で私的使用目的での複製を認めている他に、47条の2でプログラムの著作物の複製物の所有者に一定の限度で複製を認めています。UMDの所有者(購入者)がデータを吸い出す行為が47条の2に該当する場合には複製が許されるということになります(但し、これについても狭く解釈する人もおり、ROMカセット・CD-ROM・UMDからのバックアップは47条の2に該当しないという解釈もありえます)。
なお、ネット上にアップロードする目的でデータを吸い出すという場合には、複製の目的がそもそも私的使用目的ではありませんし、私的使用の目的で複製したデータをさらに複製して第三者に頒布する場合は、複製権の侵害を行っていることになります(著作権法49条1項1号)。また、利用許諾契約(ライセンス契約)などで無断複製を禁じていると考えられますので、この契約が有効であるとすれば少なくとも契約違反ということになるでしょう。
●PSPをダウングレードすると不正行為なのか保障対象外になるとのことだが、ダウングレード自体は違法行為か?違法でないとしたら、ダウングレードによる故障に対して保障をしてもらうことはできないのか?
ダウングレード自体は違法行為ではないでしょう。ただ違法でないからといってメーカーに保証を求めることができるかというとそうではありません。
ユーザーがある商品を店から購入する場合、ユーザーと店との間には売買契約が存在し、もし商品に問題があればその店に交換や修理を求めることができるでしょう。しかしながらユーザーとメーカーとの間には直接の売買契約はありません(直販の場合は除きますが)。メーカー保証という制度がありますが、これはあくまでも消費者保護、消費者サービスのため、メーカーが独自に行っているものであって、必ずしもメーカーの法的義務として行っているものではありません。仮にメーカーが責任を負うとすれば、製造物責任法(PL法)の場合ですが、本件は「製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合」(製造物責任法1条)ではありませんのでメーカーは製造物責任を負いません。
メーカーが消費者サービスの一環として無改造の製品やメーカーが推奨したアップグレードを行った製品のみを保証の対象とすることはメーカーの自由です。また、ユーザーがメーカーが推奨しない改造をした結果、製品に問題が発生したとしてもそれはメーカーの責任ではありません。
メーカーが推奨するアップグレードで故障が発生したという場合にはメーカーに責任があると思われますが、メーカーが推奨しないダウングレードを行った場合にはメーカーに対して保証を求めることは法的にはできないでしょう。
●PSPがウイルスで故障してしまった。ソニー以外のパッチを当てたPSPは修理を行なってくれないとのことだが、メーカー側に修理の義務はないのか?
ユーザーとメーカーとの間には直販などの場合を除き直接の契約関係がありません。メーカー保証はメーカーが直接の契約関係にないユーザーに対して、一定の条件の下で保証義務を負うことを定めたものであって、条件を満たさないようなケースではユーザーがメーカーに対してメーカー保証や修理を求めることはできません。
改造やダウングレードを行わなかったにもかかわらず(まったく無改造であるにもかかわらず)ウイルスで故障したような場合には、メーカーもメーカー保証や修理に応ずるべきだと考えますが、ソニー以外のパッチをあてるなどの改造を行った結果、ウイルスに感染し故障してしまったような場合には、メーカー側にはメーカー保証や修理に応ずる義務はありません。たまたま修理に応じてくれたというケースもあるようですが、修理に応ずる義務まではないので修理を断られたとしてもメーカー側に責任を追及することは難しいと思われます。
メーカーが提供していないパッチを使用することは、あくまでも「自己責任」になりますから注意してください。
条文
著作権法
(著作物の例示)
第十条一項 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
(私的使用のための複製)
第三十条一項 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
(プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等)
第四十七条の二 プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。ただし、当該利用に係る複製物の使用につき、第百十三条第二項の規定が適用される場合は、この限りでない。
2 前項の複製物の所有者が当該複製物(同項の規定により作成された複製物を含む。)のいずれかについて滅失以外の事由により所有権を有しなくなつた後には、その者は、当該著作権者の別段の意思表示がない限り、その他の複製物を保存してはならない。
2005年11月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。
なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。 あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。
> ●オンラインゲームで他人のアカウントに侵入し、アイテムを
> 入手するのは違法行為か?
他人のアカウント(ID)、パスワードを無断で使用し、オンラインゲームを利用すること自体が不正アクセス禁止法違反になります。
平成12年2月13日に施行された「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(以下「不正アクセス禁止法」)では、「何人も、不正アクセス行為をしてはならない。」(同法第3条1項)と定めています。この法律でいう「不正アクセス」とは同法第3条2項に掲げられた次のような場合をいいます。
① アクセス制御機能のあるコンピューターに、ネットワークを通じて、他人の識別符号(パスワードなど)を入力することによって利用を可能にする行為。いわゆる「なりすまし行為」などを想定しています。
② アクセス制御機能のあるコンピューターに、ネットワークを通じて、他人の識別符号以外の情報を入力することによって利用を可能にする行為。架空のID・パスワードの入力やセキュリティ・ホールへの攻撃などを想定しています。
③ 認証サーバーによって利用を制限されているコンピューターに関して、ネットワークを通じて、その制限を免れる情報を入力し、利用を可能にする行為。セキュリティ・ホールへの攻撃などを想定しています。
今回のケースは①の「なりすまし」型の不正アクセスに該当します。不正アクセスを行った者に対しては、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金という罰則があります(不正アクセス禁止法8条1号)。
なりすまされた他人のアイテムを入手することで何か犯罪は成立するでしょうか。まず窃盗罪(刑法235条)は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役に処する。」と規定しており、物理的な「財物」を対象にしています。したがって、オンラインゲームのアイテムを対象にしていませんので成立しません。また、詐欺罪(刑法246条1項)は「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。」としており「人を欺いて」いるわけではない本件のようなケースには適用されません。
ただ、なりすまされた側は入手したアイテムが利用できなくなるわけですから損害が発生しているといえるでしょう。したがって、民事上はこのようななりすまし行為を行いアイテムを入手した者について不法行為(民法709条)が成立し、損害賠償責任が発生します。
> ●オンラインゲームのレアアイテムを現金で売買するのは
> 違法行為か?
時間のないサラリーマンなどは、長時間ゲームをするということはできませんからレアアイテムを購入してキャラを強くし、時間を節約したいという希望があるでしょう。逆に時間はあるけど仕事はしていないという人は、レアアイテムを売ってお金にしたいという希望があるかもしれません。
オンラインゲーム先進国ともいえる韓国では、アイテムの取引をめぐるトラブルの増加に伴い、社会問題化し、公正取引委員会がオンラインゲーム運営会社に対して約款上アイテム売買禁止を盛り込むよう勧告しているそうです。
日本では、オンラインゲームに関してここまで公的な規制がされておらずオンラインゲームのレアアイテムを売買したからといって違法ということにはなっていません(運営会社との間の契約違反ということはあり得ます)。ただ、所得が発生しているのに申告しない場合には所得税法違反の問題があります。
なお、オンラインゲームのアイテムを売るといって現金を振り込ませたうえ実際にはアイテムを渡さない、あるいはアイテムを渡してもらったのに現金を振り込まないというケースであれば、最初からそのつもりであれば詐欺罪(刑法246条)が成立します(十年以下の懲役)。
> ●オンラインゲームで別ユーザーに粘着され、スムーズな
> ゲーム進行を再三妨げられた。メーカー側はユーザー同士
> のトラブルに関与しないと規約でうたっていたら、妨害行為
> に対して泣き寝入りするしかない?
現実の世界でこんなことをされれば、場合によってはストーカー規制法、業務妨害罪、民法上の不法行為責任などが問題になりそうです。
オンラインゲームの場合、利用者はオンラインゲーム運営会社の約款(規約)に同意してゲームをしているわけですから、約款に従う必要があります。ただ、約款でユーザー同士のトラブルに関与しないと規定している以上、ユーザーが運営会社に対して苦情を伝えてその運営会社が何ら対応しなくともユーザー側としては運営会社に責任を追及しにくいでしょう。
オンラインゲーム上でつきまとわれ、ゲーム進行を妨げられるというケースは、多数のユーザーが参加するオンラインゲームの性質上、もともと想定されているともいえます(もともと現実の世界と比べれば法律のようなものがないので無法地帯に近い)。にもかかわらず約款上でとくに規定されていないのであれば、そのような「仕様」のゲームであると諦めるしかありません。
ただ、約款上、ユーザーの禁止行為が規定されているような場合には運営会社に何らかの対応をとるよう申し出た方がよいでしょう。
オンラインゲームが本当のコミュニティになるのであれば、オンラインゲーム上の自警団、警察、検察、裁判所などが整備されてもいいかもしれません。半径何十メートル?以内に接近することを禁止する仮処分などがあると泣き寝入りしなくてよいでしょう。
条文
刑法
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役に処する。
(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
不正アクセス行為の禁止等に関する法律
(不正アクセス行為の禁止)
第三条 何人も、不正アクセス行為をしてはならない。
2 前項に規定する不正アクセス行為とは、次の各号の一に該当する行為をいう。
一 アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。)
二 略
(罰則)
第八条 次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定に違反した者
二 略
2005年10月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。 なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。 あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください。
> ●AA(アスキーアート)は著作物になり得るか。
> 社団法人著作権情報センターなどの見解を例に
> 著作物となるという見解がネットでは主流となっているが実際にそうなのかどうか。
文字や記号を組み合わせて作成した絵をアスキーアートといいます。顔文字もAAですが、数行に渡って複雑に描かれるものもあります。今回問題になっているモナーもAAということになります。AAが著作物にあたるかどうかですが、ケースバイケースになるものと思われます。
著作権法2条1項1号は著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定めています。「思想又は感情を創作的に表現」となっていますが、高度なものである必要ななく、幼児が描いた絵であっても著作物に該当するといわれています。
AAの場合には、誰でも思いつくような単純な文字・記号の組み合わせから数行にわたる複雑な文字・記号の組み合わせまで様々なものがあります。複雑なものについては著作物としての価値があるように思われます。
「モナー」は著作物か
「モナー」「モララー」はネコキャラですが、他のネコキャラとは違う特徴があるように思われます。AAという制約の中から文字・記号を組み合わせて、「モナー」と識別できる絵として成立しているわけですから「著作物」といいうるのではないでしょうか。
著作物だとすれば、通常は著作権者がはっきりしているわけですが、ネット上で徐々に「モナー」というキャラクターが成立してきたとすれば、著作権者は不詳であったとしても著作権は著作者(キャラクターの形成に関与した人たち)が共有しているといってよいと思われます。
なお、著作物だとすれば、著作権者に複製権(著作権法2条1項15号、21条)、翻案権(著作権法27条)などがありますし、同一性保持権(著作権法20条)などの著作者人格権も発生しています。ネット上で非商業目的で使う限りにおいては、誰も文句を言わなかったわけですから、非商業目的に限って著作者らが使用を許諾し、また改変や翻案についても許諾していた状態にあるとみることができます。
> ●今回エイベックスが使っている「インスパイヤ」という言葉は
> とても解釈が難しい言葉だと思うが、
> 実際に過去の判例などで、これは著作権侵害ではなくインスパイヤ
> されてだけの創作物だという主張が認められた例はあるのか?
「インスパイヤ」されたということはオリジナル作品にアクセスしたことを自認しているわけですが、訴訟の場合、パロディを除いて、アクセスしたという主張がなされることはほとんどありません。その理由をケースごとに分けて説明します。
A 「創作」といえるためには他人の著作物とは異なるものを作成しなければなりませんが、たまたま既存の著作物と同じものを作成してしまっても、既存の著作物に「依拠」したわけではなく、独自に同じものをつくりだしてしまった場合にも「創作」であるとされています。
B 逆にYがXの著作物を参考にしてYの作品を作った場合はどうなるでしょう。
① Yの創作が加えられていないと評価できる場合には、Yの作品はXの複製、あるいは改変と評価され、Yの行為は、Xの複製権侵害、同一性保持権侵害となります。
② Xの作品にYの創作を加えて新たな著作物をつくったがXの作品の表現が残っているという場合には、Yの著作物はXの著作物の二次的著作物になります。この場合、Yの行為はXの翻案権侵害ということになります。
③ Xの作品を参考にYが新たな著作物をつくりもはやXの作品の表現が残っているとはいえない場合には、YはXの作品を参考にはしたといえますがXの権利を侵害したとはいえません。
例えばXがYの作品の存在を知り、著作権侵害で訴えたとしましょう。YとしてはまずAのケースであり、自分はXの著作物なんて知らないと主張するはずです。Bの段階になってしまうと③を主張しなければYは負けてしまうからです。ですから「インスパイヤ」されただけ、という主張をする被告はほとんど存在しないということになります。
「のまネコ」騒動はどのケースか
今回、Aは主張されていません。Bの①②③のどれに該当するでしょうか。「モナー」「モララー」と「のまネコ」を比較してみましょう。目や口、全体の印象を比較しても①か②には該当するが③には該当しないような印象を受けます。
なお、漫画のキャラクターの場合には、まねをした絵がその漫画のどのコマをまねたのかが一応問題になりますが、昭和51年の「サザエさん」の裁判では、まねされたコマを特定することなく著作権侵害を認めています。本件もネット上のどの絵にインスパイヤされたのかは明らかではありませんが、仮に特定できなかったとしても訴訟上は問題ないと思われます。一番問題なのは「モナー」に関しては著作者が誰かがわからないというところではないでしょうか。
仮に「のまネコ」が商標登録されたとしたら?
報道によれば商標登録は取り下げられたそうですが、仮に商標登録されたとしても、ネット上での非営利的な使用は違法にはなりません。商標法上「業として」に該当しない場合には商標権侵害にはならないからです。また、「のまネコ」が独自の著作物だと判断されたとしてもネット上で「モナー」「モララー」を使用することは「のまネコ」の著作権を侵害しません。
著作権法
(定義)
第二条一項 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一号 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
十五号 複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。
イ 脚本その他これに類する演劇用の著作物 当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。
ロ 建築の著作物 建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。
(同一性保持権)
第二十条一項 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
(複製権)
第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
(翻訳権、翻案権等)
第二十七条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
2005年9月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。
なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。
あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください
●ブログなどのネット上で他人の誹謗中傷をするのは法的にどんな問題があるのか。
刑事上の問題と民事上の問題があります。
まず、刑事上の問題ですが、誹謗中傷の内容によって名誉毀損罪(刑法230条)、侮辱罪(刑法231条)が成立する場合があります。名誉毀損罪は「公然」と「事実を摘示」し、「人の名誉を毀損」した場合に成立します。「公然」というのは、不特定または多数人が認識しうる状態と解されていますから、書き込みがブログなどのネット上になされた場合には、通常は不特定または多数人が認識できる状態になったといえます。「事実を摘示」というのは具体的に人の社会的評価を低下させるに足りる事実を告げることをいいます。具体的かどうかの判断は微妙ですが、「あほ」「ばか」「税金泥棒」は具体的な事実ではないですが、「○○は××と不倫をしている」というのは具体的事実になりうるでしょう。「人の名誉を毀損」は具体的事実を摘示して人の社会的評価を低下させる危険性を生じさせることをいいますから、実際に社会的評価が低下する必要はありません。
侮辱罪は名誉毀損罪の場合と異なって事実の摘示がなくても人を侮辱した場合に成立します。
名誉毀損罪も侮辱罪も親告罪(刑法232条)といって、被害者からの告訴がなければ起訴することができない犯罪です。
民事上の問題ですが、民事の名誉毀損は事実の摘示がある場合だけでなく、ある事実を基礎として意見や論評を表明する場合を含みます。故意または過失によって人の名誉を毀損した場合には不法行為(民法709条)となり、損害賠償の対象となります。誹謗中傷まではいかず単に個人情報を書き込んだという場合には、プライバシー侵害にはなりますが名誉毀損にはならないでしょう。もちろんプライバシー侵害は民法上の不法行為責任が発生し損害賠償の対象になります。
> ●相手が個人ではなく不特定多数の場合でも、それは適用されるのか。
誹謗中傷される相手、つまり名誉の主体は個人だけでなく会社や団体も含みます。しかしながら特定人であることを要します。あるカテゴリーの集団を誹謗中傷したとしてもそれが特定人あるいは特定団体に対する誹謗中傷といえなければ犯罪は成立しませんし、不法行為とならないケースがほとんどでしょう。
> ●逆に、自分の個人情報などが書き込まれてしまった場合、どのような対策がとれるのか?
ブログやHPの開設者、ブログやHPのサービスを提供しているプロバイダなどに対して削除を請求することが考えられます。まず、ブログやそれに含まれるコメントなどに個人情報が書き込まれている場合、ブログの開設者に削除を求めましょう。削除を求めたにもかかわらずブログの開設者が何も対応してくれない場合、ブログのサービスを提供しているプロバイダなどに対してプロバイダ責任制限法3条2項を根拠として削除を求めることができます。プロバイダ責任制限法に基づいてプロバイダに削除を求める場合の書式がホームページ上で公開されていますので参考にしてください(http://www.telesa.or.jp/guideline/pdf/provider_041006_2.pdf)。
> ●書き込む内容はどのレベルから違法となるのか?
電話帳で公開されている氏名、住所、電話番号であっても他人の個人情報ですから本人の同意なくして公開すればプライバシー侵害となり違法となります。電話帳で公開されているから既に公開されている情報であって別の場所でも公開していいという考え方をするかもしれませんが、電話帳で公開することとネット上で公開することではその影響力が異なります。過去の裁判でもタウンページで公開している情報をネット上の掲示板で公開することがプライバシー侵害として不法行為の成立を認めたものがあります。
単純な個人情報を掲載するだけでなく、特定の個人や団体について誹謗中傷したりすることは刑法上、名誉毀損罪や侮辱罪の成立があり得ます。また民事上も不法行為責任が成立することになるでしょう。
会社員やアルバイトが勤務先や取引先の会社の営業秘密など会社内部の情報をブログに書き込むことは、会社との間の就業規則や秘密保持契約などに違反する場合もあります。秘密保持契約に違反しない勤務先に関する書き込みであっても、「大量オタ・・きもい!」発言のように会社のイメージに重大な影響を与えるケースもあります(「過去の事例」参照)。アメリカではブログの書き込みで解雇になったという事例が多数あるそうです。
一方、他人の情報ではなく自分の氏名や写真や住所などの個人情報を書き込むことは特に違法ではありません。しかし、自分の個人情報をブログに書き込むということは自分のプライバシーを不特定多数の人間に渡すということです。ストーカー被害にあったり、いたずらの対象になったりする危険性は増えていきます。
ブログは非常に簡単に情報発信できるツールですが、自分の個人情報も他人の個人情報も勤務先などの秘密情報も一度公開されてしまえばその後情報が流通し、書き込んだ本人がいくら努力しても取り返しのつかない状況に陥るという可能性もあるのです。ブログへの書き込みはその後の影響も考えて慎重に行うことを心がけましょう。
過去の事例
平成17年8月、コミケに出店していたホットドッグチェーンの移動店舗内スタッフのブログ上の写真付きの発言が「客をバカにしている」と波紋を呼んだ事件です。ホットドッグチェーン側が当該ブログと会社の関わりはないが、当該発言についてはこれを遺憾とする文書をウェブ上で発表しています。
条文
刑法
(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
(公共の利害に関する場合の特例)
第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
(親告罪)
第二百三十二条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 略
民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2005年8月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。
なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。
あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください
スパイウエアは無料ソフトなどと一緒にインストールされることが多いといわれています。このようなソフトの開発者がオンライン広告会社に情報を売ってコストを回収したり、収益をあげようというわけです。通常のユーザはインストール時に表示される利用条件や使用許諾契約書にスパイウエアに関する内容が含まれていたとしても目を通すことなくそのままインストールしてしまうため、ユーザ本人が気付かないままスパイウエアがPCに潜んでしまうということもあるようです。またメールに添付されたファイルにスパイウエアが仕組まれていたなどということもあるようです。
スパイウエアと呼ばれるものは、ユーザの通信履歴などを収集し、特定のサーバに送るものもあるのですから個人情報を収集しているということになります。まず思いつくのが個人情報保護法の適用があるのか、ということです。個人情報保護法の適用がある「個人情報」というのは、氏名と結びついた住所や電話番号などの情報に加えて、他の資料から容易に個人を特定できる情報などを含みます。またメールアドレスなどは、会社のドメインと氏名を組み合わせたようなものですと特定の個人を識別できるため個人情報と考えられていますが、単なる記号の羅列のような場合には個人情報ではないと考えられています。もし、スパイウエアが収集している情報が特定の個人を識別できる性質のものであるとすれば個人情報保護法の適用があるでしょう。ただ、単にユーザのウェブ閲覧履歴にとどまるとすれば個人情報保護法の適用はありません。
> ●利用条件に同意してしまったら被害を受けても、責任を求めることはできないのか?
ユーザが被害を受けるようなスパイウエアは、いくら利用条件に同意したからといって被害を受けることまで同意しているわけではありません。また、不正に預金を引き出されたなどという場合には、情報取得者が銀行にアクセスする行為が不正アクセスに該当すると思われますし(不正アクセス禁止法3条1項、8条)、ユーザの情報が流出すれば民法上の債務不履行責任や不法行為責任を追及することもできるでしょう。
逆に利用条件に同意していなくても収集する情報が個人情報に該当しないとか、パソコンの操作にたいして影響を与えていないなどという場合には、違法とはいいにくいでしょう。
結局のところ同意の有無で違法性が決まるというよりは、スパイウエアの悪質さの度合いや、収集した情報の性質や利用方法、被害の程度などが違法性の判断では重要と考えておいた方がよいでしょう。
> 利用条件が長文でとても読みきれないようなものでも法律的には有効なのか?
利用条件が長文で読み切れないという場合でも、現在の法律では有効であると考えられます。ただ、利用条件の内容がスパイウエアの動作についてウソの内容を説明していたり、正確に説明していなかった場合には、錯誤(民法95条)を理由に無効を主張できるかもしれません。無償ソフトのダウンロード時やインストール時の利用条件の表示が極めて見にくいなどという場合にも同様です。
個人情報保護法の適用がある場合を考えてみましょう。個人情報保護法では、個人情報の利用目的をできる限り特定しなければならないこと、個人情報を取得した場合には、その利用目的を本人に通知するか公表しなければならないこと、収集した個人情報を第三者に提供する場合には本人の同意を得ること、偽りその他不正の手段によって個人情報を取得してはならないことなどが定められています。実際の個人情報の利用がこれらの条件をみたしていない、利用条件の内容とスパイウエアの実行内容が異なっていると判断されるのであれば違法ということになります。
> ●スパイウエアを他のプログラムなどに忍び込ませて、他人のパソコンに
> 侵入させる行為に違法性はないのか?
プライバシーの問題や民法上の不法行為の問題がありそうですが、たいした実害がないような場合には、明確に違法とまではいえないでしょう。スパイウエアの性質にもよります。ただ、スパイウエアによってパソコンの動作が非常に遅くなったり、ユーザが意図しない動作をして通常の作業ができないという場合には、電子計算機損壊等業務妨害(刑法234条の2)に該当することも考えられます。
> ●ネットバンキングなどの個人情報を収集して、外部へ送信する活動に
> 違法性はないのか?
ネットバンキングのIDやパスワードを外部に送信するだけでは、情報を盗むことを原則として処罰していないわが国の法律では違法とまでいえない可能性があります。ただ、IDやパスワードとともに氏名なども送信して、個人情報を取得する場合には個人情報の不正な取得になり違法ということになります。また実際に銀行にアクセスし送金した場合には、不正アクセスに該当し、また銀行に対する電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)が成立します。
> ●スパイウエアの多くは海外製のものだが、海外製のスパイウエアの場合、
> 法的対応をとることはできないのか?
海外製のスパイウエアで被害にあってしまっても、どこの国の法律を適用するか、その国の法律はスパイウエアの規制があるか、どこの国の裁判所で裁判をしなければならないのか、などいろいろな問題があり現実には法的対応は難しいでしょう。
なお、国内のネットバンキングのIDやパスワードが盗まれ、実際に別の口座に振り込まれてしまった場合、犯人が日本人であるのであれば、海外から操作したとしても電子計算機使用詐欺罪が成立します(刑法3条14号)。犯人が特定されれば、犯人に対して民事上の裁判を起こすことも可能です。
過去の事例
イーバンク銀行のHPによれば、平成17年6月から7月にかけて、法人顧客が通常使用しているPCとは別のIPアドレスで口座にログインした形跡と他行口座への不正な出金が判明したため調査したところ、顧客PCにスパイウエアが侵入していることが判明したとのことです。顧客がクレームメールを受信した際に「動画を添付したので、見てください」との記述があったため思わず添付ファイルを開いた際に侵入されたのではないかとみられています。
条文
民法
(錯誤)
第九十五条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
刑法
(電子計算機使用詐欺)
第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。
不正アクセス禁止法
(不正アクセス行為の禁止)
第三条一項 何人も、不正アクセス行為をしてはならない。
(罰則)
第八条 次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定に違反した者
二 第六条第三項の規定に違反した者
個人情報保護法
(適正な取得)
第十七条 個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。
2005年7月に書いた雑誌用の原稿です。ご参考までに。
なお、当時の法律等に基づいていますので現在の法律や判例、ガイドライン、解釈と異なる可能性があります。
著作権法・アクセスコントロールについてはこの後、改正がありました。
あくまで「過去の原稿」ということをご了承ください
ゲームソフトCDの中には、特殊な場所に一定の信号が記録されており、ゲーム機がその信号をチェックして、信号が記録されていない場合にはゲームの実行ができないというものがあります。ゲームソフトCDをCD-Rにコピーしても特殊な信号まではコピーできないため、コピーされたCD-Rなどでは遊ぶことができないということになります。
MODチップはこのような仕組みを回避するためのものです。具体的にはMODチップと呼ばれる部品をゲーム機に取り付け、MODチップによって特殊な信号をゲーム機に認識させることによって、ゲームソフトCDをコピーしたCD-Rでもゲーム機で遊ぶことができるようになります。
> ・ネットオークションなどでMODチップは販売されているが、
> それは違法ではないのか? 海外から購入した場合でも違法なのか?
まず、MODチップの販売が違法かどうかですが、不正競争防止法2条1項10号の「不正競争」に該当し、結論としては違法となります。MODチップを購入することについては、不正競争防止法上は違法ではありませんし、使用することは違法ではありません。
海外からMODチップを購入する場合ですが、「輸入」に該当する場合には「不正競争」になりますので、違法ということになります。
> ・それらMODチップを購入した場合、使用は違法なのか?
> ・そもそもなぜMODチップの譲渡等は違法になったのか?
違法となるのは、MODチップを譲渡したり輸入する行為です。国内でMODチップを購入し、ゲーム機に取り付け、コピーしたゲームCD-Rを使って家庭用ゲーム機で遊ぶことは違法ではありません。使用することは「不正競争」には該当しないので、違法ではありません。
著作権法で違法となるか?
コンテンツの作成には莫大な費用を要する場合があります。無断コピーが横行したり、海賊版が流通すればその費用の回収はできません。そのため権利者側は、無断コピーを防止するためのコピーコントロール技術や、海賊版の利用を防ぐためのアクセスコントロール技術の開発と利用を行ってきました。しかしながら、コピーコントロールもアクセスコントロールも新たな技術が出れば、これを無効にするツールが開発され、権利者側はまた新たなコピーコントロールやアクセスコントロールの技術を開発・利用せざるを得なくなってしまいます。いわゆる「いたちごっこ」の状態になってしまいます。当然ながら、権利者側では新たな費用や労力を費やすことになってしまいます。そこで、平成11年に改正された著作権法30条1項2号は「技術的保護手段の回避」によって行う複製は仮に私的使用目的であったとしても違法な複製になるとしています。ただ、この「技術的保護手段」はコピーコントロールだけを意味していてアクセスコントロールを含んでいません(著作権法2条1項20号)。したがって、アクセスコントロールを回避して、その結果コピーしたゲームの使用が可能になった場合には、コピーコントロールを回避していない限り著作権法上は違法ではないということになってしまうのです。MODチップはコピーコントロールを回避するものではなく、アクセスコントロールを回避するものです。したがって、MODチップの販売も著作権法で定められた技術的保護手段の回避を行う装置や機器の販売に該当しません。したがって、著作権法上は、MODチップの販売は違法にはならないという結論になります。
もっともマクロビジョン信号を除去する機能を有するチップなどがあれば、それを使用し、マクロビジョンを除去して映画などの無断複製行為を行えば、たとえ私的使用目的であったとしても違法な複製になるということになりますし(著作権法30条1項2号)、そのようなチップの販売はもちろん違法になります(著作権法120条の2第1号)。
不正競争防止法で違法となるのはなぜか?
著作権法では規制されていないアクセスコントロールの無効化の問題については、不正競争防止法の改正によって規制されることになりました。平成11年に改正された不正競争防止法2条1項10号は、「技術的制限手段」(著作権法の技術的保護手段と異なりコピーコントロールだけでなくアクセスコントロールも含まれる)の効果を妨げる機能のみを有すると認められる装置(この装置を組み込んだ機器、たとえばコピーガードキャンセラーが組み込まれたレコーダーやスクランブル解除装置が組み込まれた受信機)の譲渡や輸入、輸出、この機能を有するプログラムを提供する行為を「不正競争」としています(試験又は研究の場合は除かれます)。
つまり、不正競争防止法はMODチップのような無効化装置やMODチップに無効化機能を追加するプログラムなどの譲渡、インターネットを通じた提供などの行為を規制しているということになります。
個人がMODチップを利用してコピーしたゲームCD-Rを利用することは規制されていませんが、これはいちいち個人を規制しても煩雑であり、実効性が乏しいということが理由となっているそうです。ただ、あまりに横行するようだと、権利者側の働きかけで何らかの立法がなされるということもあるかもしれません。
条文
著作権法
(私的使用のための複製)
第30条1項 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一 略
二 技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
第120条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化した者
二 業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避を行つた者
不正競争防止法
(定義)
第2条1項 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
略
十 営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為
第2条5項 この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録のために用いられる機器をいう。以下同じ。)が特定の反応をする信号を影像、音若しくはプログラムとともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。
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